「1日1行ノート」で“やめない自分”をつくる

1日1行ノートを実践して習慣化に取り組む男性

「毎日3ページ書こう」「毎日英語を30分」——やる気に満ちた初日はうまくいっても、3日目には息切れ。じつは、続く人と続かない人の違いは「努力の量」ではなく「始め方」にあります。本記事では、行動科学が示す「1日1行ノート」で三日坊主を克服する方法を解説します。

習慣化できない本当の原因は「ハードルの高さ」

「今回は絶対に続ける!」と意気込んだのに、気づいたら習慣が途切れてしまった。そんな経験は誰にでもあります。でも、それはあなたの意志が弱いからではありません。行動の設計に問題があったのです。

スタンフォード大学の行動科学者B.J.フォッグ氏は、行動が起きるかどうかは「能力(Ability)」、つまりその行動がどれだけ簡単かに大きく依存すると指摘しています。*1

急に「毎日30分」と負荷を上げると、忙しい日や疲れた日には実行できません。一度できない日があると「もういいか」となり、そのまま途切れてしまう。これが三日坊主の正体です。

フォッグ氏が提唱するのは、「小さすぎて失敗できない」レベルまで行動を下げること。これが継続の第一歩です。

習慣化のハードルを下げるためのノートとペン

1日1行ノートの始め方|30秒でできる習慣術

続かない最大の原因は「完璧にやろう」とするハードルの高さです。「1行ノート」は、1日わずか30秒で完了します。

書く内容は何でも構いません。以下のような項目から、その日の気分で選んでください。

・今日いちばん嬉しかったこと

・今日いちばん笑ったこと

・学んだことや気づき

・感謝したいこと

・「まあまあよかった」と思える出来事

ポイントは「1行で完了」とみなすこと。2行以上書いてもいいですが、1行書けばその日は「達成」です。この小さな達成感が、次の日も書こうという気持ちにつながります。

いつやる? 「きっかけ」の設計

もうひとつ重要なのが、いつ書くかを決めておくことです。効果的なのは、すでにある習慣の直後に組み込む方法です。

・歯を磨いたあとに1行書く

・ベッドに入ったら、スマホを見る前に1行書く

・朝のコーヒーを淹れたあとに1行書く

「寝る前」「朝起きたら」のような曖昧な設定より、具体的な行動とセットにするほうが定着しやすくなります。

「行動の紐づけ」をさらに活用したい方は、手帳を使った習慣化テクニックも参考になります。

習慣化には何日かかる?「66日」の真実

「どのくらい続ければ習慣になるのか」。これには科学的な研究があります。

ロンドン大学のフィリッパ・ラリー博士らの研究によると、新しい行動が「自動的に」感じられるようになるまでの平均は66日でした。*2

ただし、研究では「途中で1〜2日抜けても長期的な習慣形成には影響がなかった」ことも示されています。完璧主義にならず、気長に続けることが大切です。

✍️ 編集部でも試してみた

三日坊主常習犯のスタッフが、「歯磨き後の1行ノート」を2ヶ月間実践してみました。
最初の1週間は「特に書くことがない」と悩みましたが、「プリンが美味しかった」レベルでもOKというルールに設定。すると、不思議なことに3週間目あたりで「書かないと歯磨きが終わった気がしない」という感覚(違和感)が生まれました。
研究にある66日には届いていませんが、50日を過ぎた頃には完全に無意識化。読み返すと「雨の日はネガティブなことを書きがち」という自分の思考パターンにも気づけました。「ハードルを下げれば続く」は本当でした。

小さな習慣の継続により自己効力感が高まり充実した表情の女性

1行日記のメカニズムは、あらゆる「習慣化」に応用できる

ここまで「1行日記」のやり方を紹介してきましたが、じつはこの手法、日記に限らずすべての習慣化に応用できる「最強のメソッド」でもあります。

B.J.フォッグ氏が提唱する「Fogg行動モデル」をもとに、なぜこれが万能なのかを解説します。

「摩擦ゼロ」なら、やる気はいらない

あらゆる習慣化において、最大の敵は「摩擦(心理的な抵抗)」です。

「ジムに行かなきゃ」「参考書を開かなきゃ」……この「〜しなきゃ」と感じた瞬間、脳にはブレーキがかかります。Foggモデルでは、このブレーキを外す鍵はMotivation(やる気)ではなく、Ability(行動の簡単さ)にあるとしています。

