
「会議で発言したのに、私の意見が飛ばされた……どうして?」
「上司から直接叱られたわけではないけど、嫌われている気がする……」
相手のちょっとした行動に対して「気分を害してしまったのかな?」「嫌われているのかも」と不安に思うことはありませんか? 面と向かって悪口を言われたわけでもないため、「気のせいだ」と思い込もうとしても、モヤモヤしてしまう……筆者にもそんな経験があります。
思い当たる方は、もしかしたら「パッシブアグレッシブ」を受けているのかもしれません。パッシブアグレッシブとは? その代表的な特徴とは?——今回の記事では、パッシブアグレッシブの特徴とともに、対応策を紹介いたしましょう。
一見無害に思える「パッシブアグレッシブ」とは?
怒鳴る、悪口を言う、自慢話をする……このようなあからさまに厄介な人は、すぐにわかるもの。ですが、典型的な攻撃パターンとは異なる “控えめな攻撃” について、認識できる人は少ないのではないでしょうか。
一見無害に思える “控えめな攻撃” を、「パッシブアグレッシブ(passive-aggressive)=受動的攻撃」と呼びます。直接相手にイライラをぶつけるのではなく、無視や皮肉を通して間接的に相手を攻撃する行為です。
あからさまな攻撃より、ダメージが弱いと思うかもしれません。しかし、はっきりとは認識できない攻撃ほど、「冗談のつもり」「ただ聞こえていなかっただけ」などと、言い訳できてしまうもの。つまり、いくらでもごまかしが効くのです。
キャリアアップの専門家、認定プロフェッショナル キャリア コーチ (CPCC)のアマンダ・オーガスティン氏は以下のように述べています。
Passive-aggressive behaviour can be difficult for organisations to address, because it’s often very subtle and indirect in nature *1
(パッシブアグレッシブは、非常にわかりづらく間接的な行動であるため、組織として対処するのが難しいのです ※和訳は筆者が行った)
当然ながら周囲も自身も認識しにくいため、攻撃された側は「理由はわからないけど、なぜか嫌われているのでは?」と混乱します。長いスパンで見れば、敵なのか味方なのかわからない人と一緒に仕事をすることほど、苦痛なものはないでしょう。怒りや不満を向ける対象が定まらないからです。

パッシブアグレッシブ「3つのチェックリスト」
ニューヨーク大学医学部精神科の臨床助教授、レイチェル・ゴールドマン博士は、パッシブアグレッシブに次のような特徴があると指摘します。*2
職場の人や自身に当てはまるものはないか、チェックしてみてください。
特徴1. 無視する
意図的に相手を「いないもの」にするのも、パッシブアグレッシブの特徴です。たとえば……
- 部下に仕事を依頼しても、返事が来ない
- 会議で自分の意見を言っても、別の話を進める
- 社内チャットで連絡しても、一向に返信が来ない
上記に当てはまるのであるなら、相手が鈍感なのではなく、無視という行動で不満を表している可能性も。「聞き方が悪かったのかな?」「声が届かなかったのかも」とモヤモヤ考えてしまうのなら、パッシブアグレッシブの可能性も考えてみてください。
特徴2. 仕事を遅らせる
「すぐにやります」と返事をしたのに、部下は依頼した仕事にまだ手をつけていない……。このように仕事をわざと遅らせる行動も、特徴のひとつです。
先延ばし癖があるわけではなく、一種のサボりのようなもの。言葉では「早く着手する」ことを約束していても、あとで「ほかに優先することがあったので」「立て続けで大事な案件があって……」と言い訳を繰り返す……。表面上悪意がないように思えますが、立て続けに言行不一致が見られるのであるなら、不満を行動で示している可能性があります。
特徴3. 不機嫌になる
わざと大きなため息を洩らす、冗談を言っても無表情でいる……。「不機嫌になる」のも特徴のひとつです。常に機嫌よくいるのは難しいとはいえ、あなたの前でたびたび不機嫌さを示すのなら、不満や怒りを表現している可能性があります。
たとえば、上司に業務上の不明点を質問しようとしたら、見下げた態度で大きなため息を吐かれた……。こんな状況では、「忙しいところを邪魔してしまった」「仕事ができない部下だと思われたかも……」と落ち込んでしまいますよね。ですが、部下をマネジメントする立場であるのなら、不機嫌な態度ではなく、言葉で伝えるのが正しい育成方法であるはずです。

もし、職場の人がパッシブアグレッシブをしていたら
パッシブアグレッシブに身に覚えのある人は多いのではないでしょうか。決して激しい攻撃ではなく、誰にでも起こりうる行為です。とはいえ、何度も繰り返されるのであれば、「相手に嫌われているかも」と自信をなくし、共同で行なう仕事もスムーズにはいかなくなってしまうでしょう。
「Living With the Passive-Aggressive Man(受動的攻撃性の人間と共に生活する)」の著者、モンテフィオーリ・メディカルセンターの副所長のスコット・ウェツラー博士は、パッシブアグレッシブへの対応について「大まかではなく詳細」に指摘するとよいと提案します。*3
たとえば、依頼した仕事を部下が先延ばしをしていたのなら——
「先日依頼した仕事は、明日の午前中までに仕上げてほしいとお伝えしました。現状では半分も終わっていないようですが、何が原因で遅れていますか?」
「もし、明日の午前までに間に合わなければ、クライアントへの信頼を大きく損なうことになります。チーム全体に影響が生じるため、非常に困ります。今後、遅れるようであるなら事前に報告してください」
と、具体的に指摘するのです。
同様に、会議で自分の話を飛ばされたのなら——
「勘違いでなければ、先ほど私の意見を飛ばされたようですが、何か理由があるのでしょうか? この件に関しての意見交換は重要だと感じています。ぜひ、私の意見を共有させてください」
と相手に投げかけてみてください。
ウェツラー博士によると、ポイントは「特定の行動に関して話す」こと。「なんで私の指示したとおりに動かなかったの?!」と感情をそのまま相手にぶつけても効果はありません。そうではなく、不快に感じた相手の行動を詳しく指摘しましょう。
たとえば、先延ばしの例で言えば、
- 「先延ばししている仕事の守るべき期限」
- 「現状の進捗具合」
- 「期限を守らないと起こる損害」
- 「こちら側の感情」
を述べることで、相手に「自分の問題行動」を意識してもらうのです。
相手の行為を受け入れる必要も、感情をぶつける必要もありません。相手もあからさまな衝突を避ける代わりに、パッシブアグレッシブをしているわけですから、“自覚してもらう”ことが最善の対応。詳しく指摘したら、相手も自分の幼稚な行動を恥じるはずです。
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不快な行為を繰り返されるのなら、詳細かつ具体的に対処しましょう。相手の幼稚な態度に振り回されないために、具体性を意識した姿勢でいることです。
*1 BBC|The passive-aggressive colleagues who poison workplaces
*2 verywell|How to Recognize Passive-Aggressive Behavior
*3 HUFFPOST|受動的攻撃性の人と付き合う秘訣
青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。