
「考えながら作業する」のが当たり前になっていませんか。じつはこの習慣こそが、仕事のスピードを下げている原因かもしれません。
仕事が速い人は「考える時間」と「手を動かす時間」を意識的に分けています。
今日から使える、思考と作業を分離する技術をご紹介します。
「考えながら作業する」が、仕事を遅くしている
メールの返信内容を考えながら書き、「もっと別の表現がいいかもしれない」とdeleteキーを押しては書いての繰り返しで進まない。構成を考えながら資料を作り始め、「ちょっと待てよ、これでいいのか?」と中断する。
こうした「考えながら作業する」のはよくあることでしょう。しかし、このやり方が仕事を遅くしている根本的な原因のひとつかもしれません。

ふたつのことを同時にやろうとすると、どちらもスピードや正確さが落ちてしまう——これを「二重課題干渉」と言います。京都大学の研究によれば、脳が一度に使える処理力にはかぎりがあり、ふたつの作業がその同じ処理力を奪い合うことで、お互いの働きが妨げられてしまうのだそうです。*1
つまり、ふたつの作業を同時にこなそうとすると、どちらもどっちつかずになってしまうということ。どちらも中途半端になるのはあなたの能力の問題ではなく、脳のしくみによるものです。だからこそ、「考える」と「作業する」を意識的に分けるのが重要になります。
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仕事が速い人がやっている「分離」の3つの実践
では、どうすれば「考える」と「作業する」を分けられるのでしょうか。仕事が速い人が実践している3つの方法をご紹介します。
分離(1)——着手前に「考える時間」を5分とる
最初に意識したいのが、作業を始める前に考える時間を設ける習慣です。
タスクが発生したらすぐにパソコンを開いて手を動かし始める人も多いでしょう。しかしそれでは、作業の途中で「軸からそれているかも」「流れはこれでいいだろうか」と立ち止まるリスクが高くなります。
作業に入る前の5分間、「この仕事のゴールは何か」「どの順番で進めるか」「何に行き詰まりを感じているか」などを紙に書き出してみましょう。ゴールと手順が決まれば、あとは手を動かすだけ。作業中に手が止まる回数が激減します。

分離(2)——「考えモード」と「作業モード」で場所・ツールを変える
次に実践したいのが、考えるときと作業するときでツールを使い分ける方法です。
ノートやホワイトボードで思考を整理し、パソコンで作業する——このようにツールに「役割」をもたせると、脳のモード切り替えがスムーズになります。「考えるときはパソコンを閉じる」というシンプルなルールにするだけでもいいでしょう。
たとえば、筆者はB6サイズの小さめのリングノートを机に常備しています。アイデアの整理や構成の検討をノートに書き出し、決まったらパソコンに向かうようにしたところ、作業中に「どうしよう」と悩む時間が大幅に減りました。
ビジネスプロデュースなどを手がける株式会社ドリームインキュベータ代表取締役社長の三宅孝之氏は、以下の理由から思考するときにホワイトボードを使うそうです。*2
- 立った状態で書くから眠くならず、集中できる
- 自然と字が大きくなって余分な情報を書くスペースがないぶん、本質にたどり着きやすくなる
テレワークの場合は、壁に貼り付けられるホワイトボードシートを活用し、「椅子に座ったら作業」「思考の整理は別室のボード上で」のように使い分けるのも一案です。このように場所や道具に役割をもたせることで、環境が「脳のモードを切り替える合図」にもなります。
分離(3)——「割り込み思考」をメモに逃がす
3つ目は、作業中に思い浮かんだ事柄をすぐにメモに書き出す習慣です。
「あのメールまだ返してなかった」「来週の会議の準備がまだだった」——集中して作業しているつもりでも、こうした「割り込み思考」が頭の片隅に居座り続けると集中が妨げられてしまいます。
この問題の解決策はとてもシンプル。浮かんだ事柄をすぐにメモに書き出すだけです。
「記録した」という事実に加え、次にとる行動まで書き出しておくことで、未完了タスクに使われていた認知リソースが解放されます。フロリダ州立大学の心理学研究では、未達成の目標について具体的な計画を立てることで、その目標にまつわる「気が散る思考(侵入思考)」が消えることが実験で示されました。*3
(例)
- ◯◯さんへの返信 → 明日9時に送る
- 会議準備 → 資料の骨子を今日中に1枚だけ作る
- 経費精算 → 明日の朝一でシステム入力
このように、「何をいつまでにどうする」までワンセットで書くイメージです。
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ただ、付箋だと「完了/未完了が曖昧になる」というリスクを感じました。筆者も割り込み思考をメモに記録しますが、以前「付箋に記録し、完了したら付箋を捨てる」としたところ、やったのかまだやっていないのかがわからなくなってしまったことがあります。
やることが多くゆとりがないと記憶が曖昧になってしまいがち。完了したらメモに取り消し線をつけるなど、やったかどうかが明確になる方法にしておくほうが安心です。

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「仕事が遅い」のは、能力の問題ではなく「考えるタイミング」の問題かもしれません。さっそく目の前にあるタスクから、試してみてください。
よくある質問(FAQ)
Q 「考える時間」と「作業する時間」を分けるとき、考える時間はどのくらい確保すればいいですか?
A まずは着手前の5分間から始めてみましょう。ゴールと手順、行き詰まっているポイントを紙に書き出すだけでも、作業中に立ち止まる回数が減ります。
Q なぜ「考えながら作業する」と効率が落ちるのですか?
A ふたつの課題が脳内の限られた共通資源を同時に使おうとして干渉し合う「二重課題干渉」が起こるためです。能力の問題ではなく、脳のしくみによるものです。
Q 作業中にふと思いついたことがある場合、その場で対応すべきですか?
A いいえ。作業を中断せず、すぐにメモへ書き出して元の作業に戻るのがおすすめです。「記録した」だけでなく次にとる行動まで書き出しておくことで、未完了タスクにまつわる「割り込み思考」を手放せます。
*1: 京都大学|二つのことを同時にしようとすると、どちらも中途半端になる脳の仕組みを解明
*2: 三宅孝之|仕事が早い人は、思考と作業を分けている
*3: PubMed|Consider it done! Plan making can eliminate the cognitive effects of unfulfilled goals
澤田みのり
大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格と国際中医師の資格を取得。日々勉強を継続しており、勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。