みなさんは、プレゼンテーションをするのが得意でしょうか。人前で話すことが楽しいという人もいる一方で、きちんと準備できているか不安で緊張したり、自分の番が近づくと憂うつになってしまったりする人もいるかもしれません。
プレゼンテーションをうまくやるためには、じつは絶対に外してはいけないいくつかのコツがあるのです。今回は、小手先のテクニックに留まらない、プレゼンテーションの出来を大きく左右する基本のポイントについてお伝えします。
プレゼンテーションが伝わらない原因
そもそも、プレゼンテーションの内容が聞き手へ伝わらず、説得力がないものになってしまうのはいったいなぜでしょうか。「トーク力がないから?」「立ち居振る舞いがよくないから?」などと想像する人もいるかもしれませんが……今回指摘するのは、もっと根本的な問題です。
【原因1】目的が曖昧になっている
根本原因のひとつは、プレゼンテーションの「目的」の設定にあります。たとえば、取引先の担当者へ企画を提案するプレゼンテーションを行なうことになったとしましょう。その際、プレゼンテーションの目的を「取引先の担当者へ企画を提案すること」と定めてしまってはいませんか。
実際は、企画の内容を担当者に知ってもらって終わりというわけではありませんよね。「企画に対して取引先の担当者がよい感触をもってくれ、社内で共有して進めてもらえるか」など、仕事の場面では特に、企画を提案したあとの「行動につながるか」のほうが重要となってくるでしょう。
グロービス経営大学院教員の荒木博行氏は、到達地点をどこに設定するかで、プレゼンテーションの方向性も変わってくると述べています。たどり着きたい到達地点から外れてしまうと、いくら話し方が上手でも、聞き手には内容が刺さらなくなってしまうのです。
【原因2】自分本位の伝え方しかできていない
プレゼンテーションを行なう際、自分が聞き手に伝えたいと思うことだけを話していませんか。聞き手が置かれている状況によっては、伝えるべき情報を選別したり補足情報を挟んだりする必要があります。
たとえば、先ほどのような企画提案の場面なら、企画を実行するメリットばかり伝えても、聞き手である取引先の担当者にはきっと刺さらないでしょう。「本当に予算内でできる現実的な企画か?」「抱えうるリスクには何があるか?」といったことのほうが詳しく知りたいと感じるかもしれません。聞き手の立場を無視して自分に都合のよいことばかり話していると、プレゼンテーションは失敗に終わってしまう可能性が高いのです。
プレゼンテーションにおける大事なポイント
では、私たちはどのようにプレゼンテーションを行なうべきでしょうか。必要な準備について、ステップを具体的にご紹介しましょう。
【ステップ1】「目的」を押さえる
まさか、スライドづくりからいきなり始めようとしてはいませんか。最初にすべきは、プレゼンテーションの「目的」を正しくとらえて言葉にすることです。
前出の荒木氏によれば、「プレゼンテーション終了後に自分ではなく聞き手がどうなっているかを示すこと」「聞き手の状態や到達地点を抽象的ではなく具体的に示すこと」の2点が、目的を考えるうえで重要なポイントだそう。
たとえば、先ほど挙げた企画提案の場面であれば、目的が「取引先の担当者が企画に対してよい感触をもち、さらによいものとするための意見を出してくれる」のと、「取引先の担当者が上司に話を通してくれる」のとでは、求められるプレゼンテーションのレベルは異なるでしょう。
前者なら、企画にもし不確定な要素があったとしても、取引先の担当者と話し合って内容を練り直すことができます。しかし、後者では、ほとんど完璧に近い内容でなければ企画自体が却下されてしまうかもしれません。目的を明確に定義しておくことで、プレゼンテーションのテーマをうまく絞り込むことができ、説得力が増すでしょう。
【ステップ2】「聞き手の状況」を分析する
聞き手がどのような立場の人か、またどのような性格の人かによっても、プレゼンテーションの内容は変わってくるはずです。適切な目的を設定できたら、次は聞き手の状況に注目してみてください。
