Z世代の社員を早期離職させないための3つの対策。大切なのは「○○の量」を増やすこと

Z世代の早期離職を防ぐための打ち手

突然ですが、新卒の新入社員をひとり採用するためのコストがどれぐらいか、ご存じでしょうか? 業種や企業によって差はありますが、株式会社リクルートの就職みらい研究所が2019〜2020年に行なった調査によれば、平均93.6万円かかっているそうです。(参照:就職みらい研究所|就職白書2020

これだけのコストをかけて採用した新入社員が早期離職してしまうことほど、会社にとって頭が痛い問題はないですよね。

前触れなく退職代行サービスを利用して退職したり、先週まで笑顔で話していたのに翌週になって急に退職を申し出たり……。そんな若手社員たちの考えをつかみきれず悩まれている人事担当者の方は、多いのではのではないでしょうか。

本記事では、現在の新卒での新入社員の中心であるZ世代の社員がなぜ離職してしまうのかを定量的なデータから見ていき、早期離職を防ぐための打ち手について具体的に考えたいと思います。

 

【この記事はこんな方におすすめ】

  • Z世代の社員とのコミュニケーションに悩んでいる
  • 最近の若手社員の考えがわからなくて困っている
  • 若手社員の早期離職が相次いでいて困っている
  • 若手社員をどう成長させていくか悩んでいる

【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。運営は、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を手がける株式会社スタディーハッカー。

「Z世代は早期離職しやすい」は本当か?

はじめに、Z世代が本当に早期離職しやすいのかについて確認しましょう。

厚生労働省の調査によると、最近20年間の大卒者の離職率は、おおよそ「1年で10〜15%」「3年で30〜35%」。(参照:厚生労働省|別紙1 新規学卒就職者の学歴別就職後3年以内離職率の推移 2001年3月卒~2020年3月卒の数字)

早期離職する人の割合は、この20年のあいだで大きく変わっていません。それなのに、なぜいま若手の離職が目立つのでしょうか。

理由として考えられるのは、労働人口が減少したことによって、若手人材の価値が上がっていることでしょう。1年以内・3年以内の離職率が同じでも、自社に入社する若手社員の数が減少していれば、1人退職するだけでも会社への打撃は大きくなります。

つまり、「Z世代だから特別早期離職しやすい」というわけではないのです。とはいえ、若手人材の採用コストや希少性が高いなか、彼らの早期離職は避けたいもの。その対策を打つために、なぜ早期離職が起きてしまうのか、理由をのぞいてみましょう。

若手社員が離職する理由

いまの若手社員たちは、上司をはじめとするメンバーとの関係や会社の社員教育の姿勢への違和感をきっかけに、退職するケースが多いようです。

dodaが2023年に行なった調査によると、20代の転職理由の1~10位のなかに、以下のようなものがあったそうです。

  • 1位「給与が低い・昇給が見込めない 35.2%」
  • 2位「人間関係が悪い/うまくいかない 25.9%」
  • 3位「社員を育てる環境がない 23.5%」
  • 7位「尊敬できる人がいない 20.4%」

(カギカッコ内引用元:doda|転職理由ランキング【最新版】 みんなの本音を調査!

若手社員たちは、いい人間関係のなかで成長し、給与を上げていきたいと思っているのに、なかなか思い通りにならないことに不満があるのかもしれませんね。

では、Z世代の社員たちはどのような人と一緒に働きたいのでしょうか。

人間関係は離職の原因になりやすい

Z世代が上司や会社に期待していることとは?

Z世代の社員がどんな人と働きたいと思い、上司や会社に何を期待しているのか、データで見てみましょう。

若手社員となると、上司や会社に思うところがあっても、なかなか直接は言いづらいもの。ですので部下をもつ立場の方は、以下のようなデータから、Z世代の考えの傾向をつかんでおくことが重要です。

上司に丁寧に仕事を教えてもらいたい

エン・ジャパンが2019年に実施した調査によると、20代の社員が「上司に期待していること」の上位に、「自分の意見や考えに耳を傾けてくれる」「具体的なアドバイスをくれる」「いつでも相談に乗ってくれる」「業務を一緒に取り組んでくれる」などがランクインしたそうです。反対に、最も期待されていないのは「仕事の成果にこだわる」ことでした。(カギカッコ内引用元:エン・ジャパン株式会社|1万人が回答!「上司と部下」意識調査―『エン転職』ユーザーアンケート―

また、日本能率協会が2023年に実施した調査でも、「理想的だと思う上司や先輩」の1位は「仕事について丁寧な指導をする上司・先輩」で、他の項目を圧倒していました。(カギカッコ内引用元:一般社団法人日本能率協会|「2023年度 新入社員意識調査」

若手社員は、結果に厳しい上司ではなく、自分に寄り添ってくれる上司をもちたいと考えていると言えるでしょう。

金沢大学の金間大介氏は、上記のようなデータを総合し、新入社員の「理想の上司・先輩」を以下のようにまとめています。

①仕事について丁寧に教えてくれて
②若者の意見や要望に対し(聞いてくれるだけではなく)自ら動いてくれて
③いかなる場合でも叱るなんてとんでもなく
④仕事の結果に決して情熱など持たず
⑤仕事を振っておいて見守るだけなんてあり得ない
⑥ついでに、友だち感覚で「ご飯行こう」とかはなしで

(引用元:金間大介(2023),『静かに退職する若者たち 部下との1on1の前に知っておいてほしいこと』, PHP研究所.)

