
まじめに会議に参加していたのに、あとからノートを見返すと内容がイマイチ理解できない……。という経験がある方は多いのではないでしょうか。また、仕事用にノートを作りたいけれど、どのようなノートが効果的なのかわからないというビジネスパーソンもいるでしょう。
けれど、ノートのとり方を教わったことのある方はなかなかいないはず。じつは、合理的なノートで仕事の効率は大きく変わります。「情報整理が苦手」「復習に時間がかかりすぎる」という人は、ノートのとり方を工夫してみると良いかもしれません。
今回は、ビジネスにも応用できる東大生のノート術をご紹介しましょう。
東大生のノート術1|再現性がカギ
『「伝える力」と「地頭力」がいっきに高まる 東大作文』の著者である西岡壱誠氏が100人以上の東大生にアンケートをとり、どのようなノートを作っているのかを調査したところ、彼らがこだわっているポイントのひとつが「再現性」であることが判明しました。
再現性のあるノートとは、あとから見返したときに、会議やセミナーの内容が再現されるノートということです。ノートをとることが目的なのではなく、学びを得ることがポイントなので、会議や商談、読書などで得た情報を、あとから自分で「再現」できることが重要になってきます。
再現性のあるノートを作るために、東大生たちが駆使している3つのテクニックをご紹介しましょう。これらはすべて、ビジネスパーソンの業務に直結するものです。
理想は、他人に説明できる状態にすること
ひとつめのポイントは、「言い換える」こと。会議の内容や資料の文章をそのまま書き写すのではなく、「要するにこういうこと」と自分の言葉で書き出すことが大切です。内容が理解できていなければ、自分の言葉に言い換えることはできません。自分の言葉で言い換えられ、他人に説明できる状態になっていることがベストです。
「知っていると思っていたことも、誰かに聞かれたらうまく説明できなかった」という経験は、誰しもあるでしょう。これはまさに、理解できていると思っていても、頭のなかでは、その内容が十分に理解できていなかったということ。
ワシントン大学で行なわれた、ある実験をご紹介しましょう。
- 被験者を2つのグループに分けます。
- 片方のグループには「覚えた情報をテストする」と告げ、もう片方には「覚えた情報を別の人に教えなければならない」と伝えます。
- 実際には別の人に教えることはせず、どちらのグループもテストのみ実行します。
実験の結果、「別の人に教える」と思っていた被験者のほうが、テストで良い結果を出したのだそう。
人に説明することを前提にすると、学習効率は大きくアップするようです。ビジネスシーンで考えれば、「この内容を上司や部下に報告する」「クライアントに説明する」つもりでノートをとることが、理解度を飛躍的に高めるということ。実際に誰かに教えるわけではなくとも、「報告するつもり」で自分の言葉でノートを作れば、情報整理の効率は格段に上がるでしょう。

因果関係を理解する
ふたつめのポイントは、ロジックの見えるノートをとること。覚えなければならないワードだけを書くよりも、「そもそも、その事象はなぜ起こるのか」などの因果関係を理解することが重要です。
たとえば、ノートをとる際に、「○○プロジェクトの予算が削減された」という結論だけ書いても、その決定の背景にある経緯やロジックを無視しているため、記憶に残りづらいはず。反対に、ロジックが見えていれば、決定事項に加えて、その前後の議論や関連する情報も一緒に記憶に定着しやすくなります。さらに、前述した「人に説明する」ことも容易になります。
東大生たちのノートには、「→」という記号が頻繁に登場するそう。「→」は何かと何かの情報をつなぐ際に使われ、もしもつなげない場合は、その間に情報を加えるのだとか。
例として、歴史の勉強ノートに「→」を使ったメモをとってみました。

写真では目をこらしてもなんと書いてあるのかわからないかもしれませんが、「三圃制」と「クレルモン宗教会議」が黄色の蛍光ペンで書いてある理由は、後ほどご説明いたしますね。
年号と出来事を個別に覚えるよりも、「→」でつなぐことによって、前後の関係性がわかりやすくなり、情報が頭に入りやすくなるのです。
感情が動くことを大事にする
みっつめのポイントは、「自分の感情が動いたことを書く」ということです。
東大生のノートには、講義中に先生が話した小話など、試験とは関係がなさそうな内容も書いてあることが多いよう。
ビジネスシーンに置き換えれば、会議の本題以外にも、参加者が発した印象的な一言や、ふと気づいた疑問点などをメモすることで、あとから振り返って内容を整理する際に、会議の記憶が蘇るきっかけとなるのです。
「感情が動いた内容は、記憶に残りやすい」ということは、これまで数々の研究からわかっています。そのひとつが、認知心理学者ドナルド・マッケイ氏率いる研究チームが行なった次の実験です。
- 被験者に、さまざまな色のついた単語を次々と見せます。
- あとから、表示されていた単語と色を思い出すよう命じられます。
結果|感情を引き起こしやすいタブーワード(禁句)は多く思い出され、あまり感情を揺さぶらないような無難なワードは思い出されない傾向にあったそう。
マッケイ氏は、実験の結果から「人は、感情が動いた事柄のほうが記憶しやすい」と説明しています。
ノートをとる際は、必要事項のほかに、自分が興味深いと思った内容のメモを補足して、あとから感情とともに記憶を呼び起こす仕組みをつくると良さそうですね。
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東大生のノート術2|筆記用具と紙面構成にもこだわりを
上記で紹介した西岡氏と同様に、フリーライターで『東大合格生のノートはかならず美しい』などの著書で知られる太田あや氏も、東大生のノート術に注目するひとりです。
太田氏は、東大生のノートを100冊集めて調査し、「難関大学に合格した彼らのノート術には共通して7つの法則がある」ということを指摘しました。以下の通りです。
- 文頭はそろえる
- 写す必要がなければコピー
- 余白は大胆にとる
- インデックスを活用
- ノートは区切りが肝心
- オリジナルのフォーマットを持つ
- 丁寧に書いている
ただ、これらはあくまでも見た目の美しさのため。太田氏によると、良いノートをとるためには、「何のためにノートをとるのか」を自分のなかで明確にしておくことがポイントなのだとか。
たとえば、目的が「会議の内容を深め、次のアクションにつなげること」である場合、自分にとって、どのようなメモの書き方が適しているかを考えてノート作りをする必要があります。つまり、自分ならではの工夫をするということ。東大生たちは、それぞれ自分なりのノートづくりを実践しているのです。
以下で、太田氏の印象に残った東大生独自のノート術をご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

