心理学の「フレーミング効果」とは? 豊富な例で即理解!

心理学におけるフレーミング効果とは1

フレーミング効果とは、物事を表現する枠組み(フレーム)を変えることで、与える印象も変わること。たとえば、以下の2つの文を見てください。

  • この手術は95%の確率で成功します
  • この手術は5%の確率で失敗します

意味するところは同じでも、受ける印象は異なるのではないでしょうか。

このフレーミング効果を利用すれば、相手の選択行動に影響を与えられるため、ビジネスなどで役立ちます。今回は、フレーミング効果についてわかりやすくご説明しましょう。

フレーミング効果とは

フレーミング効果は、英語で「framing effect」。枠組み・額縁を意味するフレーム(frame)を語源とします。ノーベル経済学賞受賞者でプリンストン大学名誉教授のダニエル・カーネマン氏と、心理学者の故エイモス・トヴェルスキー氏が、米国の権威的な学術誌『サイエンス』上で1981年に発表しました。

カーネマン氏は、フレーミング効果を次のように説明しています。

問題の提示の仕方が考えや選好に不合理な影響を及ぼす現象

(引用元:ダニエル・カーネマン 著, 村井章子 訳(2014),『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?(下)』, 早川書房.)

フレーミング効果は、絵画のフレームのようなもの。どこを強調するかによって与える印象を変え、意思決定に影響を及ぼす心理現象が、フレーミング効果なのです。

心理学におけるフレーミング効果とは2

フレーミング効果が起こる理由

フレーミング効果はなぜ起こるのでしょうか? カーネマン氏とトヴェルスキー氏が1979年に提唱した「プロスペクト理論」は、フレーミング効果の発生について次のように説明しています。

人間の価値の感じ方には偏りがある。

  • 利益が出ているとき:確実性を好み、損失を避ける
  • 損失が出ているとき:リスクを負ってでも利益を求める

利益と損失のどちらを強調するかで、人間が損得を感じる基準点(参照点)が移動する。参照点が移動すると、価値の感じ方が変わる。

【100点満点のテストで90点とった場合】

  • 利益を強調
    →参照点が0点になる
    90点分の利得を感じる
    →90点もとれた!
  • 損失を強調
    →参照点が100点になる
    10点分の損失を感じる
    →90点しかとれなかった……

フレーミング効果が人間の判断に影響するのは、価値の参照点を移動させるからなのですね。

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フレーミング効果の例

フレーミング効果をより理解するため、有名な実験を見てみましょう。フレーミング効果の検討のため、カーネマン氏とトヴェルスキー氏が作成した「アジア病問題」です。

実験では被験者を、利益を強調した「ポジティブフレーム条件」グループと損失を強調した「ネガティブフレーム条件」グループに分けて、考えさせました。

米国はいま、「アジア病」という伝染病の大流行に備えています。死者は600人に達する見込みです。対策としてふたつのプログラムが提案されていますが、どちらを採用しますか?

【ポジティブフレーム条件の内容】

  • プログラムA:200人が助かる
  • プログラムB:600人が助かる確率は1/3で、誰も助からない確率は2/3

【ポジティブフレーム条件の選択結果】

  • プログラムA:72%
  • プログラムB:28%

「何人助かるか」と利益を強調した場合、「全員死亡」のリスクを避け、200人が確実に助かる【プログラムA】を選ぶ学生が多いという結果でした。では、「ネガティブフレーム条件」だとどうなったでしょう?

【ネガティブフレーム条件の内容】

  • プログラムC:400人が死ぬ
  • プログラムD:誰も死なない確率は1/3で、600人が死ぬ確率は2/3

【ネガティブフレーム条件の選択結果】

  • プログラムC:22%
  • プログラムD:78%

「何人死ぬか」と損失を強調した場合、「全員死亡」のリスクを負いつつも、全員助かる可能性もある【プログラムD】を選ぶ学生が多いという結果でした。お気づきかもしれませんが、【A】と【C】、【B】と【D】の意味するところは同じです。

  • 【プログラムA】・【C】:600人中200人が助かり、400人は死ぬ
  • 【プログラムB】・【D】:600人全員助かる確率は1/3。全員死ぬ確率は2/3

内容が同じなら、【A】と【C】、【B】と【D】で、選択する人の割合はそれぞれ同等になりそうですよね。しかし、そうはなりませんでした。利益を強調されれば損失を回避し、損失を強調されれば利益を求めようとする人間の心理的傾向を、この実験は示したのです。

大半の人は、提示された「フレーム」をそのまま受け止め、自分で再構築(リフレーム)することなく判断を下してしまう、とカーネマン氏は言います。私たちの意思決定は、フレーミング効果の影響を大きく受けているのです。

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フレーミング効果の活用

フレーミング効果の影響の強さがわかりましたね。このように強力なフレーミング効果は、広告や小売りの現場で使われています。以下に挙げる例は、みなさんにも覚えがあるはずです。

推進商品

生活の質や心身の健康を向上させる「推進商品」の場合、利益を強調した宣伝が効果的だとされています。以下のキャッチコピーがついた商品があったら、どちらを選びたくなりますか?

