広告費で負けているなら、広告で勝負するな。弱者のための「地上戦」マーケティング【新人さんのためのマーケティング講座2 vol.4】

p>広告費で負けているなら広告で勝負するな——弱者のための地上戦マーケティング

📘 新人さんのためのマーケティング講座 Season2

Season1では、マーケティングの基礎概念からWeb広告の実務知識までを体系的に解説しました。Season2は、配属されてしばらく経ち、実務をこなしながらさまざまな「壁」にぶつかり始めた方に向けて、より実践的なテーマを掘り下げていきます。

まだSeason1を読んでいない方は、まずそちらからどうぞ。▶ 新人さんのためのマーケティング講座 Season 1【全14回まとめ】 ——マーケティングの基礎知識を徹底解説!

「予算がないから何もできない」

そう嘆いている新人マーケターに、最初に残酷な事実を突きつけます。

お金がある方が有利に決まっている。

「予算がなくても工夫で勝てる」というのは、ある側面では正しいですが、基本的には嘘です。

資本は「時間」と「データ」を買う最強の武器です。

予算があれば、1万回のテストを1日で回し、最適解にたどり着ける。広告の機械学習も、十分なデータ量があってこそ威力を発揮します。

スタートアップや弱小チームは、この「速度」において圧倒的に不利な状況にあります。

——しかし、嘆いていても予算は増えません。

本当に問われるべきは、こういう問いです。

「竹槍しか持っていないのに、戦車と同じ戦い方をしていないか?」

本記事では、資本の優位性を認めた上で、予算がないチームが生き残るための「非対称戦」を解説します。

少額予算で広告を「打つ」な

「月30万円で広告回して」

上司からそう言われたとき、新人マーケターがつい考えてしまうことがあります。

競合と同じようにGoogle広告やSNS広告を回せばいいんじゃないか、と。

しかし、競合はその数倍の予算をかけている。

同じ戦い方で、効率で勝てるはずがありません。

現代のWeb広告は「オークション」です。資金力がある企業が、高い入札単価で良い枠を独占します。

少額予算では、機械学習も回りません。

GoogleもMetaも、広告の最適化には一定のコンバージョン数が必要です。月に数件しかコンバージョンが取れない予算では、アルゴリズムは学習できず、ただノイズとして消費されて終わります。

 

結論を言います。

予算で負けているなら、広告という「空中戦」だけで勝負してはいけない。

あなたに残された道は、大手が面倒くさがってやらない「地上戦」を組み合わせることです。

マーケティングにおける空中戦(広告)と地上戦(顧客観察・競合分析・SNSテスト)の違いを示す図解

弱者の生存戦略:予算がなくてもできる3つの戦術

金がないなら、頭と足を動かせ。

大手が「効率が悪い」と切り捨てる領域にこそ、弱者の勝機があります。

戦術①:現場に足を運べ——顧客と競合を「観察」しろ

広告を打つ前に、やるべきことがあります。

顧客を知ること。競合を知ること。

営業担当者に話を聞いてください。カスタマーサポートのログを読んでください。顧客が本当に困っていることは何か、本当に欲しいものは何か、探しまくってください。

競合店舗があるなら、実際に足を運んでください。競合のSNS、広告、LPを徹底的に分析してください。

マクドナルドを世界的なチェーンに育てたレイ・クロックは、こう言いました。

「競争相手のすべてを知りたければ、ゴミ箱の中を調べればいい」*1

実際、クロックは深夜2時に競合店のゴミ箱を漁り、前日に肉を何箱、パンをどれだけ消費したのか調べていたそうです。一度や二度ではなく、何度も。

さすがにゴミ箱を漁れとは言いません。しかし、そのくらいの「執念」で情報を取りに行けということです。

ここまでやるのに、お金は1円もかかりません。

必要なのは、足と目と時間だけです。

戦術②:SNSを「無料の実験場」にする

広告を打つ前に、オーガニック投稿でテストしてください。

同じ商品・サービスでも、切り口を変えて複数パターンの投稿を作る。

「価格訴求」「品質訴求」「課題解決訴求」「感情訴求」——どれが刺さるか、反応を見る。

これは予算ゼロでできるA/Bテストです。

大手は「オーガニック投稿なんて効率が悪い」と軽視します。だから、ここに勝機があります。

反応が良かった投稿は、将来の広告クリエイティブの「原型」になります。

何が刺さるかわからないまま広告を打つのと、「この訴求は反応が良い」というデータを持って広告を打つのとでは、成果がまったく違います。

戦術③:予算の一部を「広告」ではなく「テスト」に使う

広告予算があるなら、その使い方を変えてください。

目的を「売上」から「学習」に変える。

30万円全部で「売上を上げよう」とするから、競合に負けるのです。

予算の一部を「どの訴求が刺さるかを学ぶための投資」に回してください。

【少額テストの例】

10パターンのクリエイティブを作り、各1,000円ずつテスト。
どの訴求・どの画像・どのコピーがクリックされるか、データを取る。
売上はゼロでも、「学習データ」は残る。これは消えない資産。

