読書術とは、読書の際に使えるさまざまなテクニックのこと。「読んだ本の内容をすぐに忘れてしまう」「もっと速く本が読めるようになりたい」など、読書に関する悩みを解決するのに便利ですよ。
この記事では、異なるアプローチのおすすめ読書術を10個紹介していきます。あなたの読書スタイルや好みに合わせ、ぜひ役立ててください。
- おすすめ読書術1:東大式読書術
- おすすめ読書術2:京大式読書術
- おすすめ読書術3:「5分だけ」読書術
- おすすめ読書術4:加藤周一氏の通勤・通学読書術
- おすすめ読書術5:マインドマップ読書術
- おすすめ読書術6:『人生が変わる読書術』の著者がすすめる要約読書術
- おすすめ読書術7:Kindle読書術
- おすすめ読書術8:『脳を強化する読書術』の著者がすすめる「脳トレ」読書術
- おすすめ読書術9:メンタリストDaiGo氏の「速読・多読」読書術
- おすすめ読書術10:アウトプット読書術
おすすめ読書術1:東大式読書術
東大式読書術とは、本を「マクロ視点」で読み解いていく方法。文や単語のひとつひとつに着目するのではなく、本全体や論理の「構造」や「流れ」を意識する読み方です。
東大式読書術のキーワードは「整理読み」。つまり、ただ漠然と文章を追っていくのではなく、「この段落は筆者の主張だな」「ここは具体例を示しているんだな」「ここは、筆者が反対している意見だな」といった具合に、今読んでいる文章が本全体のなかでどんな役割を果たしているのか整理しながら読むのが、東大式読書術の基本なのです。
『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書』の著者・西岡壱誠氏によると、本の論理展開の「パターン」を踏まえると、効率的に読むことができるそうです。
「例示」
筆者の主張の後に、主張を補足する例が提示される。
例)運動をすると記憶力が向上する(主張)。例えば○○大学の研究では、運動により試験の点数が××%上昇したことがわかった(例示)。
「比較」
2つ以上の意見を並べて比較する。たいてい、筆者の主張は後に述べられる。
例)運動をすると頭が悪くなるという意見があるそうだ(比較)。しかし私はそうは思わない(主張)。
「追加」
主張をもとに、さらなる主張を展開していく。
例)運動をすると記憶力が向上する(主張)。したがって、運動をよくする人は年収も高いはずだ(追加の主張)。
「一般化」
具体的な説明をし、法則や命題として一般化する。
例)○○大学の研究では、運動により試験の点数が××%上昇したことがわかった(具体例)。つまり、運動をすると記憶力が向上するのだ(一般化=主張)。
上記のパターンを踏まえ、論旨を整理しながら読むことで、筆者の主張を効率よく理解することができます。東大式読書術は、幅広く情報を集めたり、様々なジャンルの本をバランス良く読んだりすることに向いているのです。
おすすめ読書術2:京大式読書術
京大式読書術では、自分にとって必要な情報や興味がある情報だけを拾い読みします。必要ならば通読することもありますが、基本的に、疑問や興味と関係のない箇所は読み飛ばしてしまいます。本を丸々読破することを前提とした東大式読書術とは、大きくスタイルが異なりますね。
例えば「運動が知能にどのような影響を与えるか?」ということを知りたいなら、問いの答えが載っていそうな本を選び、興味のある箇所だけを探して読む、という具合です。知りたい情報を得ることが目的なので、1冊を読み切るかどうかは問題ではありません。
本を選ぶ段階でも、京大読書術では自分の興味や感性を大切にします。いかに売れていたり、名著とみなされていたりする本でも、自分の関心に合わなければ手にとりません。自分が興味を持った本しか読まないという点も、バランスの良い読書を重んじる東大式読書術とは異なります。
おすすめ読書術3:「5分だけ」読書術
読書をするための時間が取れない、という人は、「5分だけ」読書術を活用してみてください。読書術と言っても、特別な方法は必要ありません。日々の用事の合間に生まれたスキマ時間で、なるべく本を開くように心がけるだけです。
例えばランチを注文してから料理が出てくるまでの時間、電車の乗り換え時間など、5分くらいの時間なら意外と見つかるはずです。5分あれば、ビジネス書の1章分くらいは読み進めることができるでしょう。
