怒りを見える化「アンガーログ」をやってみた。不要な怒りが鎮まり、賢くキレられるようになる!

メガホンを持って怒るビジネスパーソン
人は、自分が「何」に対して怒りを感じやすいのか、意外と理解していないそうです。だからこそ、“怒り” を見える化する「アンガーログ(怒りのメモ)」が役立つのだとか。

また、人はたとえ対等でも、搾取する側と、搾取される側になってしまう可能性があるそう。じつは、これにもアンガーログが役に立ちます。そこで今回は、

  • 不要な怒りを鎮めたいと感じている
  • 不当に搾取されて怒りを感じている

といった方々に、「アンガーログ(怒りのメモ)」を紹介します。まずは、搾取関係の説明から。

「搾取関係」とは?

社会には、相互協力関係や、搾取関係などが存在します。後者の「搾取関係」は、次のように説明されるのだとか。

  • 【搾取する側】は、【搾取される側】の利益を犠牲にして、不当な利益を得る。
  • 【搾取される側】は、たとえ自力で【搾取する側】との関係を解消できるとしても、その関係を解消せずに受け入れている。

つまり、理不尽に人から(金銭・労働・時間などを)搾り取る人と、理不尽な状況でも抵抗せずに搾り取られている人との、不可解な関係を指します。

搾取関係の図解

一般的には雇用関係や階級を背景にした言葉。一方的に利益を搾取しようとするのは、サイコパスの特徴でもある。

対等な2人でも搾取関係に陥る!?

「囚人のジレンマゲーム」をご存知でしょうか? 次のような選択肢を活用した、ゲーム理論の代表的なモデルです。

  1. 相手を裏切って自白すれば自分は無罪だが、相手は懲役10年
  2. 協力し合って黙秘すれば、双方とも懲役2年
  3. お互いが自白すれば、双方とも懲役5年

自分だけが裏切って自白すれば本来は無罪になれます。しかし、お互いが自分の利益を最大にしようとすれば、必然的に2人とも裏切ることが予想されます。そうなると、双方が自白することになるので、結局は懲役5年になるわけです。

ならば、最初からお互い協力し合い、双方とも自白せず懲役2年を選ぶのが得策ですよね。しかし、お互いが自分の利益を最大にしようとする限り、そうはなりません

ライバルを陥れようとしているビジネスパーソン

そんななか、東京大学教授の金子邦彦氏と大学院生の藤本悠雅氏は、この「囚人のジレンマゲーム」を用いて、同等な2人においても搾取関係が発生しうると理論的に示したそうです。2019年11月5日に『PHYSICAL REVIEW RESEARCH』で公開された研究です。

囚人のジレンマゲームを繰り返していくと、はじめは同等だった2人が、最終的には搾取する側と、搾取される側に分かれると発見したそう。この分化は、両プレイヤーの初期戦略の “わずかな違い” が、のちに増幅した結果なのだとか。

その “わずかな違い” とは、心の狭さと、寛容さの違いです。

「心が狭い人」は「寛容な人」を知ることでより心が狭くなり、「寛容な人」は「心の狭い人」を知ることでより寛容になるのだそう。

つまり、心の狭いAが「お、Bからは難なく搾り取れるな」と味を占めたら最後、「Aは何でも欲しがるよねー」と寛容にかまえているBは、Aから延々と搾取され続けてしまうわけです。

こうした状況について、中野信子さんは警告を発しています。

利己的で搾取する人と、搾取される人

ひたすら搾取されてしまう人がいる!?

脳科学者の中野信子さんは、 いいように利用されても怒らない人、怒りを覚えても我慢している人に対し、自分を守るためには、上手に “怒り” を示すことも必要だと説きます。

「心が広い人」というと聞こえはいいですが、搾取する側にとって「心が広い人」は、格好の餌食でしかないからです。

前出の研究では、「ちょっと腑に落ちないけど、まあ今回だけはいいか」といった初動対応が、やがて増幅し、のちに搾取関係の固定化につながると示されました。中野さんは、「自分は簡単にやりこめる人間ではない」と相手に知らしめるために、最初のうちこそ “怒り” を示すべきだと述べます。

相手に不利益を与える人(搾取する人)は、反撃してこない人(搾取される人)を探し当て、その人を狙って攻撃し続けるのだとか。

中野さんいわく、相手に搾取され不利益を被っていると感じ、少しでも “怒り” を覚えたのであれば、自分の正当な “怒り” を「賢くキレる」という形で、はっきりと相手に示す必要があるとのこと。

怒った顔文字

とはいえ、やみくもに “怒り” を相手にぶつけよう、とけしかけているわけではありません。「賢くキレる」とは、状況に応じて、タイミングや言葉を選び、相手に自分の気持ちや意思を強く伝えることなのです。

そして、その際にはアンガーログが役立ちます。

アンガーログ(怒りのメモ)とは?

アンガーログとは、“怒り” を覚えたときにその場で、あるいは覚えているうちに、“怒り” を記録することです。 分析や反省は行なわず、サッと書いてしまうことがポイント。

書くことで思考が整理され、冷静になることができ、“怒り” も少しやわらぐそうです。書いてみたら「あれ、なんだ、こんなことか」と思えてきて、簡単に “怒り” を手放せる場合もあるとのこと。

アンガーログを続けていくことにより、自分の “怒り” の傾向もわかってくるそうです。傾向がわかれば、対策を立てていくことも可能になりますよね。たとえば、こうです。

  • 慌ただしくなるとイライラするなら→予定を詰め込みすぎない。
  • 仕事を終え、急いで夕飯をつくるとイライラするなら→忙しかった日は食事の準備を頑張らない(総菜を買う)。
  • 文章を考えているときに電話が入るとイライラするなら→「〇時から〇時まで電話OK」と先方に伝えておく。

また、“怒り” は理想や願望が裏切られたときにも生じるといいます。アンガーログによって、自分が「こうあるべきだ」「こうなって当たり前」と、理由もなく考えてしまっていることにも気づけるでしょう。

アンガーログ(怒りのメモ)を書いている手

なぜ賢くキレることにアンガーログが役立つのか?

