勉強やランニング、読書など、新しい行動を習慣づけるのは難しいもの。「今日から毎日やるぞ!」と思い立ったものの、三日坊主に……。
そんな苦い経験を繰り返している方は、ぜひ本記事をご一読ください。努力を継続し、習慣づけるノウハウを徹底解説します。
「習慣づける」の意味
そもそも、ある行動を「習慣づける」とはどういうことなのでしょうか?
『精選版 日本国語大辞典』で、「習慣付」は「意識しなくてもある行動などがとれるようにする」と書かれています。ある行動を毎日のように繰り返し、無意識にできるようになったとき、「習慣づけた」と言えるのです。
身近な例は、歯磨き。食後の歯磨きは、当たり前の習慣として定着していますよね。ときには面倒に感じても、歯磨きという行動そのものを忘れることは、まずないでしょう。
歯磨きと同じくらい当たり前になるのが、習慣づけの理想。勉強を習慣づけるなら、「決まった時刻になると自然と身体が机に向かう」ようになれば合格です。
行動を習慣づけるメリット
行動を習慣づけるテクニックを覚えれば、勉強や正しい生活習慣を「当たり前のこと」として継続でき、人生が好転していきます。メリットを具体的にまとめると、以下の3つに分けられるでしょう。
継続が得意になる
心理学者ウェンディ・ウッド氏らは、2006年に発表した調査において、17~79歳の被験者100人に日々の行動を記録させました。行動の47%(平均値)は、同じ場所・同じ時間に行なわれる「習慣」だったそう。
- 移動中、いつものようになんとなくSNSを見る
- ランチタイム、いつものようになんとなく牛丼屋に入る
- 帰宅後、いつものようになんとなくテレビをつける
……といった “いつものようになんとなく” とる行動が、生活の半分近くを占めていると言えそうです。
習慣化コンサルタントの古川武士氏によると、人間には「新しい変化に抵抗し、いつも通りを維持しよう」とする本能(習慣引力)があるそう。この習慣引力を、勉強や運動の継続に利用しましょう。
「風呂から上がったら机に向かう」という行動を習慣化できれば、「よし、やるぞ!」といちいち意識しなくても、習慣引力に流されるまま勉強を継続できます。習慣づけのコツを実践すれば、継続上手な人になれるのです。
生活を改善できる
習慣づけのテクニックは、生活習慣の改善にも役立ちます。
健やかな毎日を送るには、規則正しいライフスタイルが不可欠。定期的な運動、バランスのいい食事、十分な睡眠といった基本習慣を徹底することで、体調を良好に維持できます。生活習慣病などの病気を防ぐ意味でも、ライフスタイルの最適化は大切です。
2011年の『American Psychologist』誌上では、ライフスタイルを変えることで気分の落ち込みや不安を治せるとする報告がありました。生活習慣は、メンタルヘルスにも密接に関わっているのです。
時間・労力を節約できる
家事や雑務の流れをパターン化し、習慣づけると、時間や労力の節約にもなります。
- いつも同じ手順で朝食をつくる
- いつも一定のルールに従い服を選ぶ
- いつも同じ順番で掃除機をかける
- いつも一定の手順でメールに対応する
- いつも一定の手順で請求書をつくる
……と、ルーティンワークを「いつも同じやり方」で処理すれば、迷いやミスが減り、処理にかかる時間・労力を最小化できます。
メンタルコーチの池努氏によれば、ルーティンを決めることで「ウィルパワー(意思力)」を節約できるそう。ウィルパワーとは、選択・決断・集中など、私たちが意思を働かせるときに消費される “脳の体力” のようなものです。
仕事や勉強に取り組む際はもちろん、家事や雑務でもウィルパワーは消費されます。雑務処理をパターン化し、ウィルパワーを節約できれば、余ったぶんを仕事や勉強に回せるでしょう。
時間・労力の節約という観点からも、行動を習慣づけることは有意義なのです。
習慣づける方法11選
ではいよいよ、新しい行動を習慣づけるテクニックを11個紹介していきます。
まずは1ヵ月続ける
ある行動を習慣づけるには、その行動をしばらく継続し、定着させる期間が必要です。前出の古川氏によると、目安は1ヵ月。
勉強を習慣づけるなら、まずは1ヵ月、毎日机に向かい続けましょう。最初は「つらい、ムリ……」と感じるかもしれませんが、1ヵ月経てば勉強習慣が形成されるので、以降は楽に継続できるはずです。