筆記用具の使い方にこだわる
東大生たちは、ノートや筆記用具においてもこだわりを持っているそうで、自分に合うものに出会うまで、いろいろなものを試して試行錯誤します。書きやすいシャープペンやボールペンはどれか、それに合う紙質のノートはどれかなど、自分にとって最適な筆記用具を追求するのだとか。たしかに、書きづらいペンを使ったときにストレスを感じた経験は、誰しもありますよね。
太田氏いわく、ある生徒は、2本のペンをお箸のように持つという方法をとっていたそう。ペンを持ち替えるのではなく、2本を同時に持ったままペン先だけ器用に入れ替えていたのだとか。かなり究極的なスピードの追求ですが、自分にとって効率的な方法を編み出したのですね。
ほかにも、大事なことはあえて黄色の蛍光ペンで書く、という生徒もいたのだそう。本来ならばマーカーとして使われる蛍光ペンをペンのように使い、あえて見づらくすることによって、かえって一生懸命読もうとし、記憶に残る……。という原理だそう。このように、工夫の方法は、人によって様々ということです。
ちなみに、先ほど筆者が例として作成したノートの画像は、この蛍光ペンの使い方をまねしてみたものです。画像をご覧いただければおわかりのように、想像以上に読みにくいため、なんども目を凝らすことになり、結果的に単語が強く記憶に残ります。

ページごとに紙面構成を変える
ノートを取るときには、ある程度紙面構成をそろえて書く人が多いのではないでしょうか。しかし、太田氏いわく、ある生徒のノートは、ページをめくるたびにフォーマットが変わっていたそうです。本人によると、「自分は紙面を絵のように覚えるから、あえて構成を全部変えることで記憶を呼び起こしやすくする」のだとか。
書かれている内容以外にも、そのページの構成やペンの色など、印象に残る情報が多いほうが良いのでしょう。この方法は、視覚情報を覚えるのが得意なタイプの人には特に有効かもしれません。実際には視覚で記憶するタイプの人は多数派ではないようですが、「ページごとに印象を変えることで、ちがう項目を暗記する際に手助けになる」という考え方は、参考にできると思います。
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日々、膨大な情報を処理しなければならないビジネスパーソンにとって、ノート術は単なる「メモ」の技術ではありません。思考を整理し、アイデアを生み出し、確実にアクションにつなげるための強力なビジネススキルなのです。
ぜひ、東大生たちのノートの取り方を参考にしてみてください。
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よくある質問
Q.ノートを「言い換えて」書くと、時間がかかりすぎませんか?
A.最初は時間がかかるかもしれませんが、慣れると逆に効率が上がります。内容を理解せずにそのまま写すと、あとで読み返しても意味がわからず、結局もう一度調べ直すことになりがちです。その場で「要するに何か」を考えながら書くことで、復習の手間が大幅に減ります。
Q.「→」でつなげられない場合はどうすればいいですか?
A.つなげられないということは、その間に抜けている情報があるサインです。会議中なら質問して補足情報を得る、セミナーや読書なら調べて埋める。このプロセス自体が理解を深めるきっかけになります。
Q.感情が動いたことをメモするといっても、業務と関係ない雑談まで書くのですか?
A.はい、むしろそれが効果的です。「部長が言った冗談」「ふと浮かんだ疑問」など、本題と直接関係なくても、その場の空気や自分の反応を書いておくと、あとで記憶を呼び起こすフックになります。ただし、あくまで補足なので、長々と書く必要はありません。
Q.筆記用具や紙面構成にこだわる余裕がありません。最低限やるべきことは?
A.まずは「自分の言葉で書く」ことだけ意識してみてください。ペンやノートの工夫は、基本ができてからで十分です。記事で紹介した東大生たちも、最初から完璧だったわけではなく、試行錯誤の結果として自分のスタイルを見つけています。
*1 東洋経済オンライン|東大生の「ノートのとり方」が本質的で凄すぎた
*2 Nestojko John F., Dung C. Bui, Nate Kornell, and Elizabeth Ligon Bjork(2014), "Expecting to teach enhances learning and organization of knowledge in free recall of text passages," Memory & Cognition, Vol. 42, No. 7.
*3 東京商工会議所|覚えずに覚える記憶術
*4 zapier|Top 10 Strategies for Learning New Skills
*5 Psychologist World|Emotions and Memory
*6 大学受験パスナビ|《吉田たかよし先生が解説!》記憶と思考の脳科学的メカニズム
*7 NHK高校講座|世界史
STUDY HACKER 編集部
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