
「読書ノートをつけても、時間を費やすわりに知識が使えていない」
「Kindleのライブラリは増えるけど、思考力やアイデアの質は変わらない」
——読書習慣を身につけても「成長に直結しているのかな?」と疑問や不安を感じる人も多いのではないでしょうか。
じつは読書で成長できる人とできない人の差は、読む量ではなく「読み方」にあるのです。世界的な成功者たちは、読書を単なる知識のインプットではなく、仕事に活かすために独自の読書ルールを決めています。
ウォーレン・バフェット、チャーリー・マンガー、ビル・ゲイツ——彼らの読書法を知れば、「確実に成長につながる読書」に変わるはずです。
本記事では、世界的成功者が実践している「読書ルール」を3つ厳選してご紹介。具体例・実践報告もあわせてお伝えいたしましょう。
ウォーレン・バフェット「行動につながるか考える」
投資持株会社バークシャー・ハサウェイの会長を長年務め、2024年の年次総会で2025年末での退任を発表した米国の世界的投資家ウォーレン・バフェット氏。同氏は「勤務時間の80%を読書と思考」に費やす読書家です。多くの時間を読書に費やすのは、それが仕事に直結するからです。*3
『Working Together: Why Great Partnerships Succeed(ともに働くこと:なぜ素晴らしいパートナーシップは成功するのか)』でバフェット氏は自身の仕事を「多くの事実や情報を集めて整理していく」こととし、「ときどき何かしらの行動につながるかどうか」を見ていく——と述べています。*3
認知心理学では、学んだ知識を実践に活かすプロセスを「転移学習」と呼びます。スイス・バーゼル大学のG. シュタイナー博士(2002年11 月2日時点)によると、これは「以前に学んだ知識やスキルを新たな学習や問題解決に応用する」ことを指すのだそうです。*1 バフェット氏の読書法も、この考え方を体現していると言えます。
「仕事につながる本」は、自己啓発やビジネス書だけではありません。前述の転移学習とは "応用する" もの。ほかにも、以下の例のとおり、仕事とは離れている分野からも学びをえることができます。
- 経営者の伝記を読む
→「人を動かすのは理屈ではなく信頼」と学ぶ
→部下に細かく指示していたのを「信じて任せる」姿勢に変わり、部下が自主的に動くようになった - 行動経済学の本を読む
→自分の判断が感情に左右されることに気づく
→案件を任せる前に「他人の視点でリスクを確認する」ようになった
「この内容は現場でどう応用できる?」という意識をもって読書をしてみましょう。実利的な本ではなくとも、仕事力を高める有益な読書になるはずです。
チャーリー・マンガー「多様なジャンルの本を読む」
前出のウォーレン・バフェット氏の右腕、バークシャー・ハサウェイ副会長のチャーリー・マンガー氏も読書家のひとり。同氏は1日に8時間以上は読書に時間を割いていたのだそうです。*2
ただ、マンガー氏は本を読む「時間・量」だけを重視していたわけではありません。マンガー氏は新聞だけではなく「心理学、ビジネス、科学、歴史など、幅広い分野の本」を読んでいたといいます。*2
つまり、「時間・量」にくわえて「知識の広さ」も自身の知識の土台を広げるうえで欠かせなかったわけですね。
くわえて「幅広い分野の本を読む」ことは、ほかにも興味深いメリットがあります。それは異なる分野の知識をつなぎあわせ、新たな発見をすること。つまり、「独創的な知性」を磨くことができるのです。
これは前項の「転移学習」の理論にも照らし合わせることができるでしょう。転移学習とは、身につけた知識を「関連づけ・統合」し、応用(転移)することを指します。*1
つまり——知識をそのまま吸収するのではなく、異なる知識を組み合わせて新たな考えを生み出すわけです。
では、ほかの分野を組み合わせた場合、どんな学びがあるのでしょうか。以下の例を見てみましょう。
- 「プレゼン」+「小説(物語構成)」
→小説の構成をプレゼンに応用する。導入のインパクト、聞き手を引き込むストーリー性を考えるのに参考となる。 - 「経営学」+「脳科学」
→脳は秩序やシンプルさを好む特性があるため、製品設計でも機能をできるだけ省き、シンプルなデザインにする。
創造性は幅広いインプットから生まれます。多様なジャンルの本を読み、"知識を組み合わせて考える" ことをしてみましょう。成果につながる新たなアイデアが生まれるはずです。
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ビル・ゲイツ「余白にメモを書く」
