イラっとしたらチャンス到来! 「イラっとノート」で怒りを成長に変えられる。

イラっとした様子のコーヒーを持つ女性

心底激しく怒っているわけではないが、笑って受け流すほど軽い怒りでもない。そのときのあなたを表現すると、「イラっとした」になるのではないでしょうか。

「新しい靴を踏まれた」「店員の感じが悪かった」「電車が遅れた」と、見ず知らずの人や交通機関にイラっとしたり、「暇なくせに手伝わない」「毎週コロコロ指示が変わる」「取引先が言いたい放題」と仕事関係の人にイラっときたり、「ここでフリーズしないでよーーー!」とパソコンにイラっときたり……。

わたしたちの周囲には、さまざまな「イラっとすること」があふれかえっています。 でも、イラっときた対象を恨めしくにらんでいるより、もっと気が晴れるいい方法がありますよ。

それは、「イラっとノート」を書くことです。

気分を整えてくれるだけではなく、あなたの成長も助けてくれるかもしれません。有識者や実業家の言葉をもとに、「イラっとノート」の効能とやり方を紹介します。筆者もやってみました。

効能1.「イラっと」感情の悪い化学反応を阻止

イラっときた自分の心を鎮めるためには、イラついた理由を書き出すことが有効だと教育学者の齋藤孝先生は言います。言葉にして書くことで、自分の感情を客観視できるからです。

楽しいことならいいけれど、イラっとした感情を放置して心にためこむと、心の中は不穏な空気でいっぱいになってしまいます。なんとなく気が晴れず不機嫌になってしまうときは、まさにその状況かもしれません。

齋藤先生は、心の中で不穏な空気が悪い化学反応を起こし、感情が爆発してしまわないよう、イライラした理由を紙に書き出すようすすめています。さらに書いたものを読み返すことで、自分の感情を理解でき、分析が可能となり、理性的にイライラの原因と向き合えるようになるとのこと。

たとえばAが、同僚Bの態度にイラっとして、その内容を書き出したとします。

イラついたことを紙に書くカジュアルなスタイルのビジネスパーソン

そのあと、自分が書いたものを読み返していると――

「本当にBはビックリするほど偉そうだ」「バカみたい」「調子に乗りすぎ」「なんであんなに偉そうなの?」「まさしく根拠のない自信 」

「いや……、じつは、もしかして、逆にぜんぜん自信がないのかも……?」

イラっとノートを読み返しているうち、いろんな思いが浮かんできた男性

――と、こんなふうに、

  1. いろんなことを思っているうち→
  2. だんだん冷静になって→
  3. いつのまにかイライラの原因と向き合っていた。

という状況になるそうです。

(参考:齋藤孝(2016),『イライラしない本 ネガティブ感情の整理法』, 幻冬舎.)

効能2.「イラっと」きたらチャンス到来?

また、株式会社朝6時 代表取締役社長の池田千恵さんは、イラッときたら「ネガティブな感情」を「生きる知恵」に転換できるチャンスかもしれないと述べます。

そもそもイラつきの多くは、自分の「当然こうなる・こうあるべき」が阻害されたときに起こるのではないでしょうか。だからこそイラっときたとき、自分が当たり前だと思っていた「普通」の定義が、人によってまったく違うと知るいい機会になります。

その際には、イラっとしたことをノートに書いて、考えを整理するといいのだそう。

たとえば「気が利かないなぁ。普通は、それくらい察してやってくれるでしょ!」と、職場の人に対しイライラしてしまったとします。池田さんの説明を参考にすると、そのイラついた件について、

  1. 相手が気を利かせられなかった(察しなかった)理由は何か?
  2. そもそも何をもって「気が利く(察する)」というのか?
  3. 自分の言葉は、どう相手に伝わっていたのか?
  4. それは、どれくらい自分の意図とかけ離れていたのか?
  5. では、どう伝えればわかってもらえたのか?

自分に問いかけるわけです。それに答えることで、心の中の整理が行なわれるのだとか。すると、冷静に次はどう伝えるか考えることができ、行動に移せるのだそう。

頭の中だけで考えていると、自分の思考がどのように広がり、どんな結論に達したか見えにくくなるので、ノートに書くよう池田さんはすすめています。

イラついたことを書き出していくノート

効能3.「イラっと」に感謝で成功する?

3つ目は、「イラっとしたこと」と「成功」との、密接した関係について紹介します。

世界的な大企業の創業者たちは、イラっとさせるような発言をしてくる人々に対し、むしろ感謝の気持ちを示しているそうです。

パナソニック株式会社を創業した「経営の神様」こと松下幸之助氏は、結果としてあらゆる改善へとつながるので、苦情をよく言ってくださるお客様こそが、じつは “お得意様” になるのではないか、と述べたそう。