【A】購入者の90%が効果を実感しています!
【B】購入者の10%は効果を実感できません!

もちろん、利益を強調した【A】ですよね。「効果を実感した体験者」は広告に登場しますが、「効果を実感できなかった体験者」をわざわざアピールする広告を見たことはないはずです。

予防商品

医薬品や防犯グッズなど、悪い事態を防ぐ「予防商品」には、損失を強調したキャッチコピーが効果的。以下の例は、機能性表示食品のキャッチコピーです。

【A】肥満解消をサポートします!
【B】放っておいたら大変! 肥満が万病のもとに!

強いインパクトを受けるのは、肥満状態を放置することによる損失を強調した【B】のはず。消費者を「何か対策をしなければ」という気持ちにさせ、購入を促す効果を狙っているのです。

おとり商品

「おとり商品」を用意することで、特定の商品の購入を促せます。デューク大学教授として心理学と行動経済学を教えるアリエリー氏が、英国の新聞『エコノミスト』の購読について行なった実験をご覧ください。どの購読形態が最も多く選ばれたでしょうか?

【「おとり商品」がある場合】

  • 電子版だけ(59ドル):16人
  • 印刷版だけ(125ドル):0人
  • 電子版と印刷版のセット(125ドル):84人

【「おとり商品」がない場合】

  • 電子版だけ(59ドル):68人
  • 電子版と印刷版のセット(125ドル):32人

値段は同じなのに、「印刷版だけ」という「おとり商品」を用意するだけで、被験者の選択が大きく変わりましたね。「電子版と印刷版のセット」という高額商品を買ってもらいたいなら、同じ価格で「印刷版だけ」という選択肢を用意し、「電子版と印刷版のセット」を相対的にお得に見せればよいのです。

ポイント還元

家電量販店やドラッグストアで見かける「ポイント還元!」。おなじみのサービスにも、フレーミング効果が関わっています。みなさんは、「10%割引」と「10%ポイント還元」なら、どちらがお得だと思いますか?

【A】10万円のパソコン、10%割引!
【B】10万円のパソコンお買い上げで、10%をポイント還元!

AもBも同じようなものだと感じる人が多いかもしれませんね。さて、本当に「10%割引=10%ポイント還元」なのでしょうか。パソコン購入後に1万円ぶんのポイントを使って買い物することを想定し、計算してみました。

【A】10%割引の値引き率:10%
【B】10万円(パソコン)+1万円(ポイントぶんの買い物)=11万円
→計11万円の商品を10万円で購入したことになる
→割引率を求める式は「1-値引き後の価格/本来の価格」
→1-10万/11万=0.0909...
10%ポイント還元の値引き率:約9.1%

割引率を比べてみると、「10%割引」のほうがお得だとわかりました。しかし、なぜ私たちは「ポイント還元」に魅力を感じてしまうのでしょう? 『9割の人間は行動経済学のカモである 非合理な心をつかみ、合理的に顧客を動かす』(経済界、2014年)を著した橋本之克氏は、次のようにまとめています。

【割引とポイント還元の値引き率を9.1%にそろえ、10万円の買い物をする】

【A】9.1%割引:9,100円が値引きされたので、その場で90,900円を支払う
心理的には損失(出費)のみ
【B】10%ポイント還元:10万円を支払う。後日、1万円ぶんのポイントでお金を使わず買い物
「無料で買物できる喜び」という心理的な利益。ポイントに好印象をもち、「ポイントを貯める→ポイントを使う」というサイクルにはまる

お金を使わずポイントだけで買い物できると、なぜだか得した気分になりますよね。「ポイントを貯める」という観点で店を選ぶ人も多いのではないでしょうか? 