ただし古川氏によれば、「身体習慣」の定着には3ヵ月ほどかかるそう。身体習慣とは、ランニングなど、身体が慣れるのを待たなければならない習慣です。
走ろうと思っても、初めは疲れや痛みを感じ、継続しにくいですよね。身体が慣れ、ランニングが当たり前の習慣になるまで、3ヵ月ほど要するのです。
そして、「思考習慣」の改善には6ヵ月ほどかかるそう。ポジティブ思考のクセをつけたい、新聞の株式欄の読み方に慣れたい……という場合は、半年の辛抱を覚悟しましょう。
◆習慣づけるまでの目安
- 行動習慣:1ヵ月
【例】勉強、片づけ、読書、日記、節約 - 身体習慣:3ヵ月
【例】早起き、禁煙、断酒、運動 - 思考習慣:6ヵ月
【例】ポジティブ思考、論理的思考、発想力
この3パターンは、古川氏が100人以上へのインタビューから導いた法則だそう。個人差や例外はあるでしょうが、ひとつの目安として参考にしてみてください。
目的を明確にする
新しい習慣を身につけるなら、目的をはっきりさせましょう。「資格をとってキャリアアップしたい!」「やせてかっこよくなりたい!」などの目的意識があれば、行動のモチベーションが生まれます。
目的意識を強固にするには、危機感・快感・期待感という3つのキーワードから考えよう、と古川氏。「その習慣を身につけないと、どんなマズいことになるかな?」「身につければ、どんないいことがあるかな?」と想像し、手帳やノートに書き出してみましょう。
◆習慣化の目的を考えるためのキーワード
- 危機感:習慣づけないと起こる、マズいこと
【例】勉強しなければ、会社の仕事についていけない - 快感:習慣づけることで得られる、短期的な快感
【例】宅建を取得し、会社から資格手当をもらいたい - 期待感:習慣づけの先にある、長期的なメリット
【例】不動産業界のエキスパートになり、キャリアアップしたい
ベビーステップで始める
社員研修などを手がけるイントランスHRMソリューションズ株式会社代表取締役の竹村孝宏氏は、習慣化のコツとして「ベビーステップ」をすすめています。初めのうちは、「1分だけ」「1問だけ」「1ページだけ」など、容易に達成できるノルマを設定しましょう。
◆ベビーステップの例
- 問題集を1問だけやる
- 1分だけランニングする
- 1ページだけ本を読む
「今日から2時間ずつ勉強するぞ!」といきなり大きい目標を掲げると、心理的な負担が大きく、挫折のもとです。まずは小さな一歩から始め、「続ける」ことを最優先しましょう。
「習慣化シート」を書く
ご紹介した「目的を明確にする」と「ベビーステップ」をまとめたツールが、“目標実現の専門家” でメンタルコーチの大平信孝氏による「習慣化シート」です。
シートに記載するのは、こちらの4項目。
- 習慣づけたい「10秒アクション」
- 習慣づけに失敗すると起こりうる「味わいたくないこと」
- 習慣づけを成功させたら「味わいたいこと」
- 「味わいたいこと」のビジュアルイメージ
書き込むことで、習慣づけの目的と、実践の手段を明確にできます。以下の4ステップで記入してみましょう。
1.「味わいたくないこと」を記入
まずは、左下の「味わいたくないこと」を埋めます。習慣づけに失敗したら、どんな嫌なことがあるでしょうか? 想像して書いてみましょう。「習慣化しないとマズい!」という危機感をあおることができます。
◆例
- 試験に落ちる
- 昇進できない
- 転職に失敗する
2.「味わいたいこと」を記入
次に、習慣づけを成功させたらどんないいことがあるでしょうか? 書いてみましょう。“ムチ” だけでなく “アメ” もイメージすることで、モチベーションがさらに強化されます。
◆例
- 試験に合格する
- 給料が上がる
- 憧れの企業に転職できる
3.「味わいたいこと」をビジュアル化
「味わいたいこと」をのイメージをビジュアル化しましょう。絵や図を描くのが苦手なら、写真を貼りつけてもOKです。
◆例
- 憧れの企業で働く自分の絵
- 憧れの企業の写真
- 転職祝いとして買う高級腕時計の写真
4. 習慣づけたい「10秒アクション」を決定
習慣化したいことを、10秒でできる簡単なアクションに落とし込みましょう。10秒で完了できるくらい簡単な行動こそ、習慣づけのきっかけになるのです。
◆例
- 机の前に座る
- 参考書を開く