この記述を見ると、厳しい環境に身を置いてきた世代の方は「やはり若者の考えることはわからない」「甘えているのではないか」と感じてしまう場合もあるでしょう。

しかし、若手社員は決してやる気がなかったり、結果を出さなかったりするわけではありません。ではなぜZ世代はこのような考えをもっているのでしょうか。彼らの意図を理解すれば、関わり方・寄り添い方の方針が見えてきます。

会社で成長していきたい

金間氏は、自身で行なった学生への調査や各種定量データをふまえて、Z世代の人たちが考えていることについて下記のように述べています。

会社とは、お金をもらって、その分貢献するだけの存在ではない。与えられた仕事をするのはもちろんだが、その過程を通して、会社や上司はいかに自分の個性に見合った能力やスキルを身につけさせてくれるかが大事になってきている。

(引用元:同上 ※太字は編集部にて施した)

つまり、成長の主体は自分自身にあり、会社は能力やスキルを身につけるところだと考えているのが、現代の新入社員の実像なのです。

忘れてはいけないのは、自分自身の成長を重視することと、会社に貢献することは両立できるということ。彼ら自身がスキルアップすれば、当然仕事のパフォーマンスは上がります。ですから上司は、「会社のために仕事をしてほしい」という考えを押しつけず、彼らの「自分自身を成長させたい」という考えを尊重しましょう

それでは、こういった若者が増えているなか、会社や上司、メンバーはどうやって新入社員の早期離職を防げばいいのでしょうか。

上司はOJTを充実させ、仕事を依頼したら丁寧に最後までフォロー 

早期離職を防止するための現実的な解決策

最後に、早期離職を防ぐための対策について考えていきます。

この記事の前半で、早期離職割合は「1年で10〜15%」「3年で30〜35%」だとお伝えしました。まず人事担当者は、この割合を自社が上回っていないか、確認してみてください。 自社の割合のほうが大きい場合には、以下の対策をおすすめします。

研修や教育を充実させる

パーソル総合研究所が2019年〜2022年に実施した調査によると、20代の社員が「仕事を選ぶ上で重視すること」のなかでとりわけ上昇傾向にあるのは、下記の項目でした。

  • 「色々な知識やスキルが得られること」
  • 「資格や免許の取得に繋がること」
  • 「入社後の研修や教育が充実していること」

(カギカッコ内引用元:パーソル総合研究所|20代若手社員の成長意識の変化 -在宅勤務下の育成強化も急がれる

つまり、研修や教育機会の充実化をはかることが重要であるということです。とはいえ、現実的に予算を多くかけられない企業もあるでしょう。

その場合は、OJTを充実させ、仕事を依頼したら丁寧に最後までフォローしていくことが効果的です。前出の金間氏が挙げていた理想の上司・先輩像のなかの、「①仕事について丁寧に教えてくれて」「⑤仕事を振っておいて見守るだけなんてあり得ない」の箇所をケアすることができます。(カギカッコ内引用元:前出の『静かに退職する若者たち 部下との1on1のまえに知ってほしいこと』)

コミュニケーション量を増やす

金間氏が挙げた理想の上司・先輩像のうち、「②若者の意見や要望に対し(聞いてくれるだけではなく)自ら動いてくれて」「③いかなる場合でも叱るなんてとんでもなく」「④仕事の結果に決して情熱など持たず」という点については、コミュニケーション量を増やすことで対応しましょう。比較的すぐに実践できるので、普段から意識的に行なってみてください。

コミュニケーションそのものの量を増やし、意見や要望に対して「傾聴」の姿勢を見せれば、必ずしも1on1である必要はありません。仕事の結果について言及したり叱ったりするのではなく具体的なアドバイスをするのも、信頼感の醸成につながります。

若者自身は、会社や上司を自分の成長のための糧ととらえています。そのことをふまえたうえで、上司やチームメンバーはある程度割りきって接すると気が楽かもしれません。

Z世代だからといってひとくくりに扱わない

マネジメント層のみなさんは、さまざまなデータを参考にしつつ「Z世代だからこう!」と決めつけて自分のなかでバイアスをつくってしまわないように注意してください。

当然ながら目の前の社員には、それぞれ得手・不得手があります。上司として若手の長所を伸ばし、活躍できる土壌づくりを意識すると、良好な関係を築くことにつながるでしょう。

Z世代社員の育て方については、こちらの記事も合わせてお読みください。
>>Z世代の育成で大切なのは “○○しない” こと。「飲み会はNG」と決めつけていませんか?

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この記事では、ますます貴重になってくる若手人材を早期離職させないために、企業、上司、チームメンバーがどう対応していけばいいのかをご紹介しました。

仕事に結果を求めることは、どの会社、どのような事業でも必要なこと。若手社員の成長に仕事の結果がともなうような若手育成のハンドリングが今後重要になってくるでしょう。

(参考)

就職みらい研究所|就職白書2020
厚生労働省|別紙1 新規学卒就職者の学歴別就職後3年以内離職率の推移
doda|転職理由ランキング【最新版】 みんなの本音を調査!
エン・ジャパン株式会社|1万人が回答!「上司と部下」意識調査―『エン転職』ユーザーアンケート―
一般社団法人日本能率協会|「2023年度 新入社員意識調査」
金間大介(2023),『静かに退職する若者たち 部下との1on1の前に知っておいてほしいこと』, PHP研究所.
パーソル総合研究所|20代若手社員の成長意識の変化 -在宅勤務下の育成強化も急がれる

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