企画提案の例で言うなら、取引先の担当者とその上司では、プレゼンテーションの受け取り方はきっと異なるでしょう。取引先の担当者が聞き手の場合、質問を重ねるなどして、内容をより詳しく知ろうとしてくれるかもしれません。一方で、忙しい上司の場合は、結論とその根拠だけを簡潔に求めることもあるでしょう。
聞き手に合わせたプレゼンテーションができれば、成功確率は高くなります。「テーマに対してどのくらいの情報量をもっているか」「テーマに対してどのくらいの視野の広さや深さをもっているか」「テーマをどのような価値観や関心の度合いでとらえているか」を基準として、聞き手の状況を探ってはいかがでしょうか。
【ステップ3】「制約」を理解する
プレゼンテーションをする際に制約となりうるのは、主に「時間」と「設備」です。
まず「時間」について考えてみましょう。プレゼンテーションの時間配分は、簡単そうに見えて本番ではなかなか思い通りにいかないものですよね。たとえば、プレゼンテーションを15分で行なうとなったとき、導入から結論までのあいだでどこに時間を割くか考えておかなければなりません。『GLOBIS知見録』編集局の大島一樹氏は、本筋に時間をかけたくても、聞き手と親しくない場合はアイスブレイクの時間を入れるなど工夫が必要になると指摘しています。聞き手の関心を確実に引きつけるために、説明の順序や量を調整してみてください。
また、プレゼンテーションを行なう場所の「設備」についても、事前に確認しておかなければなりません。当日は、PCやプロジェクターの使用時に想定外の不調がよく見られるからです。それ以外にも、プレゼンテーションを行なう部屋はどのくらいキャパシティがあるかによって、声の大きさやマイクは必要かといった点を調整する必要があるでしょう。
このように、聞き手の状況に加えて、プレゼンテーションならではの制約を理解することで、聞き手と心理的な距離を縮め、内容をより効果的に伝えられるようになるはずです。
【ステップ4】内容を「設計」する
ここまでのステップを経てようやく、プレゼンテーションの内容を具体的に練っていく作業へ入ります。スライドなど、プレゼンテーションの見た目を整えるのは最後です。
プレゼンテーションにおける「目的」「聞き手の状況」「制約」といった条件をすべて押さえたあとは、「ストーリーライン」を意識するようにしましょう。ストーリーラインとは、文字通り “話の流れ” のことであり、目的までどのようにたどり着くかに関する実際のシナリオを指します。
シナリオのパターンにはいくつかありますが、たとえば以下が挙げられるでしょう。
<課題ー原因ー解決策>
最初は抱えている課題について述べ、次にその課題の原因を挙げ、最後に解決策を提示する流れになります。問題解決の場面で有効です。
<空ー雨ー傘>
「空」は現在の状態、「雨」はあとに待ち受けていること、「傘」は待ち受けていることに対するアクションを指しています。今後とるべきアクションを提言する場面で有効です。
<特徴ー意味合いー具体例ー証拠>
この流れは、商品やサービスを提案する場面で使えるでしょう。商品やサービスのスペック面での特徴を最初に示し、次にその特徴からステークホルダーが得られるメリットについて述べます。そのあと、聞き手にイメージが湧きやすいよう具体例を挙げ、根拠や補足情報を挟んでいくやり方です。
ストーリーラインの構築に慣れていないうちは、これらのパターンを活かしてシナリオをつくることで、説得力のあるプレゼンテーションになるでしょう。
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たとえスライド自体がシンプルでも、お伝えしたステップをふまえれば、プレゼンテーションの出来はずっとよくなるはず。聞き手の心をグッとつかむプレゼンテーションのコツを、みなさんもぜひ実践してみてくださいね。
監修:グロービス経営大学院
(参考)
グロービス経営大学院(2014), 『グロービス流 ビジネス基礎力10』, 東洋経済新報社.
GLOBIS 知見録|心をつかむプレゼンテーション10のコツとは
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STUDY HACKER 編集部
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