「if-thenプランニング」を使う
「~したら、…する(If ~ happens, then I will do…)」という構文で計画を立てる「if-thenプランニング」があります。
◆if-thenプランニングの例
- 朝食を食べ終わったら、英語の問題集を2ページ解く
- 電車に乗ったら、暗記カードを見る
- 20時になったら、着替えてランニングに行く
if-thenのかたちで計画を立てると、ある動作をきっかけとして、スムーズに次の動作へ移れるため、行動を習慣づけやすくなります。ifの部分には、食事、移動、入浴など、毎日する行動を当てるといいでしょう。
“モチベーション科学” を専門とする社会心理学者、ハイディ・グラント・ハルバーソン氏によると、if-thenプランニングを使えば計画を実行できる確率が2~3倍に跳ね上がるとのこと。シンプルながら抜群の効果が期待できるので、ぜひ活用してください。
「強制力」を用意する
アスレティックトレーナーの西村典子氏によると、運動習慣を身につけるには「強制力」を利用するといいそう。先述の「危機感」が生まれる環境をつくり出し、「やらないとマズい……!」という状況(背水の陣)に自分を追い込みます。もちろん、運動以外の習慣にも有効です。
手軽な強制力といえば、お金。
- 高価なスポーツウェアを買う
- ジムに入会する
- 高価な文房具・道具を買う
- 月額制の自習室を借りる
- スクールやセミナーに通う
このように先行投資を行なうことで、「せっかくお金を払ったんだから、やらないと損だよな」という心理(サンクコスト効果)が生まれます。
同じ志をもつ仲間の存在も強制力です。近況を報告し合ったり、進捗を競い合ったりすれば、「みんなから遅れたくない!」「サボりがバレないようにしなきゃ……!」という意識が生まれ、継続の励みになります。
◆「強制力」の例
- 高価な勉強道具を買う
- 月額制の自習室を借りる
- 仲間と進捗を競い合う
- 仲間と一緒に勉強する
自分へのごほうびを設定する
モチベーションを保つには、自分へのごほうびを設けるのも効果的。「ノルマ達成→ごほうび」というルールにより、達成意欲が高まります。
心理カウンセラーの小日向るり子氏によると、ごほうびを設定するポイントは以下の3つ。
1. 簡単すぎず、難しすぎず
ごほうびのハードルが高すぎたり低すぎたりしては、モチベーションが上がりません。1ヵ月間頑張り続けないとごほうびを得られないなら、道のりが長すぎて息切れしてしまうかも。
かといって、簡単すぎても張り合いがありません。「簡単すぎないし、難しすぎもしないな」と思える、ちょうどいいゴールを設定しましょう。
1日ごと・1週間ごと・1ヵ月ごとにノルマを設定し、さまざまな大きさのごほうびを散りばめる方法もあります。毎日獲得できる “小さなごほうび” と、獲得までに時間がかかる “大きなごほうび” の両方を目標にできるため、モチベーションを維持しやすいはず。
◆大きさを変えたごほうびの例
- 日間ノルマ達成→ゲームで遊ぶ
- 週間ノルマ達成→ケーキを食べる
- 月間ノルマ達成→高級焼肉を食べる
2. 心から欲しいもの・こと
ごほうびには、本当に欲しいもの・やりたいことを設定しましょう。食に無頓着な人が焼肉をごほうびにしても、モチベーションにはつながりません。あなた自身の好みに合わせ、“最もそそられるごほうび” を設けましょう。
◆ごほうびのジャンルの例
- 食事:焼肉、スイーツなど
- エンタメ:ゲーム、映画、漫画など
- 癒やし:温泉、マッサージなど
- 買い物:服、バッグなど
3. リスキーなごほうびはNG
お酒、タバコ、ギャンブルなど、健康的・経済的なリスクを含むごほうびは避けましょう。お菓子にしても、量や頻度には注意してください。
実績を記録する
前出の古川氏は、日々の実績を記録するよう推奨しています。「ノルマは達成できたかな?」「何をどのくらい達成できたかな?」と振り返り、日記帳やノート、カレンダーなどに書き残しましょう。
記録をつけることで、現状を客観的に把握できます。サボってしまっても、失敗を自覚・反省したり、習慣化を妨げる原因を発見したりできるでしょう。
実績が目に見えて蓄積されることで、喜びや自信ももたらされます。スタンプカードを埋めていくように、継続すること自体を楽しめるのです。
