英語力を測る指標として、企業のあいだで根強い人気があるのがTOEIC。新卒・中途採用基準のみならず、英語研修の効果測定、海外赴任者や海外出張者の選抜、異動基準などの多岐に渡り、TOEICスコアをベンチマークとして置いている企業が多く存在します。
今回は、「TOEICのスコアアップを通して社員の英語力を上げたい」と考えているご担当者に向けて、英語研修のプログラム選定について解説していきます。
【この記事はこんな方におすすめ】
- 社員のTOEICスコアアップに効果的な法人研修プログラムをお探しの方
- 英語研修プログラムを選定する際の注意点が知りたい方
- 対面型受講/オンライン型受講・個別レッスン/グループレッスンのメリット・デメリットが知りたい方
- そもそもTOEICとは?
- 根強い “TOEIC不要論”
- 「TOEICスコアアップ」のための英語研修の選び方
- TOEICのスコアアップには「自己学習」が大事
- スピーキング・ライティングのスキルを測りたい場合
そもそもTOEICとは?
TOEICは、IIBC(一般財団法人 国際ビジネスコミュニケーション協会)が提供するテスト。大きく分けて2種類のテストがあります。
- TOEIC Listening & Reading Test(満点990)
- TOEIC Speaking & Writing Tests(満点400)
「TOEIC800点以上が昇進要件で……」のように「TOEIC」と示される際は、一般的に前者のTOEIC Listening & Reading Test を指します。本記事内でご説明する「TOEIC」も、基本的にTOEIC Listening & Reading Test を示しているとお考えください。
TOEICスコアは多くの企業でさまざまな選考基準に使われており、多くのビジネスパーソンにとって避けては通れないテストです。
根強い “TOEIC不要論”
「『聞く』『読む』だけで英語力を正しく測れるの?」「実際のスピーキングやライティングのスキルがわからない」といった「TOEICは意味がない」という言説をよく見かけます。これについては、「半分合っていて、半分間違っている」と言えるでしょう。
事実として、TOEIC Listening & Reading Test では「話す」力を測ることはできません。しかしながら、「聞く」「読む」のインプット面を強化しないことには、「話す」力は伸びていかないもの。そのため、TOEICスコアだけが高くても話せることにはならないと一概に断ずるのは早計です。
私たちは「聞けたり」「読めたり」するもののなかから、「話したり」「書いたり」することができます。つまり、「話す」ことと「書く」ことができる人には、「聞く」力と「読む」力もあるということ。
時折「TOEIC500点でもペラペラと話せる人もいる」という言説も見かけますが、実際には「TOEIC500点レベルの範囲の語彙や表現のなかで、場慣れして話している」ケースが多いのが実情です。よく観察すると、相手が言っていることを正確にリスニングできていなかったり、雰囲気でどうにかコミュニケーションをとっていたりする人も多いのです。
「正確に聞き取れなくてもいい」「正確に読めなくてもいい」という人なら、それでもいいかもしれません。ですが、多くのビジネスパーソンにとっては、相手が話している・書いていることを正確に聞く・読む必要があるものですよね。
英語力を伸ばすためには「聞く」「読む」の力は最低条件。そのため、TOEIC Listening & Reading Test でも「ある程度の英語力を測ることはできる」のです。後述する「スピーキング力を測るテスト」も合わせて受験すると、より正確な英語力を測ることができるでしょう。
「TOEICスコアアップ」のための英語研修の選び方
続いて、TOEICのスコアをアップさせるための英語研修の選び方について、ご説明しましょう。
TOEICのスコア目標を決定する
英語研修を導入する際には、ターゲットとなるスコア目標を決めることが先決です。IIBCが公開しているCEFR(言語の枠や国境を越えて、外国語の運用能力を同一の基準で測ることが出来る国際標準)とTOEICのスコアの相関を見てみましょう。(参考:IIBC|TOEIC® Program各テストスコアとCEFRとの対照表)
多くのビジネスパーソンに求められているであろうIndependent User(自立した言語使用者)のレベルはCEFR B1、B2 。TOEICスコアで言えば、B1が550以上、B2が785以上です。昇進や昇格の要件として、TOEIC800以上を指定している企業が多くあるのは、CEFRで言うとB2レベルだからと言えます。
CEFR B2は、以下のように規定されているため、おおむね多くのビジネスパーソンに求められている要件に合致しますね。
自分の専門分野の技術的な議論も含めて、抽象的な話題でも具体的な話題でも、複雑な文章の主要な内容を理解できる。母語話者とはお互いに緊張しないで普通にやり取りができるくらい流暢かつ自然である。幅広い話題について、明確で詳細な文章を作ることができる。
(引用元:文部科学省|各資格・検定試験と CEFRとの対照表)
