部下の能力をどんどん引き出せる「デキるリーダー」が、いつも当たり前にやっていること

鈴木義幸さん「他者のセルフトークに働きかけて能力を引き出す方法」01

自分自身への「問い」とその「答え」で構成される「セルフトーク」が仕事のパフォーマンスを左右すると言うのは、企業の経営層のコーチングを行なっているエグゼクティブコーチの鈴木義幸(すずき・よしゆき)さんです。

そして、リーダーによる部下のセルフトークのコントロール次第では、チームの成果も大きく変わるとも言います。チームの成果を向上させるため、リーダーは部下のセルフトークをどうコントロールするべきなのでしょうか。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/玉井美世子

他者の「セルフトーク」もマネジメントできる

「セルフトーク」とは、自分のなかで自分自身に投げかけている「問い」とそれに対する「答え」のことで、それはいわば、自分のなかでのおしゃべりです。そして、そのセルフトークの内容がそのあとの感情や行動に大きな影響を及ぼし、仕事のパフォーマンスを左右します。

では、自分だけでなく、他者のセルフトークの内容に影響できるとしたらどうでしょうか。それはつまり、他者の感情や行動、ひいては仕事のパフォーマンスにも影響を及ぼせることを意味します。その観点から、チームの成果を向上させたいと考えるリーダーにとって、部下のセルフトークをマネジメントするスキルはとても重要なものだと言うことができます。

たとえば、あがり症でプレゼンを苦手としている部下がいるとします。その人は、プレゼンの前に「どうすればプレゼンで自分が成功できるか……?」「もし失敗したらどうしよう……?」といったセルフトークをしている可能性が高いはずです。そこで必要なのは、そのような自分を中心に置いたセルフトークではなく、まわりに対して自ら働きかけるセルフトークができるように導いてあげることです(『成功をつかむカギは “これ” を意識すること。社会人にとって超重要な「セルフトーク」とは』参照)。

ただ、多くの人にとってセルフトークは無意識で行なっているものであるため、「プレゼンのとき、自分のなかでどんなおしゃべりをしていた?」と聞いても、簡単に思い出せるものではありません。そこで、そのときの状況に部下を戻してあげましょう。

このケースなら、「最近、プレゼンで緊張したのはいつ?」「場所はどこだった?」「聴衆はどんな人たちで何人くらい?」「時間は何時頃だったかな?」といったふうに、部下が失敗してしまったときのシチュエーションについて問いかけるのです。そうすることで、部下はそのときの自分のセルフトークをスムーズに思い出せるでしょう。

そうして部下が自分のセルフトークを意識することができるようになれば、あとはよりよいセルフトークをできるようにアドバイスをしてあげればいい。「聴衆は自分からどんな話を聞きたいと思っているだろう?」「自分のプレゼンがチームに対するなんらかの貢献になるとしたら、それはどんなことだろう?」といった、自分ではなくまわりに対する貢献を意識したセルフトークができるように導いてあげてほしいと思います。

鈴木義幸さん「他者のセルフトークに働きかけて能力を引き出す方法」02

リーダーが意識すべき「組織に共有される問い」

また、リーダーの立場にある人には、「組織に共有される問い」というものがあるということも意識してほしいと思います。

「仕事で最も大切なものは顧客満足度だ」と考えているリーダーがいるとします。ところが、部下に対しては日常的に「今月の売上、どうなってるんだ?」といった利益だけを追求するような言葉ばかり投げかけていました。すると、部下たちのなかでどんなセルフトークが行なわれるでしょうか。

おそらく、「とにかく売上を上げるにはどうすればいいだろう……?」。あるいは、「自分はリーダーから認められているだろうか……?」「リーダーから怒られないようにするにはどうすればいいだろう……?」といった問いを部下たちは自分に投げかけるでしょう。それらは、「お客さまに満足してもらおう!」といった意識とはほど遠いものですよね。

そうではなく、「お客さまに満足してもらうためにできることってなんだろう?」というふうに、もっと直接的な問いかけをするべきなのです。

鈴木義幸さん「他者のセルフトークに働きかけて能力を引き出す方法」03

「質問」ではなく「問い」だと認識する

あるホテルチェーンに勤める人から聞いた話があります。その人は、勤務先であるホテルのアメリカ本社から、「俺たちは世界一か?」とよく聞かれるそうです。そして、彼は自分が勤めるホテルの従業員にも同じように「俺たちは世界一か?」と問いかけるのだそう。頻繁にそう問われるために、スタッフ全員が常日頃から「世界一のホテルのサービスってなんだろう?」と自らに問いかけ、その問いが共有されているのです。

そういった問いから生まれるものと、「リーダーから怒られないようにするにはどうすればいいだろう……?」といった問いから生まれるものに大きな違いがあることは言うまでもないでしょう。

そして、よりよい問いを組織で共有するためにも、リーダーの人には「質問」ではなく「問い」という言葉を強く意識してほしいと思います。

私たちは学校教育のなかで「質問に対しては正解を答えないといけない」とすり込まれています。つまり、「質問」だと意識するとつい口調が厳しくなって部下に威圧感を与え、「リーダーが求める正解はなんだろう……?」と、本当に考えてほしいこととは別のことを部下たちに考えさせてしまうのです。質問ではなくより柔らかい表現である「問い」を意識すれば、リーダーが部下に考えさせたいことがスムーズに伝わり、よりよいアイデアや答えを引き出せると思います。

鈴木義幸さん「他者のセルフトークに働きかけて能力を引き出す方法」04

【鈴木義幸さん ほかのインタビュー記事はこちら】
成功をつかむカギは “これ” を意識すること。社会人にとって超重要な「セルフトーク」とは
「行動のスイッチ」はこうすれば入る! 自分への “問い” によって行動を○○せよ

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【プロフィール】
鈴木義幸(すずき・よしゆき)
1967年11月11日生まれ、静岡県出身。株式会社コーチ・エィ代表取締役社長。エグゼクティブコーチ。慶應義塾大学文学部人間関係学科社会学専攻卒業。株式会社マッキャンエリクソン博報堂(現株式会社マッキャンエリクソン)に勤務後、渡米。ミドルテネシー州立大学大学院臨床心理学専攻修士課程を修了。帰国後、有限会社コーチ・トゥエンティワン(のち株式会社化)の設立に携わる。2001年、株式会社コーチ・エィ設立と同時に、取締役副社長に就任。2007年1月、取締役社長に就任。2018年1月より現職。200人を超える経営者のエグゼクティブ・コーチングを実施。リーダー開発に従事するとともに、企業の組織変革を手掛ける。また、神戸大学大学院経営学研究科MBAコース「現代経営応用研究(コーチング)」をはじめ、数多くの大学において講師を務める。主な著書に『未来を共創する経営チームをつくる』、『新 コーチングが人を活かす』、『リーダーが身につけたい25のこと』(いずれもディスカヴァー・トゥエンティワン)、『コーチングのプロが教える 「ほめる」技術』(日本実業出版社)などがある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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