「努力は必ず報われる」に見る "努力の目的化"が、成功を遠ざけていることについて。

難関校の受験や、難関企業への就職。あるいは、芸術家や歌手といった成功が困難と思われている職業への挑戦。

これらにチャレンジする人の中には、成功するまでに多くの辛いことがあるかもしれない、そもそも成功できないかもしれないという思いで、途中で挫折してしまったり、挑戦する前に諦めてしまったりする人がいます。

しかし、本当に、苦労や不幸がなければ成功はつかめないのでしょうか。 今回は、大多数の人が信じている、成功には苦労や不幸が付き物という通念について考えます。

 

下積みが重要なのではない

 

堀江貴文さんが、「寿司職人が何年も修行するのはバカ」という発言をして話題を呼んだことがあります。発端は、開店わずか11ヶ月の寿司屋、「鮨 千陽」が、「ミシュランガイド京都・大阪2016」に掲載されたうえ、そこで寿司を握る職人さんが全員寿司経験1年未満だったというニュース。この快挙に対し、従来のように寿司職人になるためには10数年にわたる修行を重んじるべきと考える人々から批判が出たことで、堀江さんは上記のような発言をしたのです。

修行自体を重んじて、結果は無視してそれを批判するのはおかしいのではないかという訳ですね。現在は、寿司屋に就職してもあまりのキツさにやめてしまう人が後を絶たず、その厳しい道のりに、寿司職人になろうとする若い人がどんどん減少してしまっています。その現状をおいても、下積みという苦労の時代を重んじるべきとする風潮は根強くあるのです。

寿司職人業界におけるこうした現状から分かるように、大きな挑戦には大変な苦労が付き物だという考え方が、そうした挑戦から遠ざかる人を多くしてしまっている原因ではないでしょうか。

 

努力の誇大美化

 

堀江貴文さんと社会派ブロガーのちきりんさんが、堀江さんの著書『ゼロ なにもない自分に小さなイチを足していく』について対談した中に、興味深いコメントがあります。

堀江 (中略)「若いときの苦労は買ってでもしろ」とか言う人間が、僕は本当に嫌いで。そんなのわざわざ買う必要ないし、苦労しなくてもうまくいくのであれば、そのほうがいいに決まってるじゃないですか。いくら毎日うさぎ跳びして歯を食いしばって頑張っても、試合に勝てなければ意味はないですよ。 ちきりん 全く同じ意見です。ところがこの国には、たとえ試合に負けても、努力したんだからいい、流した汗が尊いんだ、といった倒錯した考えがあるんですよね

(引用元:ダイヤモンド社書籍オンライン|第3回[ちきりん×堀江貴文 対談](前編)伝わらない悔しさを乗り越えて

また、堀江さんは著書の中で、受験勉強時代は、努力して勉強していたのではなく、目の前の勉強にハマっていたのだ、ということを述べています。それについて、

ちきりん 努力を努力だと思わず「ハマる」だけだ、という言い方はいいですね。 堀江 そうです、要は「楽しめ」ってことです。 ちきりん 本人は楽しんでいても、何かにハマって朝から晩まで働いている人のことを、人は努力してると呼ぶ。それがいつしか「苦労しないと成功しない」みたいな話にされてしまう(笑)。 堀江 そう思われるのがイヤだったから、これまで自分が努力してきたことについては、あえて書いてこなかったんです。「やっぱり、歯を食いしばって努力しないと成功できないんだ……」「苦労したくないから、チャレンジしなくてもいいや……」って、読んだ人が怖じ気づいちゃうかもしれないんで。

(引用元:同上)

苦労しないと成功しないというステレオタイプの考え方は、最初に挙げたミシュランに輝いたお寿司屋さんの例を見ても、あまり根拠がないことは明らかです。そうした考えに振り回されて、挑戦をやめてしまうのは、もったいないことではないでしょうか。

 

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感じ方が、成功までの過程を決める

 

自分の夢をかなえたり大きな挑戦をしたりするときは、辛い経験が欠かせないものなのでしょうか。

お笑いコンビオードリーの若林さんが相方の春日さんについて書いたエッセイで、次のようなエピソードを紹介しています。

下積み時代。まったく売れず、日々鬱屈としていた若林さんと対照的に、相方の春日さんは毎日楽しそうで、努力する様子も見えなかったと言います。ある日業を煮やした若林さんは春日さんに、

「28になってもお互い風呂なしのアパートに住んで、同級生は結婚してマンションに住んでいるのに恥ずかしくないのか?」

(引用元:若林正恭著(2015),『完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込』,KADOKAWA/メディアファクトリー.)

と檄を飛ばし、もっと努力しろと説教します。すると、三日後に春日さんから電話がかかってきて、

「どうしても幸せなんですけど、やっぱり不幸じゃないと努力ってできないんですかね?」

(引用元:同上)

と真剣に聞かれたそうです。その後、二人が芸人として成功してからも、若林さんの鬱屈した姿勢は成功する前と変わらなかった一方、春日さんは忙しくても楽しそうにしていたと言います。

このエピソードにヒントがあるのではないでしょうか。

私自身も、浪人時代、勉強ばかりしていたはずですが、不思議とつらいという気持ちや努力していたという気持ちはなく、今振り返っても楽しかったという記憶しかありません。むしろ、大学受験から目を背けていた高3の時のが辛かった記憶があります。ですが、周りの人は、「浪人時代、大変だったでしょう、辛かったでしょう」と声をかけてくれるのです。

体験自体は客観的に見れば辛いことでも、やっている当人は案外平気なのかもしれません。感じ方次第で、幸せを感じたまま成功することは可能なのではないでしょうか。もしくは、自分の求める成功に向かって努力している時は、夢中になっていて、辛いことも辛いと感じなくなるのかもしれませんね。

 

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ヘルマン・ヘッセの小説『デミアン』にこんな台詞があります。

君がどんなに遠い夢を見ても、君自身が可能性を信じる限り、それは手の届くところにある。

(引用元:ヘルマン・ヘッセ著『デミアン』)

どんなに遠く見えても、困難そうに見えても、諦めてしまっては叶う夢も叶いません。ぜひ、社会の通念にとらわれず、自分なりの幸せを感じながら、成功を掴んでくださいね。

 

参考サイト Spotlight|開店からわずか11ヶ月…素人だらけの寿司屋がミシュランに選ばれた理由 HORIEMON.COM|ホリエモン「大事なものが欠けているのはお前らの脳だと思うよ」寿司屋の修行重視の考え方を一蹴 ダイヤモンド社書籍オンライン|第3回[ちきりん×堀江貴文 対談](前編)伝わらない悔しさを乗り越えて 食彩夜話|鮨 千陽@福島~料理人大学運営のお寿司屋さん 参考文献 若林正恭著(2015),『完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込』,KADOKAWA/メディアファクトリー.

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