自分を変えたい。チャンスが欲しい。でも、いったい何を、どうしていけばいいのかわからない……。
ならば、まずは今日1日を、たった1行で振り返る日記を始めてみてはいかがでしょう。物事や他者への見方が変わり、意味や気づきを得て成長できるそうです。有識者らの言葉を参考に、詳しく説明します。
「振り返り」こそが成長に必要
Zホールディングス株式会社 Zアカデミア学長の伊藤羊一氏は、どんなに忙しくても散歩と瞑想、そして「1行日記」を毎日のルーティンにしているそうです。 「1行日記」とは、今日やったことを1行書いて振り返る日記のこと。書いた内容に基づき、「意味・気づき・次の行動」について考えることも含まれます。
伊藤氏によれば、振り返りで得た “気づき” を、次の行動に生かそうとする人は成長が速いのだとか。そうしたこともふまえ、振り返りこそが成長に必要だと同氏は説きます。日々の出来事から、どれだけたくさんの気づきを得られるかが重要とのこと。
じつは、この伊藤氏が言う「振り返り」は、Apple の共同設立者のひとりである、故スティーブ・ジョブズ氏の言葉にも通じています。
人生のどこかで実を結ぶ「点と点」
ジョブズ氏が「Stay Hungry, Stay Foolish(ハングリーであれ。愚か者であれ)」と締めくくり、大きな感動を呼んだ米スタンフォード大学2005年卒業式でのスピーチには、「点と点をつなげる」という話がありました。
若かりしジョブズ氏は、早々に退学を決めた大学を去るまで、カリグラフィー(西洋の書道)の講義に没頭したそうです。
当時は「将来に役立てよう」などとはまったく考えず得た知識・技能でしたが、のちに、最初の Mac(Macintosh)の設計に大きく貢献したのだとか。まさにそれは、世界をアッと言わせた Mac の美しいフォント(書体データ)のことです。つまり、「大学のカリグラフィーの講義」という点が、時を経て「Mac のフォント」という点につながったわけです。
しかし、ジョブズ氏は、「将来を見据えて点と点をつなぎ合わせることなど “できない”」とも述べました。「だからこそわれわれは、いま行なっていること(点)が、いずれ人生のどこかで何かの出来事(点)につながり、実を結ぶだろうと信じるしかない」と力強く説いたのです。
ここで、伊藤氏が提唱する1行日記に話を戻します。なんと1行日記は、ジョブズ氏が説いたこの「点と点のつながり」を簡単に見いだすための方法なのだとか。1行日記で振り返りを日々重ねていくと、以下のことが見えてくるのだそう。
- 自分にとって意味のあるストーリー
- 過去・現在・未来につながる道
たとえば「ある日、〇〇をやってみた」⇒「ある日、◇◇に参加した」⇒「ある日、この問題は、〇〇と◇◇の組み合わせで解決するかも? と気づく」⇒「それなら、さらに△△をやってみてはどうだろう? と次のアクションが頭に浮かんだ」といった具合に、過去から未来につながるストーリー(点と点のつながり)が見えてくるわけです。
1行日記で「チャンスを呼び込む体質」に
心理カウンセラーのみずがきひろみ氏も、同じく1行日記をすすめています。ただし、こちらは毎日寝る前に1日を振り返り、“いいね!” と感じたこと(よかったこと)を1行だけ書く日記です。同氏が「いいね!日記」と呼ぶこの習慣を身につけると、チャンスを呼び込む体質になれるのだとか。
なぜならば、“いいね!” と感じられる出来事にアンテナを張るようになると、物事のいい面に目を向けるクセがつくからです。たった1行の日記習慣で、ものの見方が変わってくるということ。
そうして物事のいい面や、他者のいいところに目が向いてくると、あらゆることに楽しく取り組むことができ、発言も前向きになると同氏は言います。すると周囲の人々も、「〇〇さんがいると楽しい」と感じ始めるのだとか。いい面に目が向き、好意的な人々も寄ってくるのですから、いろいろなチャンスが舞い込みやすくなるのは当然かもしれません。
最初は何を書いていいかわからなくても、この日記を続けていれば、自然と “いいね!” と感じる出来事にアンテナが立つようになり、生活を楽しむサイクルも回り始めるとのこと。つまり、思考と行動がポジティブに、建設的になっていくわけです。
1行日記のやり方
では、伊藤氏、みずがき氏、それぞれの1行日記の具体的なやり方を紹介していきましょう。
――伊藤氏の「1行日記」
伊藤氏の1行日記は、まず以下を「1行書く」そうです。
- 今日やったこと
それから、“今日やったこと” について、以下3つを「頭のなかで考える」のだそう。
- 自分にとっての意味を振り返る
- 気づきを得る
- 次のアクションを考える
ここまでが伊藤氏の提唱する1行日記のひとくくり。具体的な例はこうです。
- 自分にとってどんな意味があるか:「新しい知識を得られた」
- 気づき:「普段選ばない本の内容は、自分に欠いている部分かも」
- 次のアクション:「いろんな人から “おすすめの本” を聞いてみよう!」
――みずがき氏の「1行日記」
みずがき氏の1行日記では、たとえば「ランチがおいしかった」「天気がよかった」「欲しかった靴が安くなっていた」など、1日を振り返って “いいね!” と思えたことを書きます。目的は書くことではなく、ポジティブな出来事にアンテナを立てることなので、文章は短くても、単語を書き並べるだけでもいいそうです。
さらに、また日記に “いいね!” と思えたことが書けるよう、行動自体も変えてみるのだとか。
たとえば「早起きしてじっくりコーヒーを淹れてみる」「気になっていたお店に入ってみる」「家に読書スペースをつくってみる(ただ窓際に椅子を置くだけでもいい)」など、いつか “やろう” と思っていたことを1日にひとつ実行して、小さなステキを集めていくといいとのこと。
まずはたった1週間だけでも続けてみるといいそうですよ。効果は大きいのに、ハードルは低いのですね。
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気づき・チャンスを与えてくれる、ふたつの「1行日記」を紹介しました。いずれも肩の力を抜いて “毎日1行だけ書けばいいんだ” と、気軽に始めてみてくださいね。
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東洋経済オンライン|50代で爆速進化する人が「1行日記」を書く理由
NIKKEI STYLE|チャンスを呼び込む体質になる新習慣
日本経済新聞|「ハングリーであれ。愚か者であれ」 ジョブズ氏スピーチ全訳
伊藤羊一著,(2021),『1行書くだけ日記 やるべきこと、やりたいことが見つかる 単行本』, SBクリエイティブ.
STUDY HACKER 編集部
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