たった5分では何も頭に入らないのでは、と思われるかもしれませんが、むしろ短い時間に集中することで、読んだ内容が記憶に残りやすくなります。今すぐにでも試せる、手軽な読書術です。
おすすめ読書術4:加藤周一氏の通勤・通学読書術
次は、『読書術』という本を著した文芸評論家・加藤周一氏が行なっていた読書術をご紹介します。
加藤氏がすすめるのは、通勤・通学電車の中で本を読むことです。通勤・通学中の乗車時間が片道で1時間なら、往復では2時間。1年に換算すると、24日間もの時間を電車の中で過ごしていることになります。これほど膨大な時間を活用しないのはもったいないですよね。
電車が混雑しているとページをめくりにくいため、語学の本や外国語のテキストなど、比較的めくらずに済む本が向いているのだそうです。加藤氏は「電車の中で読む専用の本」を決め、電車に乗ったら必ず電車専用の本を読むようにしていたそうです。通勤・通学読書術を貫徹した結果、加藤氏は電車の中だけでラテン語を習得することができたと言います。
おすすめ読書術5:マインドマップ読書術
マインドマップ読書術とは、キーワードをクモの巣状につなげるという方法でメモを取りつつ本を読む方法。やり方は以下の3ステップです。
- 本のメインテーマを、メモの中央に書く
例)「記憶力を上げる方法」 - 本の中で学んだ、関連する言葉をつないでいく
例)「睡眠をしっかり摂る」「記憶術を使う」 - 読み終わったら、できた図を見ながら本の内容を復習する
厳密な図をつくろうとするのではなく、あくまでも自分が思い出せるメモになっていれば結構です。そして重要なのは、ただマインドマップをつくるだけでなく、後で見返しながら復習すること。頭の中に本の内容を再現しようとする過程で理解が深まりますし、知識がより整理されるのです。紙とペンがあればチャレンジできる、手軽な読書術です。
おすすめ読書術6:『人生が変わる読書術』の著者がすすめる要約読書術
次に紹介するのは、「要約」読書術です。本の内容を要約する作業によって、筆者の主張をかみ砕いて理解したり、内容を整理したりできます。『人生が変わる読書術』の著者・吉田裕子氏によると、要約の際に書くべきなのは以下の2点です。
- 「話題」……何についての本なのか
- 「結論」……結局どのようなことを言いたいのか
つまり、この本はどんな問いに答えるもので、問いに対する答えとはどんなものだったのか? という2点さえつかめれば、本の内容を理解できたと言ってよいでしょう。
また、余裕があれば、
- 「見どころ」……この本のおもしろい点はどこか
- 「感想」……自分はどう感じたか
など、本を読んで感じたことも100字程度でまとめてみましょう。この要約読書術を実践することで、本の内容を深く理解できるだけでなく、アウトプットの能力を養うこともできますよ。
おすすめ読書術7:Kindle読書術
電子書籍サービス「Kindle」を使っている方におすすめしたいのが、「ハイライト」機能を用いた読書術です。
ハイライト機能とは、書籍データ内の文をマーカーで色づけし、目印にできる機能のこと。単に色を塗って目を引きやすくするだけではありません。ハイライトした文は、「マイノート」として記録され、後でまとめて見ることができるのです。ハイライト機能によって、本を読み終わった後で、重要な箇所だけを効率よく振り返ることができます。
さらに、ハイライトにはピンク・オレンジ・イエロー・ブルーの4色があり、ハイライトした文を色ごとに分別することができます。ハイライトの色ごとに意味を分けておけば「重要な箇所(ピンク)だけまとめて読もう」「おもしろかった箇所(ブルー)だけ読もう」ということができるのです。デジタル機器が発達した現代ならではの読書術ですね。
おすすめ読書術8:『脳を強化する読書術』の著者がすすめる「脳トレ」読書術
『脳を強化する読書術』の著者・加藤俊徳氏によると、脳には大きく8つの分野(○○系)があり、読書の仕方を変えることでそれぞれの分野を鍛えられるそうです。以下に、脳を分野別に鍛える「脳トレ」読書術を紹介します。鍛えたい脳の分野に合わせて実践してみてください。
- 聴覚系
【鍛え方】本を暗唱する、音読する。
【効果】人の話や本の内容をスムーズに理解する能力のアップ。 - 記憶系
【鍛え方】電車の乗り換えなどで読書を一時中断する「乗り換え読み」。昔読んだ本の再読。
【効果】記憶力のアップ。 - 視覚系