1行日記が続くのは、「ノートを開く」という動作の摩擦を極限までゼロにしているからです。

同じように、どんなに大きな目標でも「摩擦ゼロ」のサイズまで小さくすれば、習慣化はカンタンに攻略できます。

【実践例】このロジックで「英語学習」も攻略できる

このメカニズムを、もっと難易度の高い「語学学習」に応用して成功した事例があります。

《コラム:「忙しすぎて無理」を克服した事例》

ENGLISH COMPANY の受講生に、テレビ局で働く30代の男性がいました。不規則で拘束時間も長い働き方のなか、30分・1時間の学習は全く続かない状態だったといいます。

そこで実践したのは、1行日記と同じアプローチ。「通勤中に1フレーズだけシャドーイングする」という、極限までハードルを下げた行動でした。

疲れていても、仕事が立て込んでいても、1フレーズなら摩擦なくできる。この小さすぎる習慣を軸に学習を継続した結果、彼は3ヶ月で VERSANT が23点アップしました。大量の時間を投下したわけではなく、行動設計を変えただけで成果が跳ね上がったのです。

→ 3ヶ月でVERSANT23点アップ。この受講生のインタビュー詳細はこちら

日記も、英語も、筋トレも、仕組みはすべて同じ。「絶対に失敗できないサイズ」から始めているかどうか。ただそれだけなのです。

目標達成に使える「分解思考」の身につけ方

1日1行ノートを始めると、自然と「大きな目標を小さく分解するクセ(分解思考)」が身につきます。

「1行でいい」と自分に許可を出せるようになると、他の目標に対しても「まず最小単位は何か」と考えられるようになります。

・「部署の生産性を上げたい」→「今日、無駄な作業を1つ見つける」

・「本を月4冊読みたい」→「今日、10ページだけ読む」

これが、大きな目標を前に立ちすくまず、着実に成果を出す人の思考習慣です。

1日1行ノートに関するよくある質問

Q. 習慣化には何日かかりますか?

ロンドン大学の研究では平均66日とされていますが、18日〜254日と個人差が大きいです。「66日」はあくまで目安として、焦らず取り組むことが大切です。

Q. 1日抜けたら最初からやり直しですか?

いいえ。研究では、1〜2日抜けても長期的な習慣形成には影響がなかったことが示されています。抜けたら翌日から再開すれば問題ありません。

Q. 何を書けばいいかわかりません

「今日いちばん嬉しかったこと」「学んだこと」「感謝したいこと」など、何でも構いません。内容の質より「書いた」という事実が重要です。テーマは日によって変えてもOKです。

Q. ノートとアプリ、どちらがいいですか?

どちらでも構いません。重要なのは「続けやすい方法」を選ぶこと。手書きが好きならノート、スマホが手元にあるならメモアプリ。自分にとってハードルが低い方を選んでください。

***

1日1行は「小さすぎて失敗できない」挑戦です。やる気も完璧さも必要ありません。必要なのは、続けられる仕組みだけ。今夜、まずは1行から始めてみてください。

(参考)

*1 Fogg, B. J. The Fogg Behavior Model|フォッグの振る舞いモデル - BJ Fogg
*2 Lally, P., et al. (2010). How are habits formed: Modelling habit formation in the real world. European Journal of Social Psychology, 40(6), 998–1009.|習慣形成に関する研究(Wiley Online Library)

【ライタープロフィール】
橋本麻理香

大学では経営学を専攻。13年間の演劇経験から非言語コミュニケーションの知見があり、仕事での信頼関係の構築に役立てている。思考法や勉強法への関心が高く、最近はシステム思考を取り入れ、多角的な視点で仕事や勉強における課題を根本から解決している。

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