
「もっといい方法があるはずだ」
「これで本当に大丈夫だろうか?」
完璧主義ゆえに決断しきれず、仕事が進まないような経験は誰にでも一度はあるはず。
私たちは「もっといい選択肢があるかもしれない」「もっと準備してからのほうが安心できる」と、無意識に「確実性」を求めてしまいがちです。
しかし、そんなときこそ思い出したいのが、Meta(旧Facebook)CEO マーク・ザッカーバーグ氏の名言。
「Done is better than perfect.」*1
――「完璧にするよりもまず終わらせろ」という意味です。
この記事では、「行動を妨げる心理的メカニズム」や「決断できない正体」をひもときながら、どうすれば完璧主義のループから抜け出し、迷いなく行動できるようになるかを紹介します。
行動力を高めて成果を上げ、「悩んで止まる人」から「動いて前に進む人」を目指していきましょう。
- 「Done is better than perfect」──スピード重視の思想
- 考えすぎるほど、判断を誤る?
- 行動経済学が示す「決められない脳」の正体
- 「未完成で出す勇気」が脳の学習を加速する
- 実践法 「完璧を目指さないための思考習慣」
「Done is better than perfect」──スピード重視の思想
マーク・ザッカーバーグ氏が「完璧よりも完了が重要」だと言った背景には、「完璧を目指すよりも、まずは行動して改善し続けることが大切」という考えがあります。*1
同氏は手がける事業を通して迅速に行動し、それによって得られるフィードバックから学びを積み重ね、よりよいものをつくろうとしているのです。
「よりよいものを生み出したい」という思いは、目標をもって進み続けるビジネスパーソンにも共通するでしょう。
しかし、よりよいものを目指すうえで「完璧を求める」のか「行動を重視するのか」が、その後の分かれ道。
たとえば、こんなケースはありませんか?
- 完璧な資料をつくろうとしてギリギリまで粘った結果、大幅に修正することになった
- 安心できる材料がそろってから決断しようと考えていたら、タイミングを逃してしまった
完璧を求めたにもかかわらず、時間や人的リソースを過剰に消費し、機会を逃してしまうのはもったいないこと。
どんなに考えたとしても、まずは動かなければ見えない課題もあります。
より良い成果や成長を手に入れるには、「行動→学び→改善」のサイクルが重要なのです。

考えすぎるほど、判断を誤る?
そうは言っても、「もっとよく考えたい」という人もいるでしょう。
考えること自体は大切ですが、考えすぎには要注意です。 よりよい結果を求めているはずなのに、逆に誤った判断を下してしまう可能性があります。
▼実験でわかった「考えすぎの落とし穴」
オランダのラドバウド大学は中古車4台のうちお買い得な1台を選ぶ実験を実施。
- 情報を比較検討しながらじっくり考えたグループ → 正答率 約25%
- 考える時間を与えられなかったグループ → 正答率 約60%
直感で選んだグループのほうが、むしろ正答率が高かったのです。*2
明治大学の堀田秀吾教授は、「じっくり考えたグループの人たちは、多くの情報を比較検討するうちに頭のなかが混乱してしまい、結果的に判断を誤ることになった」と分析しています。*2
もちろん、後戻りできない決断には慎重さが必要です。 しかし、軌道修正が可能ならスピードを優先した決断のほうが、リスクを抑えつつ成果を上げられると言えるでしょう。

行動経済学が示す「決められない脳」の正体
「まずは動くのが大事」とわかっていても、なぜ決められないのか。 その理由のひとつが、「確実性効果」です。
行動経済学の用語である確実性効果とは、「確率を少しでも上げようとする心理作用」のこと。 経営コラムニストの横山信弘氏は、「期待通りになる確率が60%から80%になることよりも、80%から90%、もしくは90%から95%へと上げることのほうに執着する心理作用」と説明しています。*3
つまり、「もっと確実に」「もっと完璧に」と欲張り、終わりのない安心を求めてしまうのです。
心当たり、ありませんか?
- 「もっと自信をつけてから……」と行動を先延ばしにする
- 不安材料をゼロにしないと決断できない
- 情報収集ばかりで企画書を提出できない
現代の「情報過多」環境では、確実性効果がさらに強まります。 調べれば調べるほど情報が増え、「まだ足りない気がする」「もっと確かめたい」というループに陥るのです。

「未完成で出す勇気」が脳の学習を加速する
確実性を求めるループから抜け出すカギは、再びこの言葉にあります。
Done is better than perfect.
未完成でもいい。まず動くことが大切です。
脳科学的にも、行動することで「ドーパミン」が分泌され、やる気が高まることが知られています。*4
つまり、行動こそが意欲と学習を生み出すスイッチなのです。
▼行動を始めるためのコツ
- 目標を「小さな完了体験」に分ける
- 短期目標を設定して達成のたびに達成感を味わう
- 行動目標は「今すぐ動けるレベル」に設定
たとえば先述の例で言えば、
- チャレンジしたい仕事をしている人に相談してみる
- 失敗しても修正可能な範囲で、小さく試す
- いまある情報で企画書をまず仕上げてみる
小さな完了体験がドーパミンを分泌し、次の行動の原動力になります。 つまり、完璧を求めて止まるより、まず動くほうが脳は学び、成長するのです。

実践法 「完璧を目指さないための思考習慣」
情報が多いと確実性効果を高めるリスクがありますが、情報自体が悪いわけではありません。
たとえば服を買うとき、「似合う色・形・予算」などの判断軸が明確なら迷わないはず。
情報が判断を邪魔するのは、「判断軸があいまいなとき」です。
そこで有効なのが「判断軸の事前設定」を行なうこと。
▼判断軸の例
- なにから手をつけようか迷うとき:期限が近いもの、他者に影響があるものから
- 部下にどこまで任せるか迷うとき:顧客対応や判断を要する要所だけ自分がフォロー
- リサーチが終わらず書けないとき:「調査は◯時まで」と時間を区切って書き始める
思考は筋肉と同じ。繰り返し使うことで鍛えられます。
悩みやすい場面で「用意した判断軸」をもとに決断を重ねていけば、 スピード感ある“行動→学び→改善”のサイクルが自然と身につくはずです。
***
「Done is better than perfect.」を胸に、行動を起点に学びながら前進していきましょう!
※引用の太字は編集部が施した
*1 YAHOO! FINANCE|Mark Zuckerberg’s IPO Letter: Why Facebook Exists
*2 STUDY HACKER|なぜかいつも「決められない」人がしている決定的過ち。デキる人ほど “これ” をやらない
*3 Yahoo!ニュース|【現代病?】優柔不断な人が増えている理由 ~行動経済学の視点で考えてみた~
*4 STUDY HACKER|“勉強の大敵” ストレスを解消する「勉強前・勉強中・勉強後」の最強ルーティン
澤田みのり
大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格と国際中医師の資格を取得。日々勉強を継続しており、勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。