そのため、まだ「英語力がそれほどない方はTOEIC600点」を、「すでに600点以上のスコアの方は800点以上」を目指すかたちで目標設定するのがおすすめです。
予算や期間に合わせて受講形態を絞る
TOEICの研修プログラムのみならず、英語研修は大きく「個別型」と「グループ型」に分かれます。
- 個別型:マンツーマンでレッスンするため、個人の英語力の課題に合わせてカリキュラムを調整できるプログラムが多くあります。そのため、短期間で英語力を伸ばすことが可能です。費用が割高になる傾向にあることがデメリット。
- グループ型:おおむね同じレベルの受講生とグループを組むため、受講生どうしで切磋琢磨できるなどの利点があります。一律のカリュキュラムが課されることが多いため、成果にバラつきが出やすいことが難点。個別型に比べて費用が割安になる傾向があることがメリットです。
人数や予算に応じて、気軽に問い合せましょう。
英語研修プログラムを選定する
ターゲットのスコア目標、予算・期間で受講形態をある程度絞れたらプログラムの選定に入ります。TOEICのスコアアップ事例が豊富であったり、累計受講者数を明確に示していたりする研修会社を中心に、信頼性が高い英語研修を選定しましょう。3社ほど比較すると、それぞれの強みがわかり、ニーズにマッチするか検討しやすくなります。
短期間で確実にTOEICスコアを上げたい場合は、「英語コーチング」型がおすすめ。個別カリキュラムを作成してくれるところが多く、学習の進捗管理も行なってくれます。また、英語研修で重要になる「完遂率」(研修プログラムを最後まで完了する率)は、どの英語コーチングサービスも高い傾向にあります。
その場のリアルのコミュニケーションを重視せず、TOEICスコアアップのみにフォーカスするのであれば、対面型受講・オンライン型受講どちらでも成果が大きく変わることはないでしょう。自己学習の時間を捻出するのであれば、オンライン型の受講が最も時間の使い方として有効です。
オンライン型の英語研修については、こちらの記事も参考にしてみてください。
TOEICのスコアアップには「自己学習」が大事
TOEICに限ったことではありませんが、英語力を上げるには「自己学習」が不可欠です。1回1〜2時間のレッスンを受けるだけでは、英語力は上がりません。英語研修を受ける社員には、 “自習” の時間をとってもらう必要があります。
要求される学習時間はプログラムによって異なるため、「研修の時間以外にどれくらいの自己学習が必要なのか」、英語研修を導入する際に研修会社に確認しておくとよいでしょう。通常業務やプライベートの時間を大幅に圧迫しないよう、考慮する必要があります。
前述の英語コーチングサービスには、進捗管理を大きな強みとしているところが多くあります。「英語研修プログラムの完遂+自己学習時間の管理」まで任せることができるでしょう。
スピーキング・ライティングのスキルを測りたい場合
前述のように、TOEIC Listening & Reading Test は英語スキルのうち「読む」「聞く」力を測るテストです。スピーキングやライティングのスキルも同時に測りたい場合は、以下のテストがおすすめです。
- VERSANT Speaking & Writing Test(特にSpeakingがおすすめ)
- TOEIC Speaking & Writing Tests (満点400)
VERSANTはスマートフォンを使い、20分程度でスピーキング力を測ることができるテスト。英語を話す際に要求される高いリスニング力、スピーキング力を判定することができ、英語研修を提供している企業の多くにVERSANTの採用が広がっています。
TOEIC Listening & Reading Test だけでは把握できないスピーキング力を定量的に測れるテストとして、研修会社に両方の実施を相談してみるのもおすすめです。
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この記事では、社員のTOEICスコアを伸ばしたい担当者の方へ向けて、「TOEICとはどういったスキルを測るテストなのか」を解説したあとに、「具体的な英語研修導入の際の検討ポイント」をお伝えいたしました。最後に重要な点を振り返ってみましょう。
- TOEIC Listening & Reading Test は、「聞く」「読む」力を測るテストなので、スピーキングの力を測ることはできない。ただし、英語運用能力を測るテストとしてはおすすめ。
- ターゲットスコアは、TOEIC600点以上(CEFR B1レベル)かTOEIC800点以上(CEFR B2レベル)のどちらかにする。
- スコアアップ事例が豊富な英語研修を選ぶ。
- 予算や期間によって、個別型・グループ型を選定する。
- 自己学習が大切。進捗管理を行なってくれる英語コーチングがおすすめ。
- スピーキング・ライティングのスキルも合わせて測りたい場合は、VERSANTやTOEIC Speaking & Writing Testsがおすすめ
IIBC|TOEIC® Program各テストスコアとCEFRとの対照表
文部科学省|各資格・検定試験と CEFRとの対照表
STUDY HACKER 編集部
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