
思考がまとまらない、集中できない——そんなとき、あなたの部屋や机の上はどうなっていますか?
じつは、思考の散らかりと物理的な散らかりは深くつながっています。
デスクの端に積まれた資料、部屋の隅に置きっぱなしの荷物——視界に入るたびに「あとで片づけよう」と思うそれらは、未処理のタスクとして脳内に蓄積され続け、認知リソースを消費し続けているのです。
プリンストン大学神経科学研究所の研究では、無秩序な環境が視界に入り続けることで脳の認知資源が枯渇し、集中力が低下することが確認されました。*1
つまり、思考をクリアにしたいなら、頭のなかだけを整理しても不十分。物理空間も含めた統合的な整理が必要なのです。
本記事では、紙1枚、15分でできる実践的な方法を紹介します。
部屋が散らかると頭も散らかる
部屋の散らかりは、頭のなかと同期しています。
視界に入るものは未処理のタスクとして脳内に蓄積されていくのです。
その結果、脳は常に複数の情報を同時に処理しようとし、認知リソースが分散して集中力が低下します。
はじめに述べたとおり、プリンストン大学神経科学研究所の研究では、無秩序な環境が視界に入り続けることで脳の認知資源が枯渇し、集中力が低下することが確認されています。*1
つまり、思考をクリアにしたいなら、頭の中だけを整理しても不十分。視界に入る物理的な散らかりも、同時に整理していく必要があるのです。
物理的な空間と認知の整理を連動させることで、集中力を回復し、思考の流れをすっきりと整えることができるでしょう。

まずは頭のなかを紙に吐き出す
頭のなかと物理的空間を整理する第一歩として、まずは頭のなかにあることを紙に書き出していくことにしました。気になっていることを頭から切り離すのです。
実際に筆者も書き出した様子をご覧ください。

※記事内の実践画像はすべて筆者が作成した
A4の1/3くらいのスペースに、頭のなかにあるものを書き出します。

次は、残りの2/3 の紙面上方に「いる・迷う・いらない」と書きます。

左側に書き出したものを、「いる・迷う・いらない」に整理していきます。
あわせて、左側の整理し終わったものについては取り消し線を引いていきました。

このリストを見ると、「読まない本」「アクセサリー」「DM」のような物理的なものと、「英語」「中国語」「解剖学 資料」のようなやりたいこと(思考)が混在していることに気づくはず。
これこそが統合的整理のポイント。物理空間と思考空間を分けずに、同じ枠組みで扱うことで、両方をすっきりさせることができるのです。
【リストを書くときのポイント】
- 定規などは使わず、フリーハンドでサッと書く
- きれいにまとめようとしない *2
- 文章ではなく、短い単語で書く *2
(例)「解剖学の資料を読みたい」→「解剖学 資料」 - 箇条書きにして、視覚的にも見やすくする
すでに頭のなかにあることを書き出すので、考え込まずに15分程度で書き終えられました。
筆者の場合は物理的なものよりも「やりたいこと」が多かったので、書き出していくうちに「これはいつやろう?」という考えが新たに浮かぶことも。
それ自体も全部書き出していくことで、具体的な行動に移しやすくなりました。
さらに、紙に書き出すと、やりたいことを頭のなかにストックしないで済むのが大きなメリットだと感じました。「忘れないようにしなければ」というプレッシャーから解放されるからです。

書き出したものを実際に片づける
次に、紙に書いた内容をもとにして片づけていきます。
- いらない → 処分していく
- 迷う → あとで精査
- いる → 物理的にも頭のなかにも保持
まずは、紙に書いた「いらない」から。
筆者の場合はDM以外は捨てる準備が必要だったので、「いまできること」を紙面の余白に書き出し、実行していきます。

片づけたものには取り消し線を引いたり、進捗状況などを余白にメモしたりしました。

書き出して終わらせずに、片づけの過程もメモを書き足すと、前進している感覚を得られ計画倒れを防げます。
このステップで行なうのは「思考空間」と「物理的空間」の両方の整理。頭のなかにはびこっている思考や視覚的ノイズを排除することが目的です。
「迷う」が最大の敵
厄介なのが、「迷う」に分類した物事。
物理的空間にある物は視覚的ノイズとなりますし、思考空間のノイズも集中力を削ぎます。
迷っている物事は未完了な物事とも言え、心理学的には、未完了の物事は無意識に気になり続けるツァイガルニク効果があります。
ツァイガルニク効果は「やりかけのタスクが頭に残る」心理現象。
学習や仕事には有効な面もありますが、タスク管理ができないとストレスの要因にもなります。*3
片づけも、中断して放置した状態が視界に入る環境ならそれはノイズ。思考も同様です。
実際、ツァイガルニク効果には次のようなデメリットも指摘されています。
- 未完了のタスクを頭のなかで反芻し、ストレスにつながる *3
- タスク管理をできないと、先延ばし癖がついてしまう
ストレスが蓄積されればモチベーションを左右してしまいますし、先延ばし癖は成果を遠ざけるものです。
そういったデメリットに対抗するために、次のような取り組みはいかがでしょうか。
物理的なものの場合
- この一年で一度も使わなかったものは処分する
- 検討BOXをつくり、そのなかに迷っているものを一旦退避させる
- その際、保留期限を設ける(期限をすぎたら処分する)
思考も同様です。
思考の場合
- 検討事項をすべて書き出し、週末や月末などの区切りで優先順位などの棚卸しをする
- 「一年間後回しにしていることは、やらないことにする」「一年間後回しにしていることを、新年にひとつだけ実行してみる」など、検討事項に期限やルールを設ける
保留期限やルールを設けることで、遂行していないとしても管理はできている状態になります。
管理していない状態を減らすことで、少しでも脳のストレスを減らしていきましょう。

***
物理的空間と頭のなかを統合的に整理することで、視界からも思考からもノイズが消え、集中力が格段に高まりました。どちらか片方だけでは不十分。両方を同じ枠組みで扱うことで、初めて本当の意味での「すっきり」が実現できるのです。
※引用の太字は編集部が施した
*1 DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|デスクが散らかっていると集中力も生産性も低下する
*2 THE21オンライン|思考のモヤモヤは「書き出す」ことで整理しよう!
*3 APA PsycArticles|Unfinished tasks foster rumination and impair sleeping—Particularly if leaders have high performance expectations.
澤田みのり
大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格と国際中医師の資格を取得。日々勉強を継続しており、勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。