また、アンガーログが怒りを鎮めるだけではなく、「賢くキレる」ときにも役立つ理由は、やはり “怒り” を客観視でき、対策をとれることにあります。

たとえば、Aさんが親しい友人との食事が楽しいと感じられず、帰宅してからもモヤモヤ感が続き、つい家族にイライラしてしまったとき――じつはいつも友人が、かなり待ち合わせ時間に遅れてばかりで、その都度「大事な仕事があって」と言い訳していた背景があるかもしれません。

毎回遅刻しておいて言い訳する女性と、時間を搾取された人

Aさんは、「まあ仕事なら仕方がないか」と自分を納得させていたつもりですが、じつは心の奥底で「わたしだって頑張って重要な仕事を効率よく終わらせ、キッチリ待ち合わせ時間前に到着しているのに……」と “怒り” をつのらせていたわけです。

そんなケースにも、アンガーログは効果を発揮します。“怒り” を明確に認識できれば、困った友人にどう対応していくか、考えることができるでしょう。たとえば、こんなふうに、“やんわり” と釘を刺せるわけです。

「〇時に待ち合わせできそう? 無理そうなら、今回はキャンセルして、また次回にしよう」あるいは「この前みたいに長時間待つのはさすがにキツいから、いつか〇〇ちゃんが、時間どおり来れそうな日を選んで待ち合わせしよう」

理不尽だと感じ、“怒り” さえ覚えていながら、それでも寛容に受け止めようとすることは、決して健全ではありません。搾取する人に、搾取され続けられないよう、アンガーログを記録して自分の “怒り” を客観視し、ビシッと賢くキレましょう

アンガーログの書き方

横浜市立大学医学部看護学科講師の田辺有理子さん、経営コンサルタントの川嵜昌子さんによると、アンガーログの書き方は次のとおり。少しでも “怒り” を覚えたときに記録します。

  1. 日時
  2. 場所
  3. 出来事
  4. 思ったこと
  5. 怒りの強さ(点数)

怒りの強さ(点数)は1~10でつけるとのこと。田辺有理子さんによると、怒りの強さの目安は次のとおり。

  • 軽い不快感(一時的にイラッとする):1~3
  • まあまあ強い怒り(チッと舌打ち~相手を怒鳴りつける):4~6
  • 激怒、血圧上昇、コントロールの限界(仕事が手につかない):7~9
  • 人生最大の怒り:10

ごく普通の日常で感じる、理性の範囲内におさまる怒りは1~5くらいですね。田辺さんは、感情をのせずに事実のみを書くようアドバイスしています。

文字にして “怒り” を可視化すると、目を背けてきた現実を突きつけられるとのこと。“怒り” にうまく対処するには、まずは自分の感情と向き合い、認めることが第一歩なのだとか。

また、田辺さんは、記録することで “怒り” の傾向(怒りやすい時間帯・相手・状況)が見えてくるので、怒りを分析する手がかりになると述べています。怒りメモを丸めてゴミ箱に捨て、不要な怒りの感情とともに捨ててしまうのもおすすめだそうですよ。

では、筆者も実践してみましょう。 

「アンガーログ(怒りのメモ)」を記録してみた結果

アンガーログ(怒りのメモ)をつけてみた

今回アンガーログを記録してみてまず感じたことは、怒りの強さ(点数)と、重要度が、相関しないことでした。

「怒りが強い」≠「重要度が高い」

かなりイラっとしたのに、書いてみたら「なんだ、こんなことか」と思えたからです。怒りのメモを書いたからこそ、そう思えたのかもしれませんね。

また、いつもいろいろ尋ねてくるわりには、筆者の回答にそれほど反応しない知人に対してモヤモヤしていた気持ちは、“怒り” だと判明しました。「ああいう人だから仕方がない」と、見ないふりをしていた “怒り” を認識できたわけです。

そこでさっそく該当者に「(時間と労力を)搾取する人」の烙印を押し、次回また同じようにあれこれ聞いてきた際には、タイミングや言葉を選び、賢くキレて、相手に自分の気持ちや意思を強く伝えようと決めました。

たとえば、こんなふうに――

「そちらの件を調べるのは、前回の件同様に少し時間がかかります。申し訳ございませんが、いま仕事が忙しいので今回はお役に立てません」

――ビシッと伝えよう、と考えただけでも、なんだか気分がスッキリしてきましたよ……!

***
不要な怒りを鎮め、賢くキレる際にも役立つ「アンガーログ(怒りのメモ)」を紹介しました。ぜひお試しくださいね。

(参考)
日本アンガーマネジメント協会|怒りの記録「アンガーログ」をつけよう  
東京大学|囚人のジレンマで搾取が発生する仕組みを解明  
EconomicNews|搾取は「心が狭い者」と「寛容な者」の間に形成される。東大、ゲーム理論で搾取を解明  
Physical Review Research|Phys. Rev. Research 1, 033077 (2019) - Emergence of exploitation as symmetry breaking in iterated prisoner's dilemma  
現代ビジネス|「サイコパス」はなぜここまで人を惹きつけてしまうのか(管賀 江留郎) 
新R25|“キレ”なければ搾取される。脳科学者・中野信子が語る「キレることの重要性」  
朝日新聞デジタル|あなたの怒りの測り方
朝日新聞デジタル|日々の怒りをメモしよう 
ferret|囚人のジレンマとは?ゲーム理論の代表的なモデルを解説

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