社会人にとって重要な「雑談」。雑談力があれば、うまくアイスブレイクができるだけでなく、相手と信頼関係を築けたり、よりよい評価を得られたりと、ビジネス上手にもなれます。
そんな雑談は、重要ではあるもののこれといった正解のない分野。雑談に関する本も数多くありますが、どれを読めばいいのか悩む人もいるはずです。今回は、自分の雑談力が本当に高まる本を知りたいあなたのために、4冊の本を紹介しましょう。
1. 気持ちを伝え「合う」ことの大切さを理解できる本
株式会社グッドコミュニケーション代表取締役野口敏氏の著書『誰とでも15分以上 会話がとぎれない!話し方66のルール』では、「会話を弾ませるのが苦手」という悩みを解消するコツが具体的に解説されています。
これによると、雑談で大事なのは気持ちを伝え「合う」こと。「あなたの話を聞きたい」という自分の気持ちが伝われば、相手も心のよろいを脱ぎ、緊張や警戒心を解いてどんどん話すようになるのだそう。
「自分の気持ちなら、いつも伝えている」と考える人もいるかもしれません。たとえば、仕事で営業先を訪れたときに「きれいなオフィスですね」と言う。これでもちゃんと気持ちを伝えたような気がするものですよね。ですがこれだと、単に事実を伝えているだけ。「きれいなオフィスでうらやましいです!」といった具合に、自分の感情を少しだけプラスするのが、相手との距離を縮めるコツなのだそう。
また、相づちを打つ際は、相手の気持ちを尋ねる質問を加えるのもポイント。相手が「毎朝マラソンをしている」と言ったとき、「へー、そうですか」という相づちで済ませるのではなく、「毎朝マラソンしているなんて、健康的ですごいですね! 朝はつらいのではないですか?」というように、相手の感情を引き出す質問をしてみましょう。
どんな人でも、自分の話を聞いてほしいと感じているもの。気持ちを伝え合うことを意識するだけで会話はどんどん盛り上がり、あなたの雑談力は確実に高まっていくのです。
2.「雑談はトレーニングで上達できる」と気づける本
「自分は根っからの口下手だから……」と、雑談上手になることを諦めてはいけません。『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』の著者吉田尚記氏は、ニッポン放送のアナウンサーでありながら、かつて自分のことをコミュ障(スムーズに話ができない人)だと考えていたそうです。
吉田氏がコミュ障を改善できたのは、「雑談」と彼が好きなサッカーのような「ゲーム」とのあいだには共通点があると気づいたから。それは、「トレーニングを続けることで上達する」という点です。雑談の技術やルールを知って練習を積んでいけば、サッカーのゲームと同じように、瞬間瞬間に最適なコミュニケーションがとれるようになると吉田氏は言います。
雑談をゲームととらえるうえでは、相手が楽しくなり、自分も楽しくなるという勝利条件を意識することが大事。そのためには、相手に心地よいパスを出すことが必要です。雑談とは、参加者どうしが協力し合っていい空気感をつくる協力型のゲームなのです。
ですので、雑談の勝利条件を満たさないような、決まりきった自己紹介から雑談を始めるのは得策ではありません。それより、相手に関係する質問をするほうが賢明です。たとえば、相手がきれいなネクタイをしていたら、そのネクタイのストーリー(どこで買ったのか、どんなこだわりがあるのかなど)を積極的に聞き出してはどうでしょう。
このように雑談では、相手を楽しくさせるパスを送り、相手も自分にパスを返しやすくすることが大切なのです。
3. 好評価につながる雑談のコツがわかる本
雑談によって、ビジネスは成功に導ける――そう説くのは、『超一流の雑談力』の著者、安田正氏です。
株式会社パンネーションズ・コンサルティング・グループ代表としてビジネスコミュニケーション研修を手がける安田氏いわく、雑談はあらゆる人間関係の入り口。雑談力を鍛えれば、短時間で誰からも好印象を得ることができると言います。相手から感じのよい人だと思われれば、その人との仕事もよい方向へ動きやすくなるもの。それゆえ安田氏は雑談を、ビジネスをより成功させるための自分磨きのツールだと考えているのです。
安田氏が挙げる雑談のコツのひとつとして、電話を紹介しましょう。特に仕事だと電話は苦手だと考える方もいるかもしれませんが、安田氏が言うには、電話をうまく使えば相手との距離を縮められるとのこと。重要になるのは、声の高さとセリフです。
電話では、相手に声が低く聞こえがちで、怖い、冷たいといった印象を与えやすいもの。安田氏によると、ほとんどの人は地声が「ドレミファソラシド」で言うと「ドレミ」の高さになっているそうなので、電話では「ファ」の高さを意識して声を出すことが親しみやすい声で話すコツなのだとか。
また、普段メールでやりとりしている取引先に電話するときには、「まるで十年来の友人」のようなトーンで電話をかけるといいとのこと。よそよそしすぎる敬語を使うのではなく、丁寧さは保ちつつもフレンドリーに話す。そうすることで、電話越しでも相手はあなたに親しみを感じてくれるようになるそうですよ。
4.「自分は雑談下手」というマインドを覆せる本
雑談が苦手な人は、自身のマインドを新しいものに入れ替えるべきだ――そう説くのは、コミュニケーションスキルの世界的な専門家で『The Fine Art of Small Talk』の著者、デブラ・ファイン氏。
かつて自分自身も内気で雑談が苦手だったというファイン氏いわく、雑談下手になってしまう原因は、子どもの頃に両親から教わるいくつかの “教え” にあるとのこと。その教えは子どもの安全を守るためには重要であるものの、大人になった私たちはそれを新しいマインドに入れ替えて雑談をするべきだと、ファイン氏は言います。たとえば、次のような具合です。
「沈黙は金なり」→「沈黙は失礼である」
しゃべりすぎないほうがよいとよく言われますが、ファイン氏によると沈黙は相手に失礼であるばかりか、自分にも不利益を招くとのこと。
たとえば、同じ実力で同じ経歴の「よく話す人物」と「あまり話さない人物」がいたとしたら、出世しやすいのは前者。ファイン氏は自身の経験から、沈黙は自分自身に対する誤解を生じさせることがあり、評価を下げることにつながると述べています。
実際、職場内で会話をあまりしなかったファイン氏は、内心では上司のことを尊敬しており、ただ内気なせいで話すことができなかったにもかかわらず、上司からは横柄な態度をとる鼻持ちならない人だととらえられていた――そんな経験をしたのだそう。
マインドを転換する重要性は、ビジネスに限ったことではありません。プライベートの雑談でも、子どもの頃からのマインドを覆す勇気をもってはいかがでしょうか。
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雑談に対する苦手意識を、練習を続けたりマインドを入れ替えたりして、少しでも克服していきましょう。今回紹介した4冊は、きっとその役に立つはずです。
(参考)
野口敏 (2009), 『誰とでも15分以上 会話がとぎれない!話し方66のルール』, すばる舎.
吉田尚記 (2015), 『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』, 太田出版.
安田正 (2015), 『超一流の雑談力』, 文響社.
Debra Fine (2005), 『The Fine Art of Small Talk』, Hachette Books.
【ライタープロフィール】
渡部泰弘
大阪桐蔭高校出身。テンプル大学で経済学を専攻。外出時は常にPodcastとradikoを愛用するヘビーリスナー。