◆実績を記録するメリット
- 習慣がどの程度定着しているか、客観的に把握できる
- サボりを自覚し、反省できる
- 習慣化を妨げる要因を発見できる(例:飲み会が多く帰宅が遅い、テレビを見る時間が長い)
- 喜びや自信が生まれる
古川氏によれば、できるだけシンプルに記録するのがポイント。面倒になり、挫折してしまうことを防ぐためです。
できるだけ手間がかからない記録方法を考えましょう。「ベビーステップ」の考えで、まずは「続けやすさ」を最優先してください。
◆シンプルに記録する例
- ノルマを達成できたら○を、できなかったら×を書く
- 数値だけを書く(ページ数、走った距離、体重など)
例外ルールを設ける
予定が急に入ったり長引いたりして、ノルマを達成できないこともあるでしょう。「一度失敗しちゃったし、もういいや」と諦めたくなるかもしれません。
そうならないよう、心理カウンセラーの中島輝氏は、「例外ルール」を決めておくよう推奨しています。
- 残業が2時間以上入った日は、問題集のノルマを5問に減らしていい
- ほかにやることがある朝は、読書ノルマを1ページに減らしていい
- 飲み会の翌朝は、ランニングのノルマを1kmに減らしていい
……など、サボってもいいケースをルール化し、計画に “遊び” をもたせておくのです。
例外ルールをつくるにも、if-thenプランニングが役立ちます。「~したときは、…してよい」という構文に沿い、「どんな場合に」「ノルマをどうするか」を具体的に決めましょう。ノルマをゼロにせず、少しでも手をつけるようにすると、習慣が途切れにくくなります。
変化を加える
前出の竹村氏によれば、行動にちょっとした変化を加えることも、習慣を長続きさせるコツ。
同じことを繰り返すばかりでは、マンネリ感を覚え、退屈するのも無理はありません。習慣自体は継続させつつ、やり方・環境・道具をときどき変化させ、マンネリを防ぎましょう。
◆勉強習慣に変化を加える例
- 勉強場所を変える
- 新しい文房具を使う
- 卓上に新しい小物を置く
- 勉強時に着る服を新調する
- マグカップを新調する
- BGMを変える
- 問題を解く順番を変える
こうした変化を加えるだけで、気分が新鮮になり、ルーティンワークにも喜びを感じられます。特に、ものを新調することは先述の「強制力」にもなるため、二重の効果が期待できるでしょう。
悪習慣を置き換える
ゲームや飲酒、喫煙など、断ち切りたい悪習慣もあるでしょう。その習慣をやめようとするより、「別の習慣に置き換えよう」と考えるのがおすすめです。
「ビールを飲まないぞ……飲まない……」と念じるほど、脳内はお酒でいっぱいになり、我慢できず手が伸びかねません。しかし、「ビールの代わりに炭酸ジュースを飲もう」と考えれば、炭酸ジュースという逃げ場が生まれるため、お酒の誘惑から逃れやすくなります。
前出の大平氏によると、代替物を考えるときは、その習慣をしたくなる理由をはっきりさせるべきだそう。ビールを飲む目的が「風呂上がりにサッパリすること」なら、同じ目的を満たせる炭酸ジュースに代替できますね。
- ビールをやめたい
→目的は、風呂上がりにさっぱりすること
→炭酸ジュースに置き換える - 煙草をやめたい
→目的は、口寂しさを紛らわすこと
→ガムに置き換える - ゲームをやめたい
→目的は、達成感を味わうこと
→部屋の掃除に置き換える
「悪習慣をしたがる本質的な理由を考える→同じ効果のあるものに置き換える」というプロセスにより、ストレスを抑えつつも正しい行動を習慣づけることができるのです。
習慣づけるのに役立つアプリ
新しい行動を習慣づけるには、スマートフォンのアプリを活用するのも手です。習慣の記録や定着に役立つアプリをご紹介します。
Habitify
「Habitify」(iOS/Android)は、習慣の継続状況を記録できるアプリ。習慣を3つまで管理でき、課金すれば無制限になります。
習慣づけたい行動を登録し、時間や回数のノルマを設定。アプリのボタンをタップすれば、ノルマの達成が記録されます。
こうして記録した実績は、カレンダーやグラフで振り返り可能。「何月何日に、なんの習慣を達成したか」と詳しく確認できます。
複数の習慣を俯瞰し、全体の達成率や達成回数を一覧することも可能です。習慣を5つ登録し、2つ達成できた場合、達成率は60%となります。
