
「目標を達成するためには、長期目標を分割して短期目標を立てるのが大事」――こんな話、耳にタコができるほど聞いてきた、という人も多いのではないでしょうか。
「そうだよね、分割が大事だよね」と頭ではわかっているのに、それでも挫折してしまう……。なぜ、私たちは継続に失敗してしまうのでしょうか。
実は、そこには心理学の「目標勾配効果」という概念が関係しています。これは、ゴールが遠すぎると人は意欲を失いやすい一方で、ゴールが近づくとモチベーションが急激に高まるという現象です。
「長期目標は大事」とわかっていても、それが「まだまだ先」と感じられると、途中でやる気がしぼみ、計画が頓挫してしまうのです。
ここで役立つのが、「ゴールを段階的に近づける中間目標」です。中間目標を適切に設定することで、モチベーションを保ちながら、長期目標を確実に達成へと導けるのです。
中間目標の本当の価値
中間目標はただの通過点ではありません。長期目標を達成するには、「中間目標」が計画全体を支える重要な“結節点”として機能します。
遠すぎる目標は「どうやってそこまで行くのかわからない」と挫折しやすく、近すぎる目標ばかりを見ていると「どこに向かっているのか」がわからなくなることがあります。
中間目標は、旅の途中にある「休憩所」のようなもの。遠いゴールに向かう道筋をいくつかの段階に分けることで、「中間ゴールが近い」というモチベーションを保つことができるのです。また、短期目標と長期目標の間に中間目標を設けることで、長期目標と短期目標に一貫性が生まれ、目の前の行動が最終的な目標につながっていると感じやすくなります。
適切に設計された中間目標は、遠すぎるゴールと近すぎる行動の間をつなぎ、目標達成への道筋を明確にするとともに、計画全体を整える役割を果たします。
”だめな”中間目標、2つの特徴
しかし、ただ中間目標を設定すればうまくいくわけではありません。挫折しやすい人には、いくつかの共通パターンが見られます。まず1つめが、目標が曖昧すぎること。「3か月後には英語をそこそこ話せるようになる」といったふんわりとした設定では、何をすれば“そこそこ”到達できるのかが明確でないため、具体的な行動計画が立てにくくなるのです。
もう1つが、ハードルが高すぎること。たとえば、「3か月でビジネスレベルの英語力を身につける」といった非現実的な目標を掲げると、最初は意気込んでも、すぐに厳しさを痛感してモチベーションを失いがち。
これらの失敗を避けるためには、到達点を現実的かつ具体的に設定し、かつ行動計画をこまかく分解することが重要です。中間目標が明確で無理のない範囲なら、最終ゴールへ向けて計画通りに進めやすくなるでしょう。

成功する中間目標はどんなもの?
ここからは、実際に「成功しやすい中間目標」をどのように設定するか、具体例を通じて考えてみましょう。
語学学習(中国語)
長期目標として「1年後には中国語で日常会話をスムーズにこなせるようになる」というゴールを設定したとします。
まず、この長期目標は遠い未来の話なので、目標勾配効果によってモチベーションが下がりやすいのです。そのため、3か月後を目安に「オンラインの中国語カフェで自分の自己紹介をきちんと伝えられるようになる」という中間目標を置きます。
この到達点は、やや頑張れば実現可能で、かつ達成したときに自分でも価値を感じられるレベルでしょう。さらに、この中間目標に向けて単語の暗記や文法の学習、発音の練習といった短期目標を定めていけば、「今週やるべきこと」が明確化します。
たとえば、「1日20個の単語を覚える」「週2回、発音練習を録音して振り返る」といった具体的なアクションを設定して、PDCAを回しやすくするのです。
健康・運動(ダイエット)
ダイエットで「半年後に10kg減量」という長期目標を立てる人も多いでしょう。ここでも、目標勾配効果の壁が立ちふさがります。10kgは決して小さな数字ではなく、途中で「成果が見えない」と嘆き、投げ出してしまうリスクが高いのです。
そこで中間目標として「3か月後に『なんか最近痩せた?』と誰かに言われる状態になる」を設定します。他人からのフィードバックを得られると、自分の成果を客観的に認識しやすく、達成感を強く味わえます。
そのための短期目標としては、ウォーキング習慣を身につける、食生活を見直す、日々の体重を記録するなど、具体的な行動を組み合わせることが有効です。結果が徐々に現れ始めると、さらにやる気が高まり、最終的なゴールへもスムーズに近づいていけるでしょう。

チェックリスト&テンプレート
中間目標を上手に設定するためには、自分の計画を客観的に振り返る作業が欠かせません。以下のチェックリストで、自分の目標設定を点検してみましょう。
📋 チェックリスト:自分の目標設定を点検しよう
- 中間目標は具体的になっているか?
- 短期目標が中間目標に自然につながっているか?
- ハードルが高すぎる、または低すぎることはないか?
- 目標が達成されたとき、しっかり「価値」を感じられるか?
もしこれらの項目に不安があるなら、次のテンプレートを使って、計画をもう一度作り直してみてください。
📝 目標設定テンプレート
- 長期目標 最終的に達成したいゴール
- 中間目標 長期目標を補完するマイルストーン
- 短期目標(具体的なステップ) 毎日・毎週どんな行動を積み重ねるか
中間目標が計画の核
長期目標を成し遂げるためには、ただ漫然と目の前のタスクに取り組むだけでは不十分です。
ゴールが遠くにあるほど人はやる気を維持しにくい――これが目標勾配効果の特徴だからこそ、実現可能かつ価値ある中間目標を設定し、段階的にモチベーションを高めていく必要があるのです。
中間目標は単なる通過点ではなく、計画全体を結びつける“核”となる存在。達成の喜びをこまめに味わいながら、少しずつ確実に進んでいくプロセスこそが、あなたの大きな目標を現実へと近づけてくれるでしょう。
ぜひ、ここで紹介したチェックリストとテンプレートを活用しながら、自分の計画を見直してみてください。
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目標の分割はシンプルなようでいて、心理的な壁を超えるための大きなカギを握ります。焦らず、一歩ずつ、しかし着実に。中間目標をうまく取り入れて、あなたの夢や目標を着実に実現していきましょう。
スッキリ 言葉のギモンを解決するサイト|心理学用語「目標勾配」とは?意味と具体例をわかりやすく解説
柴田香織
大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。