長時間労働がもたらす3つの弊害。デスクまわりの “あの文房具” が仕事の生産性を下げていた!?

時短の成功例01

ここ数年、政府主導による働き方改革などの影響から、残業時間の削減や休日の増加といった、いわゆる「時短」が各企業で実施されていますよね。しかし、この流れに乗れずに「残業しなくては」と毎日残業してしまって疲弊しているビジネスパーソンも多いのではないでしょうか。

長時間労働は必ずしも利益をもたらすわけではなく、むしろ非効率化をもたらすことがあるのです。今回は、つい長時間働きがちで疲弊している方のために、長時間労働の弊害「時短」による成功例、そして具体的な時短方法をご紹介します。

長時間労働はデメリットが多い

かつての日本社会には、長時間残業や休日労働を積極的に行う社員が称賛される風潮がありました。1980年代末〜90年代初頭のバブル期に放送されたCMの「24時間戦えますか」というキャッチコピーは、当時の世相を反映したものと言えるでしょう。

しかし、日本以上に仕事の結果を重視する傾向があるアメリカでは、長時間残業を行う社員は、“時間以内に仕事を完了することができない「能力の低い人物」”とレッテルを貼られることがあるそうです。確かに、同じ内容の仕事を短時間で完了できれば、そのぶん、ほかの仕事に手をつけることが可能ですし、定時に仕事を終わらせれば企業側も残業代を支払わなくて済みますよね。

また、過度な長時間労働は、健康面に深刻な影響を与えることがあります。労働安全衛生総合研究所の高橋正也医学博士らの調査によると、長時間労働の影響で睡眠時間が5時間程度になると心臓病や脳卒中の発症リスクが高まるのだそう。また、週の労働時間が55時間以上の人は、労働時間が36〜40時間に人に比べて冠動脈疾患の発症確率が1.08倍、脳卒中の発症確率が1.33倍に高まるのだそうです。

もし、企業に尽くそうと考えて長時間労働を繰り返したとしても、体調を崩して長期間欠勤すれば、企業に多大な迷惑をかけるという皮肉な結果になってしまいます。

時短の成功例02

社員の自主性を重視すれば、仕事は効率化する

長時間労働にはデメリットがある一方、労働時間を短縮すると企業の業績が下がるのではないかと懸念される方もいるでしょう。しかし、短時間労働を実施して、なおかつ高い業績を誇る企業も存在します

岐阜県安八郡輪之内町のメーカー・未来工業は、年間休日140日(年末年始は20連休)、残業禁止、社外からクレームがあっても社員に帰宅を命じるなど、徹底的な短時間労働を実施しています。それにもかかわらず企業業績は年々増加し、社員の平均給与は同地区に所在する企業の中でトップクラスを誇っているのだそう。

同社のモットーは「常に考える」であり、企業側がルールを押し付けるのではなく、極力社員に判断させる方針です。社内では提案制度が設けられており、労働の内容以外にも食堂のメニュー考案といったことでも報酬が支払われるのだそう。

確かに、人が何かを行うときは、やり方を細かく指示されるより、自分でいちから考えた方がモチベーションが上がりやすいというもの。人間のやる気は「ドーパミン」という脳内物質によりもたらされるのですが、ドーパミンは代金や評価など「報酬」が発生することにより大量に分泌されると言われています。未来工業では報酬の伴う提案制度を設けることにより、社員にモチベーションとやる気を与えているのです。

早稲田大学教授の黒田祥子氏によると、週46時間以上の労働を定期的に続けた場合、脳・心臓疾患発生率の増加、生産率の低下など、さまざまなデメリットが生まれるそうです。身体への影響はもちろん、生産性が低下しては結果的に会社にとっても不利益になります。非効率的な長時間労働よりも、モチベーションが高い状態で行われる短時間労働の方が高い利益をもたらすのではないでしょうか。

時短の成功例03

長時間労働は「間違った思い込み」を生む

スポーツのトレーニングでも時短の有効性が実証されています。

サッカー監督として複数のクラブを優勝に導いたペップ・グアルディオラ氏は、練習終了後に走り込みたいと訴えた選手を失笑したことがあるそうです。その理由を記者から尋ねられたとき、グアルディオラ氏は「『プラシーボ効果』をもたらす行為だから」と述べました。

プラシーボ効果とは、薬の効果がないものを治療薬と偽って与えた際、患者が快方に向かうことがあるという心理的効果のこと。つまり、長時間練習することにより「自分がレベルアップした」という自己満足をもたらしてしまうのです。