自分ルール
「自分ルール」(iOS/Android)も、習慣の達成状況を記録できるアプリ。目標クリアでもらえる「ポイント」を設定できる点で、「Habitify」と異なります。
「ランニングできたら10ポイント」「勉強できたら50ポイント」と自由に設定可能。ゲーム感覚で習慣を継続できます。
「500ポイント貯まったらお寿司を食べる」のように、ポイントの貯まり具合に応じた大目標を設定することも可能です。ごほうびをモチベーションにしつつ、習慣を継続できますよ。
継続する技術
「継続する技術」(iOS/Android)は、一点集中型の習慣化アプリです。登録できる習慣は、たったひとつ。しかも、登録後30日間は変更できません。ひとつの習慣を確実に身につけたいなら最適のアプリです。
習慣の開始時刻に通知してくれるなど、サポート機能が充実。アプリ内で、三日坊主を回避するためのアドバイスを読むこともできます。
「継続する技術」ならではの特徴は、ノルマ達成時などのコメント。「グッジョブ!」など多彩な言葉をかけてくれ、励みになります。ほかに比べ、ラフでゆるい雰囲気のアプリです。
aTimeLogger
「aTimeLogger」(iOS/Android)は、日々の行動(ライフログ)の記録に特化したアプリ。行動開始時にスタートボタンを、終了時に停止ボタンをタップするだけで、開始・終了時刻と所要時間が記録されます。手軽かつ詳細にライフログを残せるのが強みです。
ライフログは、タイムテーブルとして一覧可能。いつ・何を・どれくらい行なったか、時間の使い方を細かく振り返れます。
「Habitify」などと同様、「一日30分勉強」などの目標も設定できるので、目標管理ツールとしても使えます。今回取り上げたアプリでは最も機能が多彩なため、使いこなすのに時間がかかるかもしれませんが、本格的に自己管理したいなら特におすすめです。
リズムケア
「リズムケア」(iOS/Android)も、一日の行動記録を残せるアプリ。「aTimeLogger」とは違い、時間を除くあらゆる数値データを記録できるのが特徴です。
- ページ数
- 体重
- 筋トレ回数
- 歩数
……など、ありとあらゆる数値を記録可能。勉強や運動のノルマ管理、健康管理など、さまざまに活用できます。数字を手動で入力しなければなりませんが、データを詳細に記録したいならおすすめです。
目標継続カレンダー
「目標継続カレンダー」(iOS)は、ラジオ体操の出席カードのようなアプリ。目標を達成したら、カレンダーの日付上に○やスタンプを押し、達成できなかった日には×をつけます。記号やスタンプの代わりに数字の入力も可能です。
カレンダーは目標ごとに複数つくれるので、勉強用・ランニング用・ダイエット用と同時進行できます。機能が最小限なので、シンプルに記録できるのが「目標継続カレンダー」の特徴です。
シズリー
お金をモチベーションに習慣化をサポートしてくれるのが、「シズリー」(iOS/Android)。お金を預け、ノルマを達成できたら返金、失敗したら没収されるユニークなシステムです。「お金を絶対に失いたくない……!」という強いモチベーションが生まれ、嫌でも習慣を継続できるはず。
預けられる額は、100~10,000円。ノルマを達成した証拠の写真を撮って送信することで、クリアとみなされます。ルールは以下のとおり。
- 達成率80%以上→全額返金
- 達成率80%未満→全額没収
- 達成率100%→ボーナスゲット
過去の実績を振り返ったり、ほかのユーザーのチャレンジ状況を閲覧したりできる機能も搭載されており、習慣化を万全にサポートしてくれます。
みんチャレ
仲間と励まし合いながら習慣を継続できるアプリが「みんチャレ」(iOS/Android)。同じ志をもったユーザーが5人1組になり、チャットで成果を報告し合いながら、習慣継続にチャレンジします。習慣化をテーマにしたSNS、あるいはマッチングサービスと考えればわかりやすいでしょう。
あなたの頑張りを見守る仲間の存在は、習慣継続の “強制力” になってくれます。実際に会ったことのない相手でも、「負けたくない!」「サボったら恥ずかしい……」という意識が生まれるはずです。
自分ひとりで習慣づけるのが難しいなら、「みんチャレ」で仲間を見つけてはいかがでしょう?