Microsoftの創業者であり、慈善家のビル・ゲイツ氏は「電子書籍ではなく、紙の本を読む」ことをルールにしています。その理由は「余白にメモを書く」ため。読みながら考えてメモをとる——これが、ゲイツ流の読書術なのです。*4
ゲイツ氏は常に「目の前の言葉と自分の経験をどう結びつけるか」を意識しながら、本を読むのだそう。1冊の本を読み通すのに時間はかかるものの、新たな学びや気づきを即座にメモにとれば、あとで「何を考えていたのだっけ」と忘れることもありませんね。*4
ゲイツ氏の読みながら「自分の経験を結びつける」方法は、記憶定着の戦略としてとても有効です。ただ受け身で本を読み進めるのではなく、「メモをとる」「要約する」「自分の経験に置き換えて考える」など能動的に本を読むことは「生成効果」にあたるものです。
神経科学の修士号を持つNess Labs創設者のアンヌ=ロール・ル・クンフ氏は、1978年に「言語学習と言語行動ジャーナル」に掲載された生成効果に関する研究を紹介しています。*5 それによると、生成効果が記憶に役立つ理由として、以下のようなメカニズムが考えられているそうです。
- 自分で考えてつくり出すことで、これまでの知識が呼び起こされる
- 生成するプロセスそのものが、特別な記憶となりやすい
- 新しい知識と既存の知識が関連づけられ、思い出しやすくなる
つまり——、"深く考える" 能動的な読書法は、その分だけ深く記憶に刻まれるわけです。
ゲイツ流読書を実践してみた
筆者も実際に「現代史」の学び直しに、ビル・ゲイツ流読書を試してみました。今回選んだ本はジャーナリスト・池上彰氏の著書、『現代史のきほん』(SB Creative)。図が挿入されてあり、中高生にも読みやすい本です。

普段の「読むだけの読書」より頭を使うため、考えながらメモをとるのが少々困難です……。汚い字ですが、とったメモがこちら。

ゲイツ流の読書を実践した気づきや工夫点を共有したいと思います。
メモは気づきだけでなく「内容に対する個人的な気持ち」も書く
今回筆者は考察のみではなく、「感じたこと」も書きました。「何を感じる?」と意識すれば、より読書に注意を払えることに気づきました。
書き込むことで「内容が頭に入りやすい」
普段は前に書かれていた内容を忘れがち。でも、書き込むことでその前の内容も、しっかり覚えられます。そのため——
- 「昔のテロ」の様相と「いまのテロ」の違いを比較
- ロシアとISIL(アイシル)の領土拡大の背景の共通点
——上記の例のとおり、比較や共通点を探しやすく、考察が深くなりました。
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世界の成功者が欠かさずしている「読書」。それは、単なる娯楽ではなく「成長」と「思考の深さ」を促す習慣でもあるのです。本記事を参考に、読書を有益なものにしてみてくださいね。
よくある質問(FAQ)
Q. ウォーレン・バフェットの読書法のポイントは何ですか?
A. 「この内容は現場でどう応用できる?」と考えながら読むことです。これは、読んだ知識を新たな問題解決に応用する実践的な思考法であり、認知心理学でいう「転移学習」の考え方に通じるものです。ビジネス書だけでなく、伝記や行動経済学など幅広い分野の本から仕事に活かせる学びを得られます。
Q. チャーリー・マンガーはなぜ多様なジャンルの本を読んでいたのですか?
A. 異なる分野の知識を組み合わせて新たな発見をするためです。マンガー氏は心理学、ビジネス、科学、歴史など幅広い分野の本を読み、それらを統合して独創的な知性を磨いていました。創造性は幅広いインプットから生まれます。
Q. ビル・ゲイツが紙の本にこだわる理由は?
A. 余白にメモを書くためです。ゲイツ氏は「目の前の言葉と自分の経験をどう結びつけるか」を意識しながら読み、気づきを即座にメモします。この能動的な読書法は「生成効果」により記憶定着を高め、思い出しやすくする効果があります。
*1: Science Direct|Transfer of Learning, Cognitive Psychology of
*2: ROUTINES|Charlie Munger's Daily Routine
*3: Farnam Street|The Buffett Formula: Going to Bed Smarter Than When You Woke Up
*4: 日経BOOK PLUS|天才ビル・ゲイツに学ぶ 読書を"血肉"にするための5つのルール
*5: NESSLABS|The generation effect
青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。