これは、仕事の世界でも当てはまる事例ではないでしょうか。例えば、長時間残業や休日出勤を行なった際、「長時間働いている」という行為自体に満足してしまい、実際は効率の悪い働きをしていて大した成果をあげていないという例は珍しくありません。

長時間の練習を否定するグアルディオラ氏ですが、そのぶん練習の内容はハードで、指導される選手たちは、水を飲みに行くときですら、練習中であれば走っていかなければならないのだそう。練習は「集中することが大切」だというのがグアルディオラ氏の持論です。

時短の成功例04

時短を実行する方法

前述のグアルディオラ氏の例をみればわかるように、仕事を長時間行わなくても集中化・効率化を図れば生産性を高めることが可能です

『仕事を高速化する「時間割」の作り方』(プレジデント社)の著者・平野友朗氏によると、時短とは「仕事の質を下げずに、仕事時間を減らす」行為であるそう。

仕事の質を上げようとすると、時間がかかりがちになりますが、業務時間を振り返ると必ず「仕事の質を下げるようなムダな時間」が存在します。平野氏は削るべき無駄なものとして「卓上カレンダー」「スマートフォンの通知」「PCモニターに貼ってあるメモ代わりの付箋」をあげています。

いずれも、オフィスの必需品のように思われますが、付箋やカレンダー、スマートフォンに書かれた情報が目に入ることにより、そちらに意識が集中してしまい、結果的に作業が遅れるというのが平野氏の持論です。

平野氏は、仕事を効率化する手法として、スケジュール帳に「仕事の投下時間」を記入することを推奨しています。通常、仕事がある場合は日時や終了時間のみを書きますが、例えば「○○日のプレゼン準備は10〜12時まで」「××日に使用する書類作成は14時〜16時まで」など、作業にかかる時間(投下時間)を想定してスケジュール表を作成するのです。そのようにすれば、仕事は計画的に進行しやすくなるでしょう。

さらに、スケジュール帳を振り返るクセを身につけることが大切です。1日のスケジュールを見直し、例えば「プレゼン準備は2時間の予定だったが3時間かかった」「書類作成には1.5時間しかかからなかった」のように実際の仕事の時間と見比べるのです。

この作業を続けてゆくうちに、「朝のほうが夜よりも効率よく仕事を進められる」「デスクワークは午前中ならスピーディーに行える」「午後の打ち合わせは長くかかりやすい」など、自分の能力や職場の現状が把握できるようになります

また、メールの返信、請求書の発行、書類の整理といった比較的短時間で行える仕事は、電車の移動や仕事の合間の休憩時間など、「スキマ時間」に行えば効率化につながります。暇がないように思える業務中でも、見直してみると意外と空いている時間が多いのです。

時間の使い方を見直して時短を実行しましょう。

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適切な時短を行えば、労働の生産性は飛躍的に向上します。今後は日本の企業も、社員を「どれだけ長く働いたか」ではなく「仕事にどれだけ集中したか」「どのような仕事を行なったか」で評価する方向に変わっていくかもしれませんね。

(参考)
東洋経済ONLINE|BOSS新CMが描いた「企業戦士」時代の終わりコーヒーCMは「働く男」をどう描いてきたか?
FNN PRIME|アメリカのサラリーマンは残業代ゼロが当たり前?
Sankei Biz|1日何時間「残業」すると健康を害するのか 毎日11時間以上働く人は…
STUDY HACKER|無意識のうちにやってませんか? 改善すべき3つの「成果がみのらない最悪な努力」
Business Journal|デフレ勝ち組苦境、なぜホワイト企業好調?多い休日、短時間労働…労働環境改善が業績直結
COURRIER|“理想の会社”は日本にあった!? 残業もノルマもない「未来工業」を訪ねて
THE 21ONLINE|脳科学から見えてきた! やる気を高める4つの方法
独立行政法人 労働政策研究・研修機構(JILPT)|長時間労働と健康,労働生産性との関係
VICTORY|「居残り練習」を捨てよ。グアルディオラの「練習論」。
PRESIDENT Online|なぜドイツ人は短時間労働でも稼げるのか
PRESIDENT WOMAN|なぜあの国の労働者は“5時で退社”できるのか
平野友朗(2017),『仕事を高速化する「時間割」の作り方』,プレジデント社
東洋経済ONLINE|若手社員が「仕事を効率化」させる5つのテク

【ライタープロフィール】
亀谷哲弘
大学卒業後、一般企業に就職するも執筆業に携わりたいという夢を捨てきれず、 ライター養成所で学ぶ。養成所卒業後にライター活動を開始し、スポーツ、 エンタメ、政治に関する書籍を刊行。今後は書籍執筆で学んだスキルをWEB上 で活用することを目標としている。

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