仕事で認められたい、成功したいと頑張り続けられる人は、強靭な意志力を持つ人ではないでしょうか。何事にもブレず、自分の意思を貫き通せるのはすばらしいことです。
しかし、もしも意志力が歪んだ方向に働いて、人の言葉に耳を傾けることができなくなったら大変です。キャリアアップと成功に不可欠な、より「コーチブル」になる準備を始めましょう。
「コーチブル」とは?
「コーチブル(coachable)」を直訳すると “コーチ可能” ですが、意味するのは「人のアドバイスに耳を傾けやすくなること」です。
シティバンクやゴールドマン・サックスなどを経て、現在は株式会社経営共創基盤(IGPI)取締役マネージングディレクター/パートナーを務める塩野誠氏によれば、起業して失敗するかどうかはコーチブルにかかっているとのこと。
また、WordPress.comで知られるAutomattic社で、エンジニアリングマネージャーなどを務めるケイト・ヒューストン(Cate Huston)氏は、「ピーターの法則」(※後述)を逃れるためにできる最も重要な方法として、“よりコーチブルになろうとすること” を挙げています。
「ピーターの法則」とは?
「ピーターの法則」は、1969年に南カリフォルニア大学教授の教育学者ローレンス・J・ピーター氏によって提唱された、階層社会において起こり得る社会学の法則です。有能な人が無能になるメカニズム、組織の能力が低下するメカニズムを示しています。要約は次のとおり。
(1)能力主義の階層社会では人は能力の限界まで出世し、有能なスタッフは無能な管理職になる
(2)時が経つにつれ無能な人はその地位に落ち着き、有能な人は無能な管理職の地位に落ち着く。その結果、各階層は無能な人で埋め尽くされる
(3)ゆえに組織の仕事は、出世余地のある無能レベルに達していない人によって遂行される
(引用元:ビジネス+IT|「ハロー効果」と「ピーターの法則」で解説、出世した有能な人が無能になるメカニズム)
能力の限界どころか出世すらしていない筆者には、耳が痛い以前に「ちょっと何を言っているのかわからない」レベルですが、つまり――
- 有能なビジネスパーソンであれば昇進を繰り返す。
- 昇進後の地位が限界であれば、それ以上は昇進できない。
- 昇進の限界を「無能レベル」とする。
- ならば、組織のあらゆる地位は、無能な人間で占められていることになる。
- したがって、会社を実際に動かしているのは、まだ昇進の余地がある人々のみ。
- 昇進の余地がある人々が少なくなるほど、組織全体の能力が低下する。
――と説明しているわけです。かなり衝撃的な内容ですね。
ピーターの法則はコーチブルになることで打ち破る
Automattic社のヒューストン氏は、ピーターの法則がとても嫌いなのだとか。固定観念に満ちていて、周囲のサポートの欠如が感じられ、人々の成長に限界があることを示唆しているからです。
ヒューストン氏によれば、個人あるいは組織として成長を育むことにより、ピーターの法則が破られる可能性はあるとのこと。そして、成長を育むために必要なのが、「よりコーチブルになる=より人の言葉に耳を傾ける」ことなのだそう。
その際に役立つ方法を、ヒューストン氏が教えてくれました。
1.自己認識を高める
もしもAさんがBさんに、有用なフィードバック(指導・評価)をする準備があるとします。
しかし、Bさんが自分の能力を過大評価していて、自分に改善が必要な部分はないと考えているならば、どんなにAさんがいい指導を施しても有効活用はできません。
Aさんにしても、自己認識できていないBさんよりも、自己認識できている人のほうがフィードバックしやすいというもの。
フィードバックを受け進化したいなら、ありのままの自分を受け止め認識する努力をし、自分はまだまだ良くなれると考えましょう。そうしなければ、ピーターの法則の運命まっしぐらです。
2.視野を広げる
視野が広がれば可能性も広がります。ヒューストン氏おすすめの視野を広げる方法は、次の3つ。
- いろんな種類のフィクションを読んで共感力を高める
- 友人の輪を広げ、いろんなタイプの人間を知る
- 居心地のいい場所を出て、実際にいろんな場所へ出向き現実を体験する
3.防御をゆるめる
あなたにフィードバックを行なう人は、決してあなたを怒らせ、傷つけようとしているわけではありません。 フィードバックを受ける際に、防御を強めて会話を遮断したり、言葉を受け入れず自分の感情だけを伝えたりするのは、大きな間違いです。
フィードバックを受け自分を最適化したいなら、防御を弱めて会話を膨らませ、より多くを学びましょう。
それから余裕を持ってじっくりと、フィードバックのどの部分が自分に役立つか、自分自身で見極めていけばいいのです。
4.間違いや過失を認める
本来は誰もが、フィードバックする人から「あなたはこれに取り組む必要がある」と説得されたり、「取り組みなさい」と命令されたりするまでもなく、自律的に動くことが可能です。
しかし、自律的に動くには、自己認識を高め、防御をゆるめ、なおかつ自分の間違いや過失を認め、自分の行動が他人にどう影響するか(迷惑、足を引っ張るなど)理解することが大切です。そうすることで、相手のフィードバックがよく響き、建設的に行動することができるでしょう。
5.アドバイスを求める
じつは多くの人が、相手を動揺させたり怒らせたりすることを恐れ、「フィードバックせずに済むならそうしたい」と考えています。指導する側も、ストレスを感じているわけです。
しかし、そのままでは多くの人が、重要なフィードバックを逃してしまいかねません。自ら積極的にフィードバック(指導)を求めましょう。 もしくはアドバイス(助言)を求めるのです。後者のほうが相手も気が楽なので、よりスムーズなはずです。
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コーチブルになる準備として、Automattic社のケイト・ヒューストン氏が教えてくれた方法を、かみ砕いて紹介しました。ぜひ役立ててくださいね。
(※記事中の人物の肩書は記事公開当時のものです)
(参考)
Quartz at Work|Management news, advice, and ideas for business leaders
ビジネス+IT|「ハロー効果」と「ピーターの法則」で解説、出世した有能な人が無能になるメカニズム
ビジネスジャーナル|ケータイ、キャバクラ、株含み益…失敗する経営者の“条件”
【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
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