年末の学びを1月に忘れてしまう人への処方箋 ── 記憶の“再起動”システム

日差しの入るカフェで、木のテーブルに座りノートPCで作業する男性

年末年始という忙しい時期でも、なんとか時間をやりくりして勉強したり、本を読んだりと、自己研鑽に励んだ。
そんなはずなのに —— いざ仕事が始まり、しばらく経ったいま、覚えたことがあまり思い出せず「あの頑張りはムダだったのかも」と焦りを感じてばかりいる。

こんな状況にある方も多いのではないでしょうか?

安心してください
これはあなたの記憶力の問題ではありません。
年末年始という「特殊な環境」が引き起こす、脳のちょっとした誤作動なのです。
原因さえわかれば、失われかけた記憶は取り戻せます。

本記事では、年末年始に学んだことが思い出しにくくなる2つの理由と、今日からすぐ実践できる対策を紹介します。

理由1| 環境が変わると、記憶を思い出しにくくなるから

記憶は、私たちが思っている以上に、場所や時間といった周囲の情報と強く結びついています

たとえば、こんな経験はありませんか?

学習したときと同じ場所や状況にいると、記憶をより思い出しやすくなる現象を、「文脈依存記憶(context-dependent memory)」といいます。*1

何かを学んだり記憶したりすると、それを覚えたときの環境 —— たとえば、コーヒーの香りやカフェのなかの風景なども一緒に記憶として保存されます。
その結果、「コーヒーの香りがすると、覚えた単語が思い出しやすい」といった現象が起こるのです。

年末の学習についても、同じことがいえます。

年末年始と普段の生活とでは、周囲の環境や生活リズムが大きく異なります
そのため、仕事が始まると、年末年始に学んでいた内容や考えていたことを、うまく思い出せなくなってしまうのです。

◇ 対策 「同じ場所・時間・動作」で、意識的に記憶を呼び戻す

「記憶したときと同じ環境に近づくと、思い出しやすくなる」という特性を利用しましょう。

たとえば——

  • ✔︎ 年末に読書をしたカフェで、再び同じ本を読んでみる
  • ✔︎ 同じ時間帯(勉強したのが夜なら夜、朝なら朝)に、
    同じ飲み物を用意してテキストを解き直す

このように、学んだときの環境をできる範囲で再現してみてください。
もちろん、完全に同じである必要はありません。
場所、時間、動作のどれかひとつでも似た手がかりがあれば、脳は記憶を引き出しやすくなります。

睡眠不足で頭を抱える男性のイメージ。記憶の定着には十分な睡眠が不可欠

理由2|睡眠不足で、記憶が定着しにくくなっていたから

年末は、仕事の締め切りやプライベートの予定が重なりやすく、つい睡眠時間を削ってしまいがちです
睡眠不足が記憶力を低下させることは、よく知られています。

明治大学教授の堀田秀吾氏は、「脳は深く眠っている間に記憶を定着させるため、睡眠時間が短く深く眠る時間が少ない人はその分、記憶を定着させる時間が減り、結果的に記憶力が低下してしまう」と語ります。*2

つまり、年末に忙しい合間を縫って勉強したとしても、睡眠が不足していれば、いつもより記憶が定着しにくい状態になっていた可能性が高いのです。

◇ 対策 「思い出す」時間を意識的につくる

とはいえ、睡眠不足だったからといって、年末に学んだ内容がすべてムダになったわけではありません。
忘れてしまった部分をいまから補えば、何の問題もありません。

そこでおすすめなのが、年末に学んだ内容をひととおり思い出してみること。
これは「アクティブリコール」と呼ばれる手法です。

たとえば——

  • ✔︎ 覚えた参考書の内容を、誰かに説明するつもりで紙に書き出してみる
  • ✔︎ 読んだ本の内容を、思い出せる限り箇条書きでメモしてみる

このように書き出しながら思い出してみましょう

ここで思い出せたものは記憶にしっかり定着しているので、復習の必要はありません。
テキストや本を確認し、思い出せなかったことだけチェックすればOK。
アクティブリコールは、効率的に復習できるだけでなく、記憶を長期的に定着させる効果もあります。

アメリカの医師国家試験でトップ1%の成績を収めた安川康介氏は「思い出す作業、アウトプットすることこそが、記憶を長期に定着させる効果的な勉強法」であると述べています。*3

思い出すだけなら、そんなに時間はかかりません
記憶をしっかり定着させるためにも、ぜひ学んだことを思い出してみてください。

***

年末〜1月は学びがストップしてしまう人が多い時期。
そんななかでも、しっかり自己研鑽するのは素晴らしい行動です。
年末年始の努力をムダにしないためにも、いまからできる工夫を取り入れてみませんか?

よくある質問(FAQ)

Q. 文脈依存記憶を活用するには、年末年始に勉強した場所に必ず行かないとダメですか?

A. いいえ、必ずしも同じ場所に行く必要はありません。場所、時間、動作のいずれかひとつでも似た手がかりがあれば、脳は記憶を引き出しやすくなります。たとえば、同じ飲み物を用意する、同じ時間帯に復習するなど、できる範囲で環境を再現してみましょう。

Q. 年末年始にしっかり睡眠をとっていた場合でも、記憶が思い出しにくいことはありますか?

A. はい、あります。睡眠不足だけでなく、「文脈依存記憶」の影響も考えられます。年末年始と普段の生活では環境や生活リズムが大きく異なるため、睡眠が十分でも記憶を引き出しにくくなることがあります。

Q. 年末年始に学んだことをほとんど思い出せない場合、最初からやり直すべきですか?

A. いいえ、最初からやり直す必要はありません。まずはアクティブリコールで思い出せる部分を確認し、思い出せなかった箇所だけを重点的に復習しましょう。一度学んだ内容は完全にゼロになったわけではないので、効率的に取り戻せます。

【ライタープロフィール】
柴田香織

大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。

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