無料

通信販売で見かける「無料お試しセット」や「一定額以上の注文で送料無料」も、マーケティングにおけるフレーミング効果の活用例です。橋本氏によると、「無料」は「損する確率ゼロ」なので、非常に強い得として認識されるとか。

アリエリー氏による実験でも、「無料」の強烈な引力がわかります。半額割引にした高級チョコレートと、安価な普通のチョコレートを並べて販売したところ、選択の割合は以下のとおりでした。

【1回目の販売】

  • 高級チョコ(15セント・通常の半額):73%
  • 安価なチョコ(1セント):27%

【2回目の販売(1セントずつ値下げ)】

  • 高級チョコ(14セント):31%
  • 安価なチョコ(無料):69%

【1回目】ではお買い得価格の高級チョコレートを買う人が多かったものの、【2回目】で安価なチョコレートが無料になると、結果が逆転しました。高級チョコレートを買ったほうが16セントもお得なのに、不思議ですよね。

アリエリー氏によると、人間は損失を恐れるので、何も失う心配のない「無料」に飛びつきたくなるのだとか。初めての商品を買ったり、なじみのない店で買い物したりするときは、誰でも不安を覚えるもの。しかし、無料なら少なくとも損をすることはないと思えるので、「無料ならもらっておこうかな」という気になりますよね。

また、一定額以上の注文をすれば送料が無料になるからと余計な買い物をしてしまうことも、「無料」の威力を物語っています。Amazonは、一定額以上の注文を送料無料として「ついで買い」を促進することで、世界的に業績がアップしたそうですよ。「無料」もまた、マーケティングに活用されているフレーミング効果の好例なのです。

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フレーミング効果に関する本

フレーミング効果について、もっと詳しく知りたい人におすすめの本を2冊、ご紹介します。

『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?』

『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?』は、カーネマン氏とトヴェルスキー氏による共同研究の成果を中心に、行動経済学を一般向けにまとめた世界的ベストセラー。直感的な「速い(ファスト)思考」と論理的な「遅い(スロー)思考」の作用により、人間がいかに不合理な判断をしてしまうのか、科学的根拠に基づき解説されます。

フレーミング効果に触れているのは、下巻4部34章の「フレームと客観的事実」です。本記事でもご紹介した「アジア病問題」をはじめ、さまざまな実験が取り上げられています。上・下巻に分かれる大著なので、「全部読むのは大変そう」と感じる方は、興味のある部分から読み始めてもいいでしょう。

長いとはいえ、専門知識を身近な例で説明してくれるので、読んでみれば「なるほど」と理解しやすいはず。行動経済学の書籍・論文の参考文献としてよく言及されているので、フレーミング効果の基礎を学びたい人にぜひ触れていただきたいと思います。

『予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』

行動経済学研究の第一人者、ダン・アリエリー氏によるベストセラー。アリエリー氏は、「高価な偽薬(プラセボ)は安価な偽薬よりも効果が高い」と示したユニークな実験により、2008年にイグノーベル賞(医学賞)を受賞した人物です。

本記事を執筆するにあたり、主に以下の章を参照しました。フレーミング効果について知りたい方は、これら2つの章をご覧ください。

  • 1章「相対性の真相」
  • 3章「ゼロコストのコスト」

上記の章だけでなく、『予想どおりに不合理』の全体が、フレーミング効果に関係していると言えます。テンポがよく読みやすいので、最初から最後まで読み通してみてもいいでしょう。アリエリー氏自身の経験を交えながら、フレーミング効果に関するおもしろい実験がたくさん紹介されているので、行動経済学の入門書としておすすめです。

***
フレーミング効果を理解し、人間が意思決定する際の傾向をつかめば、ビジネスに活かすことができますよ。みなさんも、本記事を参考に、フレーミング効果を実践してみてはいかがでしょう。

(参考)
ダニエル・カーネマン 著, 村井章子 訳(2014),『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?(上・下)』, 早川書房.
ダン・アリエリー 著, 熊谷淳子 訳(2013),『予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』, 早川書房.
ダン・アリエリー 著, ジェフ・クライスラー 著, 櫻井祐子 訳(2018),『アリエリー教授の「行動経済学」入門 お金篇』, 早川書房.
日本認知心理学会 編(2013),『認知心理学ハンドブック』, 有斐閣.
真壁昭夫(2010), 『行動経済学入門 基礎から応用までまるわかり』, ダイヤモンド社.
橋本之克(2014), 『9割の人間は行動経済学のカモである 非合理な心をつかみ、合理的に顧客を動かす』, 経済界.
竹村和久(1994), 「フレーミング効果の理論的説明――リスク下での意思決定の状況依存的焦点モデル――」, 心理学評論, Vol. 37, No. 3, pp. 270-291.
Tversky, Amos and Daniel Kahneman (1981), ”The framing of decisions and the psychology of choice”, Science, Vol. 211, Issue 4481, pp. 453-458.

【ライタープロフィール】
上川万葉
法学部を卒業後、大学院にて欧州諸国の歴史について研究。大学院修了後は、国立大学及び官公庁図書館の司書業務に従事。ドイツやチェコを旅したことから、レトロでちょっと不思議な童話や人形劇の世界を知り、今も魅了され続けている。

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