「敗者のゲーム」という考え方を知っていますか? 成果を圧倒的に増やす "仕事の黄金ルール" とは

ベージュの壁の前に2人の男性。左は白シャツに赤いネクタイでうつむき、落ち込んだ様子。右は青いストライプのシャツで両こぶしを上げ、上を見て喜びを表現。

資格試験の勉強を終えて時計を見ると、もう深夜1時。机の上には開きっぱなしの問題集と、飲みかけの缶コーヒー。
「これだけ頑張ってるんだから、きっと報われるはずだ!」と自分を鼓舞しつつも、胸の奥ではモヤモヤした不安が渦を巻いている……。そんな経験、ありませんか?

じつは、多くのビジネスパーソンが「他人に負けまい」と努力を重ねるあまり、空回りしてしまっています。

  • 頑張っているのに成果が出ない
  • 長時間働いても生産性が上がらない
  • それでも「次こそ!」と焦ってしまう

この状況を客観的に見ると、まるで「時間やエネルギーを注ぎ込んでも、成果というリターンが得られない投資」を続けているようなものです。

投資の世界では、こうした「どれだけ資金を投入しても利益が出ない銘柄」を「負け筋」と呼びます。そして多くの人が、知らず知らずのうちに仕事や学習において、この「負け筋」ばかりを増やしてしまっているのです。

実際、Slack社の調査によれば、日本のビジネスパーソンは「見た目だけ忙しそうに見える仕事」に全体の37%もの時間を費やしているとか。*1
つまり多くの人が、成果にならない作業に時間を溶かす "負けパターン" を自らプレイしているのです。

これは自ら損失を拡大させる働き方と言えるでしょう。

 
 

【負け筋から抜け出すヒント】

では、どうすればこの悪循環から抜け出せるのでしょうか? ヒントは、投資の世界で語られる「敗者のゲーム」にあります。

 

敗者のゲームは “勝つ” より “負けを減らす“ ゲーム

「敗者のゲームとは、ミスを減らすことに重点を置いた戦略です」。

投資コンサルタントのチャールズ・エリス氏は、テニスのプロ選手とアマチュア選手の試合を引き合いに、この概念を説明しました。

  • プロ同士の試合:長いラリーの末にウイニングショットを決めることで勝敗が決まる「勝者のゲーム」
  • アマチュア同士の試合:ミスの少なさが勝敗を分ける「敗者のゲーム」

現代の投資の世界でも「相手よりミスが少ない者が利益を出す。だから投資は『敗者のゲーム』であり、負けないことこそが大切だ」とされ、エリス氏は負けない投資先としてインデックスファンドを推奨しました。

実際、著名な投資家ウォーレン・バフェット氏も「ルール第1:お金を絶対に失うな。ルール第2:ルール第1を忘れるな」と強調し、資本を守ること(負けないこと)が長期的成功の秘訣だと説いています。華々しい勝利を追い求めるよりも、大きな失敗を避け続けるほうが、結局は安定した成長につながるという発想です。

問い:この「敗者のゲーム」の教えを、私たちの学習や仕事、キャリア設計に応用するとどうなるでしょうか?

テニスコートでうなだれる男性。スコア表は0対6と記載されている。

ミスとムダを削減する — 負け筋を消す仕組み

まず取り組みたいのは、日々のミスやムダを可能な限り減らすことです。

あなたの業務には「定型化できる反復作業」「毎回起こりがちなミス」はないでしょうか? もし「また同じミスをしてしまった」「前任者も苦労していた作業だ」と思い当たるなら、それは標準化によって消せる負け筋かもしれません。

たとえば、作業手順をチェックリスト化したり、テンプレートやマニュアルを整備したりすることで、ヒューマンエラーを大幅に減らせます。標準化は一見すると地味ですが、「今度は失敗しないかな……」という不安を取り除き、安心して基本業務に集中できる土台になります。

実際、トヨタの生産方式が示すように、ムダを徹底的に省くことで品質と効率を高めることが可能です。あなたの仕事でも、「このプロセスをルール化すればミスが減るのでは?」と問い直してみてください。

また、こうした仕事の標準化はチーム全体にもメリットをもたらします。個人の属人的なやり方に頼らずに済むため、誰かが抜けても業務が回り、チームの弱点(負け筋)をカバーできます。新人であっても標準手順に沿えば大きなミスなく成果を出せるなど、組織として「負けにくい」体質をつくれるのです。


問い : 業務で繰り返すミスを防ぐためのマニュアルやチェックリストを準備していますか? まずは身近な作業から、負け筋をひとつずつ潰していきましょう。

強みのポジションで “負けにくい” を選ぶ

次に考えたいのは、自分がより「負けにくい」を選ぶという戦略です。ビジネスにおいては、ほかの人より相対的に得意な分野や、少なくとも自分の弱みが目立ちにくい領域で勝負することだと言えます。