習慣づけるといいこと
最後に、社会人や学生が習慣づけるといいこととして、おすすめのルーティンをご紹介します。生活改善のヒントとしてお役立てください。
おすすめの習慣は「仕事&勉強がきっとうまくいく『脳にいい習慣』7選」でも紹介しています。
週3回以上の運動
運動が身体にいいことは周知の事実ですが、脳のパフォーマンスを高めるのにも効果的です。『できる人の脳が冴える30の習慣』(中経出版、2011年)の著者で医学博士の米山公啓氏によれば、脳血流が増えたり神経伝達物質が分泌されたりと、運動には多くのメリットがあるそう。
運動で脳を活性化させるには、週3回、計2時間くらいが必要とのこと。毎晩30分もウォーキングすれば達成できそうですね。
◆運動が脳にもたらすメリット
◆脳がさえる運動のポイント
- 週3回、計2時間以上
- 一定のテンポでのリズミカルな運動(例:散歩、ランニング、なわとび、ダンス、体操)
- 動きが複雑なほど脳が活性化しやすい(例:ダンス、体操)
初めてのことにチャレンジ
初めてのお店に行く、初めての道を通る、初めてスポーツジムに入会する……。何かを初めてやるときは、ワクワクしますよね。
脳内科医の加藤俊徳氏によると、「未知の領域にチャレンジすること」は脳を刺激してくれるそう。経験したことのない状況に適応するため、脳がフル回転するからです。新しい商品やお店をどんどん開拓し、「アタリ」や「ハズレ」を経験することで、美的センスや感性を磨くことにもつながります。
新しい物事に手を出せば、失敗を味わうこともあるでしょう。失敗経験も、脳にとって絶好の養分です。失敗の原因・対策を考えるため、脳がフル回転し、脳内のさまざまな部位が刺激されます。
脳をフレッシュに保つため、「一日ひとつ、初めてのことをやる」といったマイルールをつくってはいかがでしょう?
片づけ
基本とはいえ軽視できないのが、片づけの習慣。身のまわりをすっきりさせると、いい気分になれるだけでなく、知的生産性が高まります。
豪ボンド大学ビジネス・スクール助教授のリビー・サンダー氏は、散らかった環境で過ごすリスクを以下のように指摘しました。
- 無秩序な状態が目に入り続け、集中力が低下する
- メンタルヘルスが悪影響を受け、ストレスや不安を引き起こす
脳科学的にも精神医学的にも、部屋やデスクを散らかったままにするのは賢明ではありません。「部屋の乱れは心の乱れ」という言葉は正しいのです。
物を探す時間を短縮できるのも、片づけのメリット。“片づけ士” としてコンサルティングを手がける小松易氏によると、資料や備品を探すのに平均で一日24分も費やしていた企業があったそう。週2時間、年100時間も何かを探していたわけです。
しかし、その会社で片づけが習慣になったところ、探し物の時間を一日14分にまで短縮できたそう。片づけによって、年40時間も節約できたのです。
トヨタの工場では、整理・整頓・清掃・清潔・しつけの「5S」を徹底しているそう。片づけで生産性を上げるのは、ビジネスの常識になりつつあると言えます。
一日一善
一日一善を習慣にしてはいかがでしょう。「きれいごとでは……」と思うかもしれませんが、利他的な行動をすると脳の「島皮質」が発達し、幸福度が向上すると判明しているのです。
脳科学者の岩崎一郎氏によると、島皮質は、罪悪感や恥といった社会的感情、共感、ユーモアなどの広い分野を担当しています。脳全体をバランスよく働かせているのです。
島皮質が発達すると、良好な人間関係を築いたり、自分自身を受け入れたりしやすくなり、幸福感につながるそう。行動科学者のゲイリー・J・ルイス氏らによる2013年の論文では、右島皮質の体積が幸福感に正比例すると報告されています。
簡単な「善」でかまいません。以下のようにちょっとしたことをやってみては?