コンバージョンを狙うには予算が足りなくても、クリック率やエンゲージメント率のデータは取れます。

「この訴求はクリック率が2倍高い」という学びがあれば、将来予算がついたときに、最初から精度の高い広告が打てます。

少額予算でも実践できる3つの戦術——顧客観察、SNSテスト、学習目的の広告運用

少額予算で成果を出した奴だけが、大きな予算を託される

経営者の視点で考えてみてください。

30万円すら有効に使えない人間に、300万円の予算を預ける経営者はいません。

「予算がないから成果が出ない」は、言い訳にすぎない。

経営者が見ているのは、「制約の中でどう工夫するか」という姿勢です。

正しいステップはこうです。

【予算を「奪い取る」3ステップ】

Step 1:予算ゼロの地上戦で、学びを積み上げる
顧客観察、競合分析、SNSテストで「何が刺さるか」を把握する。

Step 2:「勝ちパターン」を言語化する
「この訴求が反応が良いとわかりました。これを拡大するために、広告費をください」と提案する。

Step 3:実績を根拠に、予算を勝ち取る
ゼロから学びを積み上げた人間の提案は、説得力が違う。予算は降りる。

これで予算が降りない会社はありません。

降りないなら、その会社に未来はないので、さっさと転職してください。

予算は「もらうもの」ではなく、実績で「奪い取るもの」です。

制約を「言い訳」にするか、「武器」にするか

金がないことは不利です。それは認めます。

しかし、金がないからこそ、顧客一人ひとりのことを必死に考えられる。

大手がやらない地味な作業を、愚直にやれる。

その「解像度の高さ」は、将来大きな予算を持ったとき、必ず最大の武器になります。

予算の制約を武器に変える——弱者のマーケティング戦略で得られる顧客理解の深さ

【本記事のまとめ】

1. 資本の優位性を認めろ
お金がある方が有利なのは事実。だからこそ、同じ土俵で戦ってはいけない。

2. 少額予算で広告を「打つ」な
競合より予算が少ないなら、同じ戦い方をしても勝てない。

3. 地上戦を選べ
顧客観察、競合分析、SNSテスト。大手がやらない泥臭い作業で差をつけろ。

4. 広告を使うなら「学習」目的で
売上ではなく、どの訴求が刺さるかのデータを取れ。

5. 実績で予算を奪い取れ
少額で知恵を出せない人間に、大きな予算は託されない。

さあ、広告の管理画面を閉じてください。

まずは顧客のところへ、足を運びましょう。

💡 コラム:「ノウハウへの投資」という選択肢

広告を「打つ」のではなく、広告を「作る力」に投資する方法もあります。書籍、セミナー、コンサルティング——。私自身、キャッシュが底をつきそうな時期に、数万円をチラシ制作のノウハウに投資しました。その学びが土台となり、後に広告費ゼロで60件の問い合わせを獲得できました。一度身につけたスキルは、消えない資産です。

非対称戦に関するFAQ

Q. 少額予算の広告は意味がないのですか?

A. 「意味がない」とは言いません。ただ、競合より少ない予算で同じ戦い方をしても勝てません。目的を「学習」に変え、どの訴求が刺さるかのデータを取る用途に使えば、少額でも価値があります。

Q. 顧客観察や競合分析は、具体的に何をすればいいですか?

A. まずは営業担当者やカスタマーサポートに「お客様からよく聞く悩み・要望」をヒアリングしてください。競合については、SNSアカウント、Meta広告ライブラリ、LP、口コミサイトを定点観測するだけでも、多くの気づきが得られます。

(参考)

*1|レイ・A・クロック, ロバート・アンダーソン(著), 野崎稚恵(訳), 野地秩嘉(監修・構成)(2007),『成功はゴミ箱の中に レイ・クロック自伝』, プレジデント社.

▼ 新人さんのためのマーケティング講座 Season2

配属されてしばらく経ち、実務で壁にぶつかり始めた方へ。より実践的なテーマを掘り下げます。

Season1(全14回)はこちら|マーケティングの基礎概念からWeb広告の実務知識まで

【プロフィール】
岡 健作(おか・けんさく)

スタディーハッカー 代表取締役社長
1977年生まれ、福岡出身。同志社大学卒業。2010年に創業。「Study Smart(合理的に学ぶ)」をコンセプトに、科学的知見に基づく英語パーソナルジム「ENGLISH COMPANY」を設立し、人気ブランドへと成長させる。 事業拡大の要として、自らオウンドメディアとSNSの編集長を兼任。オウンドメディアは最大500万PV、Instagramでは月間700万PV、フォロワー27万人規模のメディアにするなど、広告費に依存しない集客モデルを確立する。現在はその知見を活かし、「企業の認知獲得の専門家」として、論理とデータに基づいた再現性の高いメディア戦略・ブランディング論を発信している。
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