皆さんは、自分の強み・弱みを踏まえて「いま戦っている場所は本当に自分向きか?」と考えたことがありますか? たとえば、あなたがクリエイティブな発想力に優れているのに、細かな数値分析ばかり求められるポジションにいたらどうでしょう。そのままでは周囲に後れ、「負けが混む試合」を強いられるかもしれません。一方で、発想力が活きる企画職やデザイン部門に配置換えできれば、相対的に自分のミスを減らし、パフォーマンスで負けにくくなるでしょう。

つまり、不得意な場所で無理に戦い続けるのではなく、得意を発揮できるポジションに移ることで負ける確率を下げるのです。 経済学の比較優位の考え方でも、各自が最も効率よく成果を出せる分野に特化する方が全体の生産性が上がるとされ、これは働き方にも当てはまります。

ほかの人と比べて自分が優位性をもてるスキルや経験はなんでしょうか? たとえば会社であれば、それを活かせる部署にシフトすることで、自分にとっての「負けにくい」を選ぶことができます。 得意分野で戦えば、周囲との相対評価で不利になりにくいだけでなく、自信も高まり、攻めの一手も打ちやすくなります。

問い :  いまの場所で強みを活かせていますか? 自分が負けにくい強みを模索することも、立派な「負けない戦略」です。

4名のビジネス会議で男性リーダーが話している様子

守り8割・攻め2割の設計

負けない戦略と聞くと「慎重すぎて "攻め" が足りないのでは?」と心配になるかもしれません。

この場合、安定8割・挑戦2割のバランスで両立させることがポイントです。まず自分の時間やリソースの8割を強みに集中して、絶対に負けない土台を築く。残り2割で新たな挑戦や工夫を試みる設計です。 重要なのは、この8割の部分で自分の「勝ちパターン」を確実に遂行することです。日々の主要業務や必達タスクに集中し、それらでミスなく成果を出せれば、まず大負けはしません。

これは「パレートの法則 (80:20の法則)」という経験則にも通じます。*2

全体の成果の8割は2割の重要な要素から生まれると言われるように、まずは成果の大半を占める重要事項に全力投球することが大切です。たとえば営業職なら、主要顧客への対応や重要提案の準備が「全体の8割の成果を生む業務」であるなら、そこに抜かりがないよう徹底します。

一方で、残り2割の成果を生む業務は「負けても痛手にならない範囲」でのチャレンジに振り向けます。 新しいスキル習得、副業、小さな改善プロジェクトなど、失敗しても基盤を揺るがさない挑戦です。ここでうまくいけば追加の上積みが狙えますし、仮に失敗しても大きな損害はありません。いわば、負けても本体に影響しない「小さな勝負」で経験値を稼ぐイメージです。 ただし、新たな挑戦については見切りをつける判断も重要です。いつまでも成果の出ないプロジェクトに固執すれば、せっかくの負けない土台まで侵食しかねません。

投資の世界では損切り(ロスカット)のルールを決めておくのが定石ですが、業務でも同様です。「半年やって成果が出なければ撤退」「○○の指標が改善しなければ方針転換」など、自分なりの撤退基準をあらかじめ設定しておきましょう。これは決して尻込みではなく、大敗を避けるための勇気ある戦略的撤退であり、勝負勘の良い人ほど引き際も心得ているものです。

問い : あなたは仕事の時間配分を仕分けできていますか? 小さな敗北よりも、長期的に負けないことを最優先する思考をもつことが大切です。

空に向かってガッツポーズをする男性のシルエット

地味でもたしかな「負けない設計」が未来を変える

華々しい成功談に目を奪われがちな私たちですが、長いキャリアを考えると「いかに負けない土台をつくるか」こそが安定した成長への近道です。大勝ちを狙うばかりにリスクを積み上げるのではなく、負け筋を着実に消していく。 その地道な積み重ねが、将来の大きな成果につながります。

投資の例でも、短期的な利益を追い求めるより損をしない戦略で臨んだ人の多くが、結果として資産を増やしています。仕事や学習も同じで、目先の派手な成果よりも、ミスを減らし続けることが信頼と実力を築く確実な方法なのです。

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遠回りに思える「負けない戦略」ですが、その継続によってあなたの強みを活かし、結果として大きな成功を引き寄せる力になります。 ぜひ今日から、自分の学習や仕事の設計を見直し、「敗者のゲーム」から学んだ負けにくい強みを築いてください。地味でも確かなステップが、将来の大きな飛躍につながるはずです。負けない自分を設計し、未来を変える準備を始めましょう。

【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部

「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。運営は、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を手がける株式会社スタディーハッカー。

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