- オフィスの共有スペースを掃除する
- 高齢者や妊婦に席を譲る
- 同僚に笑顔であいさつする
- 友だちに誕生日プレゼントを贈る
3行ポジティブ日記
脳研究を専門とする医学博士・加藤俊徳氏によれば、日記を書いて一日を振り返ると脳を広範囲に刺激できるそう。日記は記録や思考・感情の整理に有効なうえ、脳の鍛錬にも役立つのです。
日記の書き方として、精神科医の樺沢紫苑氏がすすめる「3行ポジティブ日記」をご紹介します。ポジティブな出来事を1日に3つ書き出すだけと、非常に簡単。「お昼に食べた冷やし中華がおいしかった」など、ささやかな内容でOKです。
樺沢氏によると、「3行ポジティブ日記」を書くことで、
- 自己認識:自分を正しく認識できる
- 精神的敏捷性:客観的・大局的に考えられる
- 楽観性:楽観的に考えられる
- 自己効力感:自信をもてる
……などが養われ、ストレスを受け流す力「レジリエンス」が高まるそう。嫌な出来事を引きずったり、深く落ち込んだりすることが多い方には、「3行ポジティブ日記」を習慣づけることをおすすめします。
***
ご紹介した「習慣づけるノウハウ」は、仕事や勉強、ひいては人生を好転させる強力な武器になります。自分を変えたい、夢や目標を実現したいと思うなら、本記事をぜひお役立てください。
(参考)
SCIENCE SHIFT|習慣化コンサルタントに学ぶ、理想の人生の作り方〜第2回 続ける習慣、7つの極意
ResearchGate|Habits Across the Lifespan
のうKNOW|ブレパ維持向上のコツ
一般社団法人 日本生活習慣病予防協会|生活習慣病とは
American Psychological Association|Beyond Tender Loving Care: ‘TLCs’ Promise Health and Happiness
みんなのゴルフダイジェスト|ここ一番でMAX集中! 使うほど減る集中力の源「ウィルパワー」の節約法
NewsPIicks|三日坊主は、あなたのせいじゃない。“変わりたくない脳”に打ち勝つ方法
ITmedia エンタープライズ|骨太なモチベーションとスイッチング技術が「やめる」を継続する鍵
日経クロステック|良い習慣を身に付けるためのコツ
STUDY HACKER|習慣化がどんどん加速する! 「習慣化シート」と「三日坊主シート」のすさまじい効果
ハイディ・グラント・ハルバーソン 著, 林田レジリ浩文 訳(2017),『やり抜く人の9つの習慣 コロンビア大学の成功の科学』, ディスカヴァー・トゥエンティワン.
All About|運動を習慣化する方法!楽しく継続する4つのコツ
オトナンサー|節約、ダイエット…頑張る自分への「ご褒美」設定は有効? それとも逆効果?
古川武士(2010),『30日で人生を変える「続ける」習慣』, 日本実業出版社.
中島輝(2021),『習慣化は自己肯定感が10割』, 学研プラス.
STUDY HACKER|悪習慣をやめたい人が「やめよう」と念じる代わりにすべきたった1つのこと
ITmedia ビジネスオンライン|運動する人は、なぜ頭の回転がいいのか
東洋経済オンライン|仕事をラクラクこなす人の脳は老化が進む驚愕
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|デスクが散らかっていると集中力も生産性も低下する
プレジデントオンライン|デキる人のデスクが"かたづいている"理由
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STUDY HACKER|幸せな人は脳全体が活性化している。仕事がはかどる最高の脳状態は「あの行動」で手に入れよ
東洋経済オンライン|自分は不幸だと思う人は脳の使い方を知らない
Lewis, Gary J., Ryota Kanai, Geraint Rees, and Timothy C. Bates (2014), "Neural correlates of the 'good life': eudaimonic well-being is associated with insular cortex volume," Social Cognitive and Affective Neuroscience, Vol. 9, No. 5, pp.615-618.
ソニー生命保険株式会社|特集「働き盛りの脳を『劣化』から守る! 30代からの脳の育て方」
東洋経済オンライン|うつになりやすい人の意外に典型的なパターン
【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。