スマートフォンの所有率は64.2%といわれ、連絡手段のひとつとしてだけでなく、さまざまな用途があり、日常生活で欠かせないツールになっています。通勤、通学のスキマ時間に気軽に勉強ができることもあり、学生はもちろん、社会人の方もスマートフォンで勉強している方も多いと思います。

この方法で、勉強する時間が増えたかもしれませんが、その成果は出ているのでしょうか? “勉強した”という事実に満足していませんか?

もちろん効果的な使い方はあるのですが、あくまでもそれはほんの一部で非常に限定的なもの。生活をする上で非常にメリットの多いスマホですが、「勉強」に関してはデメリットが多く存在しています。

画面が小さい

当然のことですが、スマホの画面はかなり小さいものです。
iPhone6の画面サイズは、104×59mmで、一般的な生徒手帳と同じくらいなんだとか。

一方で、ノートや手帳はどうでしょうか。筆者の愛用するスケジュール帳はB6サイズなので、182×128mm。2倍以上の面積があります。学生が頻繁に利用するB5サイズのノートは、このさらに2倍ということを考えれば、いかにスマホが小さいかがわかるでしょう。

そして、これが勉強において致命的な弱点になります。

スマホは文字の拡大・縮小を行うことができるので画面の大きさは関係ない、と思われるかもしれませんが、拡大すると画面に表示できる情報量は減ってしまいます。これは人間の脳の仕組みから考えると非常に不利なのです。

人間は、前後のつながりで文章や情報を理解するといいます。下記の文章を読んでみてください。

みさなん、まだまださむいすでが、おんげきですか。かぜなどひていないいですか。

(引用:ガジェット通信|人間の脳って不思議! 文字の最初と最後だけあっていればめちゃくちゃな文章でも読めてしまう

注意深く読むと、全く意味をなしていません。しかし、パッと見で理解する分には十分ですよね。これは、人間が「前後のつながり」から推測して文章を理解している証拠です。例えば、上の文から一部だけを取り出してみましょう。

「ひていないいですか」

今度は「ひいていないですか」とは読めないはずです。スマホのようなデバイスで文字や図を拡大しながら情報をインプットすると、これと似たような現象が起こります。まるで本を1ページずつ読むように、前後のつながりが分かりづらくなるのです。

「情報のぶつ切り」を防ぐためにも、ノートや手帳のような大きく一覧性の高い媒体で勉強しましょう。

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他のタスクに邪魔される

スマホで勉強する際、最も大きなハードルとなるのが「マルチタスク」です。

リスニングの勉強やレジュメの読み込みをスマホでやっていると、チャットアプリの通知があり、そのまま友人と楽しくチャットを続けているうちに、時間がなくなってしまった、といった経験は誰しもあるはず。

スマホはあらゆる機能が搭載されたマルチデバイスであるがゆえに、本来のタスクが他の作業に邪魔されるのです。マルチタスクがなぜいけないのでしょうか。

それを立証した興味深い実験があります。イギリス、サセックス大学の認知科学センターの研究者たちは、75人の成人の脳をMRIで測定する実験を行いました。すると、その中でも、事前のインタビューで「スマホやPC、その他のメディアを同時に使う頻度が高い」とした被験者の方が、脳の中でも認知機能などを司る部位の灰白質の密度が小さかったといいます。

灰白質は、脳の神経細胞が集合している部分。神経がぎっしり詰まっているので、周りの白い脳組織に比べ、色が濃く灰白色になっていることからこの名前がつきました。まだ関連性がはっきりしたわけではありませんが、「マルチタスクの脳に与える影響は確かだ」と、研究員は話しています。

人間の脳は、一度にたくさんのことをするようにはできていないのかもしれませんね。

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書き込みができない

PDFにテキストを打ち込む機能もありますが、書き込みの方が圧倒的に自由度が高く、手軽です。

勉強において「書き込み」は、かなり重要な作業のひとつ。それは、参考書やレジュメを読みながら書き込みを行うことで、インプットとアウトプットを並行して行えるからです。

みなさんは、九九の暗算をどうやって覚えましたか? 先生に配られたプリントや九九の表を見つめるだけでしたか?
きっと声に出して、暗唱の練習をしたはずです。

人間の脳は、「出力依存型」だといわれています。インプットだけでなく、アウトプットを通して記憶を定着させるのです。スマホの画面をじっと見つめるだけでは、学習効果が薄いといえるでしょう。

紙とペンを持ち、実際に手を動かしてこそ、記憶の定着が図れるのです。

量も質もまだまだ紙に及ばない

スマホの学習アプリ、学習サービスが充実し始めたとはいえ、まだまだ紙の学習媒体のボリュームや質には到底及びません。

例えば、amazonで「英語 参考書」と検索するだけで、実に3万冊以上の参考書がヒットします。一方、apple storeに掲載されている「教育系」のアプリは全て合わせても5000件程度。

量だけでなく、質に関しても参考書の方が高いといえます。アプリがリリースに至るまでの審査基準は、主に内容が社会的に不適合でないか、アプリとしてきちんと動作するか、というところに主眼が置かれています。「学習アプリ」としての内容がきちんと審査されているわけではないのです。

一方、参考書は出版社が売れる、すなわち、ターゲットである学生に高い評価を受けると判断したものしかリリースしません。そのため、より学生のニーズに沿った、学習効果の高い教材が出されることになります。もちろん、個々の参考書によって、そのクオリティにはばらつきがあるかもしれません。いずれにせよ、出版社が売れると見越してリリースした、という質の担保があるのです。

さらに、参考書の中には、教育機関と連携して作成したものやその学問の専門家が監修したものなど、開発に費用と時間をかけたものも少なくありません。

学習アプリを揃えるのではなく、評判のいい参考書を1冊使用した方が効果が高いでしょう。

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英語のリスニングや単語のクイズなど、スマホだからこそできる勉強もあるかもしれません。しかし、手軽さに甘えて勉強するのではなく、最も効率よく、学習効果の高い勉強方法を選びましょう。

(参考)
総務省|第3部 基本データと政策動向
D2Cスマイル|iPhone6、6 Plus の画面サイズって縦横何センチか調べてみた。
ガジェット通信|人間の脳って不思議! 文字の最初と最後だけあっていればめちゃくちゃな文章でも読めてしまう
University of Susex|Brain scans reveal ‘grey matter’ differences in media multitaskers