【鍛え方】映画のパンフレットや漫画など、文字と映像がセットになったものを読む。
【効果】小説を読むのに必要な「イメージ喚起力」のアップ。 - 感情系
【鍛え方】小説を、役者として演じるような気分で読む。
【効果】共感力、コミュニケーション能力のアップ。 - 理解系
【鍛え方】目次をじっくり読み、キーワードをつかむ。自分の考えと比較しながら読む。
【効果】情報処理能力、理解力のアップ。 - 思考系
【鍛え方】本に書き込みながら読む。複数の本を並行して読む。
【効果】判断力、意思決定力のアップ。 - 伝達系
【鍛え方】本の内容を誰かに教えるつもりで読む。
【効果】伝達、言語化能力のアップ。 - 運動系
【鍛え方】スポーツ漫画を読む。運動の教本の内容を身体で再現する。
【効果】身体を動かすシミュレーション能力のアップ。
身につけたい能力に応じて、それぞれの読書術を試してみてください。
おすすめ読書術9:メンタリストDaiGo氏の「速読・多読」読書術
次に紹介するのは、メンタリストのDaiGo氏が実践している「速読・多読」のための読書術です。
まず前提として、速読では本の内容を「全て読む」ことは不可能です。速読の目的は、本を全て読み通すことではなく「欲しい知識を手に入れる」ことにあります。つまり、ハイペースでページをめくっていきながら、目的のページにだけ立ち止まってじっくり読む、というのが基本になります。
具体的なやり方は以下の通りです。
- 目次を読む
まずは目次をしっかり読み、本の全体の構成を頭に入れます。 - 「欲しい知識」を3つ決めておく
例えば、メモの取り方についての本を読むなら、「なぜメモを取るとよいのか」「どうやってメモを取るのか」「そのメモをどうやって使うのか」の3点が知りたい、という具合に目的を絞り込みます。あらかじめ決めておいた3つの知識が手に入れば、読書は完了というわけです。 - 1秒につき1ページずつめくっていき、「欲しい知識」を探す
本を読み始めたら、読むというより目的の情報を検索するような感覚でどんどんページをめくっていきます。 - 「欲しい知識」がありそうなページに着いたら、30秒かけて読む
1ページにかける時間は、最大30秒までとします。
いつもの読書とはかなり感覚が違うかもしれませんが、明確に知りたいことがある場合、「速読・多読」読書術はかなり役に立ちますよ。
おすすめ読書術10:アウトプット読書術
最後に紹介するのは、ノートを使ったアウトプット読書術です。
せっかく本を読んでも、得た知識を使うことができなければ読書をした意味がありません。本を読んだ後は「読書日記」などの形で知識をアウトプットする習慣をつけましょう。
読書日記の付け方は以下の通りです。
- 本の概要を書き出す
まずはノートなどに、読んだ本の基本情報を残しておきましょう。「タイトル」「著者」「読み終わった日付」など最低限のもので結構です。 - 心に残った文章を書き写す
本を読んで重要だと思った箇所や、役に立ったと感じた文章を書き写しましょう。感想を書くのが苦手でも、書き写すだけなら簡単なはずです。後で読み返せるよう、何ページ目に書いてあったのかもメモしておきましょう。 - 書き写した文章についての感想を書く
2で書き写した文章について「なぜその文章を選んだのか」「どこが気に入ったのか」を考えて書きましょう。本全体の感想に比べれば、ずっと書きやすいはずです。
アウトプット読書術を実践することで、本の内容をより深く頭に刻み込むことができます。TwitterやFacebookで発信するのもよいですね。
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10個の読書術をご紹介しました。どれかひとつを採用してもよいですし、場合に応じて使い分けてもよいでしょう。さまざまな方法を試しながら、あなたに合った読書術を見つけてみてくださいね。
(参考)
STUDY HACKER|「東大読書」と「京大読書」を比べてみたら、本の “読み方” と “選び方” が真逆だった。
STUDY HACKER|イギリス政府公認「読書療法」がすごい。ストレス6割減も期待できる『5分だけ読書術』
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【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。