「最近、何となく頭がぼんやりしている」
「記憶力や集中力が低下した気がする」
「疲れていて、思考力があまりない」
このような状態では、仕事がままならなくなり、ビジネスパーソンにとって致命的。
東北大学加齢医学研究所の瀧靖之教授の研究によると、脳を健康に保つためには、毎日の生活習慣が大きく影響してくるようです。そこで今回は、脳を健康に保つための習慣をご紹介します。
脳にいい習慣を生活の中に取り入れ、ぼんやりした頭をスッキリさせませんか?
タスクごとに時間を決める
著書『脳が冴える15の習慣—記憶・集中・思考力を高める』(NHK出版)で知られる脳神経外科の築山節氏によると、脳の使い方を改めることにより記憶力や集中力、思考力や意欲などが高まるそう。
築山氏は著書の中で、集中力を上げるために「脳の基本回転数を上げる」ことをすすめています。聞き慣れない言葉ですが、要は頭の回転の速さのこと。頭の回転の速さは、生まれ持っての性質のように思えますが、実際は鍛えることが可能なのです。
脳の基本回転数は、時間の制限があるなかでタスクをこなさなければならないときに上がるそう。たとえば学生の頃、テストの1週間前に勉強を始めるとダラダラしてしまうけれど、「前日に一夜漬けで勉強をすると、自分でも驚くほどの集中力を発揮した」といった経験がある方は多いはず。このように、時間の制約があるなかでやらなければならないことがあるときに、脳の基本回転数が上がるのです。
この状態を意図的につくる方法として、普段から自分の中で制限時間を決めてタスクに取り組むのがおすすめ。たとえば「14時から16時の間に明日のプレゼン資料を作り終える」「その後、16時半までに、たまっているメールをすべて返信する」など、タイムリミットを決めてタスクに取り組んでみてはいかがでしょうか。
築山氏によると、頭の回転が速い人には、問題解決が必要な際にすばやく的確な判断ができたり、脳に蓄積された記憶を引き出すことが得意で臨機応変な対応ができたりといったメリットがあるそう。まさにビジネスパーソンにとって重要な素質ですね。
ストレスに気づき、早めに取り除く
京都大学名誉教授の生理学者である久保田競氏は、脳のためにはストレスを早めに取り除く習慣が重要だと述べています。ストレスは誰にでもあるものですが、異常なほど強くなり、長く続く場合は脳に悪影響を及ぼしてしまうそう。
ストレスを受けると、脳はストレスに対抗するために、ストレスホルモンと呼ばれるアドレナリンやノルアドレナリンを分泌します。それによって、血圧の上昇、血管の収縮、動悸などが起こり、体はストレスに耐えやすい状態になるのです。次に、コルチゾールというホルモンが分泌され、代謝活動を高め、さらにストレスに強くなります。しかし、ストレスを長く受けすぎると、コルチゾールが過剰に分泌されてしまい、脳に副作用が現れます。
まず、神経細胞が減少することで、問題解決能力が下がるのだとか。さらに、海馬が萎縮すると新しいことを覚えられなくなり、頭の働きが悪くなっていきます。そして、感情を司る扁桃核がうまく働かなくなり、精神状態も悪化するのです。
このように、ストレスを放置すると、脳の働きが悪くなってしまいます。とはいえ、仕事にストレスはつきものですよね。いったいどうすればよいのでしょうか。
ストレス解消におすすめの方法は、感情日記を書くことです。方法は以下の通り。
- 1日の終わりに、今日一番感情が動いた出来事を書き出す
- それによってどのような感情になったかを書き出す
- 感情の大きさに応じて点数(%)をつける
(例)
今日は、理不尽な理由で先輩に怒られた。正直、先輩のほうが大きいミスを連発しているし、自分の仕事がうまくいってないことの八つ当たりだと思う。かなり凹んだ。(感情:怒り90%、悲しみ70%)
このように、自分の感情を認識することで、無意識にストレスをためることを防ぐことができ、状況を客観的に見られるようになります。それによって対策を考えつくかもしれませんし、もしも怒りや悲しみなどネガティブな感情が続いているようであれば、解決するべきことが見えてくるでしょう。
筋トレで記憶力を向上させる
「筋トレ」と聞くと、ボディイメージに対して意識の高い人が行なうもの、というイメージがあるかもしれません。しかし、体が引き締まること以外にも、脳に嬉しい効果があるのです。
ジョージア工科大学の研究で、筋トレを行なうと記憶力が上がるということが判明しています。 同大学は、以下のような実験を行ないました。
- 46人の被験者に、パソコン画面に表示される90枚の写真を見てもらう
- その後、被験者をふたつのグループに分け、片方には脚の筋トレに50回取り組んでもらい、もう片方には椅子に座ったまま過ごしてもらう
- 2日後、前回見せた90枚に加え、新しい写真90枚を混ぜた合計180枚の写真を被験者らに見せ、どの写真を覚えているかを答えてもらった
(結果)筋トレを行なわなかったグループが平均して50%の写真を覚えていたのに対し、筋トレを行なったグループは60%の写真を覚えていた
筋トレを行なうと、記憶の定着を促すノルエピネフリンという神経伝達物質が分泌されるそう。20分程度の筋トレで、効果が現れるようです。ジムなどで行なうウエイトトレーニングでなくても、スクワットなどの自宅でできる筋トレで問題ないそう。ぜひ、自宅で実践してみてはいかがでしょう。
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体を鍛えれば筋肉がつくのと同様に、脳も日常にちょっとした工夫を加えることで鍛えることが可能です。今回ご紹介したものはどれもコストがかからず、今日からでも始められるものばかりですので、ぜひ生活に取り入れてみてはいかがでしょう。
(参考)
生涯健康脳住宅研究所|脳を活性化する4つの習慣
築山節(2006),『脳が冴える15の習慣—記憶・集中・思考力を高める』, NHK出版.
Wedge Infinity|「脳に良い習慣」で人生を活性化しよう!
STUDY HACKER|「感情日記」を書いてみたら、常に頭の片隅にあった心配事がどんどん浄化されていった話
Georgia Tech|Lift weights, improve your memory
【ライタープロフィール】
Yuko
ライター・翻訳家として活動中。科学的に効果のある仕事術・勉強法・メンタルヘルス管理術に関する執筆が得意。脳科学や心理学に関する論文を月に30本以上読み、脳を整え集中力を高める習慣、モチベーションを保つ習慣、時間管理術などを自身の生活に取り入れている。