デル創業者のマイケル・デル氏も、あら探し・わがまま・ 厄介な質問をする人々に対し、「ありがとうございます」とお礼を述べています。

イラっとさせられた言葉に対して感情的にならず、真摯に受け止めてひとつひとつ改善していけば、結局は組織も自分も評判を上げられる、ということなのでしょう。

ならばわたしたちも「イラっとノート」を書いて、心の中の悪い化学反応を阻止し、ネガティブ感情を知恵に転換させ、成長し続ける賢者になってしまおうではありませんか。

スケッチブックに鉛筆で描かれた、イライラしているビジネスパーソン

イラっとノートを書いて・読んでみた

まずは、齋藤孝先生が教えてくれた方法を実践してみます。手順はこれだけ。

  1. イラっとしたことを書く
  2. 書き出した “イラっとしたこと” を読む

100円ショップでも買えるごく普通のA4ノートに、近日のイラっとしたことを思い出しながら書いてみます。ルールは特になし。ズラズラと書きます。

筆者が書いた「イラっとノート」

次に、書いたことを読んでみます。すると――

※枠内は、青字が言葉やイメージを含む「思ったこと」、それ以外は「書いたこと」の概要。

「自転車乗りながらスマホと音楽とタバコって、バカなんでしょうか」「クルマは厳罰化したけど」「ながら運転の自転車に対する規制はどうなっているんだっけ?」

「会ったのが3回目の人に“はじめまして”といわれた」「次は絶対に忘れられない自己紹介をしてやる」「今度“はじめまして”、といったら本気で怒りますよ。ハハハハハ(と握手、目は笑わず)とか」「派手な色の服を着るとか」

「(歯医者で)仮に詰めてもらった奥歯をカバーするためのフタが、治療の翌日(早い時間)にとれた」「とれやすいので気をつけてくださいね、の範ちゅうを超えている」「まあ、治療途中だから仕方がないか」「やっぱり先生がやってくれたほうがうまいな」

――と、それぞれ書いたことに対し、いろんなことが頭に浮かんできました。それらは、ツッコミであったり、空想であったり、疑問であったり、対策であったり、今後の行動であったり、寛容な気持ちの出現であったりと、さまざまです。

齋藤孝先生は、書き出したイライラ内容を読み返しているとき、いろんな思いが頭に浮かんたら、すでに「自分の感情を客観的に理解・分析し、イライラの原因に向き合っている証拠」だと述べます。

心に残っているネガティブ感情を明白にすれば、必要な行動も見えてくるのだそう。齋藤孝先生は、この行為を「感情の棚卸し」と表現します。自分がどんな感情の在庫を、どれくらい抱えているかわかり、整理もできるからです。なるほど、実際にやってみるとピッタリの言葉だと感じます。

倉庫で棚卸をするビジネスパーソン

商品在庫を把握するように、感情もときどき棚卸で把握することが必要だ

イラっとノートで自分に問いかけてみた

次に、池田千恵さんの方法で実践してみます。今回選んだ「イラっとしたこと」はこれ。

最近筆者がイラっとしたこと

この場合だと、お直し屋さんのミスなので、筆者に非はありません。

しかし、このものすごーくイラっとした「ネガティブな感情」を、池田千恵さんがいうように、どう「生きる知恵」に転換できるのかチャレンジしてみたい気持ちで選んでみました。池田千恵さんが示した質問にあてはめ、自分に問いかけていくと、こうなります。(※わかりやすいように、手書きの内容をデジタル化しました)

イラっとしたことについて、自分に問いかけてみた内容

――こうして2種類のイラっとノートをやってみたところ、いずれの方法にも大きな効果を感じました。

イラっとノートをやってみた感想

最初、イラっとしたことをA4ノートにズラズラと書いていたとき、怒りを覚えた出来事のはずなのに、なぜか気持ちが楽しくなっていると感じました。イラついたことに対し、お笑い風にツッコミを入れながら書いたせいかもしれません。

気分が明るくなって、腹立たしさがグッと薄まるので、「ツッコミ入りのイラっとノート」はかなりおすすめです。

また、それを読み返すことで、1人ブレインストーミングを行なっているかのように、冷静になって対策を考えたり、寛容にとらえたりすることができました。頭に浮かんだこともすべて、ノートに書いていくといいかもしれません。

「自分に問いかけ、答えていく方法」も同様の効果を生みます。答えるために考えることが必要とされるので、冷静になる度合はこちらのほうが高いといえます。それどころか、理性が働きすぎて、あんなにイラっとしたことなのに「自分もすべきことを怠ったかもしれない」と、反省するまでにいたりました。

こうした意識の変化と、それに伴う行動は、間違いなく成長と良好な対人関係を助けてくれるでしょう。「イラっとノート」で、「ネガティブ感情」が「生きる知恵」に変わるのは、どうやら本当のようです……!

***
「イラっと」したことがもたらす効能と、「イラっとノート」について紹介しました。ぜひあなたも、イライラしたまま放置せず書き出して、感情の棚卸を習慣化し、生きる知恵を蓄えて、賢者になってくださいね。

(参考)
NIKKEI STYLE|WOMAN SMART|「ありえない」、イラッときたらそれはチャンス
齋藤孝 - 幻冬舎plus|イライラしない本|イライラしたときは「紙に書き出す」のが最高の解消法
STUDY HACKER|「嫌なこと」は放置するな! 書きなぐる&対策を考える『嫌なことノート』で何倍も成長できる。
齋藤孝(2016),『イライラしない本 ネガティブ感情の整理法』, 幻冬舎.

【ライタープロフィール】
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