「運が悪い人」には3つの思考の癖がある。“感謝の気持ち” 足りていますか?

杉浦正和さんインタビュー「運が悪い人の思考の癖」01

運がいい人と運が悪い人、どちらになりたいでしょうか? それこそ運なのですから、自分ではどうしようもないことだと考えてしまうかもしれません。

ところが、早稲田大学ビジネススクール教授であり、新刊『幸運学 不確実な世界を賢明に進む「今、ここ」の人生の運び方』(日経BP)が話題となっている杉浦正和(すぎうら・まさかず)先生は、「運が悪い人には、特有の思考の癖がある」と言います。運を遠ざけてしまう「思考の癖」とは、どんなものでしょうか。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)

当たり前に思えることを、当たり前だと思わない

少し変な表現かもしれませんが、みなさんの中に「当たり前に思えることを、当たり前だと思っている」人はいませんか? でも、それは本当に当たり前のことなのでしょうか。

たとえば、みなさんがいま私の記事を読んでいるのは、当たり前のことでしょうか? それこそ、不幸のどん底にいるようなことなく、ごく普通の毎日を送れているのは、決して当たり前ではなく、とても幸せなことであるはずです。

そのように、当たり前に思えることを当たり前ではないととらえることは「感謝」に通じます

日本語の「ありがたい」は、世界的に見てもとても珍しい言葉です。なぜなら、英語の「Thank you」をはじめ、多くのほかの言語では、文字通り「あなたに感謝します」という言葉で感謝を表すからです。ところが、日本語だけは、「これは確率的に起こりがたいことだ」という言葉で感謝を表すのです。つまり、日本人の場合、当たり前に思えることを当たり前ではないととらえる思考を持てば、必然的に周囲に対して感謝の心を持つことになるわけです。

感謝の心がビジネスにおいても大切であることは、数多くのビジネス書や自己啓発書で説かれています。常に感謝の気持ちを持てれば、周囲と良好な人間関係を築けるのはもちろん、自分の世界を豊かにすることにもなる。当然、仕事に対するモチベーションも上がっていくでしょう。そんな人にこそ運が寄ってきて、物事がうまくいくようになるのです。

杉浦正和さんインタビュー「運が悪い人の思考の癖」02

ポジティブ思考を誤認した「偽ポジティブ思考」に要注意!

また、運を引き寄せるには、「偽ポジティブ思考」に注意するのも大切です。いまはポジティブ思考が花盛り。ビジネス界においてもポジティブ思考が重要だとされ、その意見には私も基本的には賛同します。でも、なかにはポジティブ思考を誤ってとらえてしまっている人もいます

たとえば、無理をしてしまっている人がそう。「ポジティブ思考が大事だから、ポジティブに考えなければ……」と無理に考えようとしている人です。そうして自分を縛ってしまう考え方は、ポジティブ思考とはとうてい言えませんよね。

また、「誰かと比較して自分が勝っている!」というような物の見方でポジティブな気分にひたるのも、よいポジティブ思考とは言えません。なぜなら、順番をつけてしまうと、最終的には1位の人以外は全員が負けになり、自分を否定することになるからです。それこそ上には上がいるわけですから、他人と比較するような思考は、妬みを生むことにはなっても、運を引き寄せることにはなりません。

それから、ポジティブ思考を誤ってとらえている人にありがちなのが、ミスをしても学べないということ。たとえミスをしても、「ポジティブに考えればいいんだから」と、ポジティブ思考を反省しない理由として利用してしまうのです。もちろん、そんな人にチャンスや運が寄ってくるわけもないでしょう。

では、本当のポジティブ思考とはどんなものでしょうか? それは、いま挙げた例の真逆の思考です。無理をせず楽に考えて、誰かと比較して自分を否定せず、失敗を教訓として生かす――。偽ポジティブ思考に陥ることなく、本当のポジティブ思考を身につけられるようにしましょう。

杉浦正和さんインタビュー「運が悪い人の思考の癖」03

「認知バイアス」に左右されない思考を手に入れる

最後にお伝えするのは、「認知バイアス」の話です。運を引き寄せるには、意思決定の質を高め、失敗する確率を少しでも減らしていく必要があります(『「運はどうにもならない」は半分間違い。デキる人は “この2つ” で運を引き寄せている』参照)。でも、そう簡単ではありません。なぜかと言うと、すべての人間には認知バイアスが働くからです。

本来、認知バイアスは人間の生存のために必要なものです。たとえば、夜のジャングルで2つの光るものが見えたとしたら、それは危険な猛獣の目という可能性が高いでしょう。そこで「危険だ!」と知らせてくれ、瞬間的に逃避する行動を取らせてくれるものこそが認知バイアス。それこそ、認知バイアスがなければ人類はすでに絶滅していたでしょう。

ところが、認知バイアスは無数にあり、しかも私たちはその働きに無意識に身を任せています。たとえば、トイレの入り口の一方が青でもう一方が赤だったとしたら? 考えるまでもなく、「青は男性用、赤は女性用」と思ったはずです。でも、なかには真逆の配色をしているトイレもないとは言えない。そのように、認知バイアスは私たちの認識を左右し、時に意思決定を誤らせてしまうのです。

でも、残念ながら認知バイアス自体を私たちは認識することができません。だからこそ、勉強するしかない。まずは、認知バイアスというものがあるということを知る。そして、どんな認知バイアスがあるのかを知ることで、意思決定の質を高めていけるはずです。

杉浦正和さんインタビュー「運が悪い人の思考の癖」04

【杉浦正和さん ほかのインタビュー記事はこちら】
「運はどうにもならない」は半分間違い。デキる人は “この2つ” で運を引き寄せている
運を引き寄せられるかどうかは言葉しだい。“飲み会で愚痴ばかり” なんてご法度です

【プロフィール】
杉浦正和(すぎうら・まさかず)
1957年12月13日生まれ、出雲市出身。早稲田大学ビジネススクール教授。1982年に京都大学を卒業し、日産自動車に入社。海外マーケティング業務等を担当。米スタンフォード大学ビジネススクールに留学し、1990年にMBAを取得。経営・人事のコンサルティングファームを経てシティバンクにてリーダーシップ開発責任者を務めたのち、シュローダーにてグループ人事部長及び確定拠出年金部長。2004年から早稲田大学で教鞭を執り、2008年から現職。「人材・組織」の観点から総合的に経営にアプローチし、参加型の授業とゼミを行っている。2016年から2018年まで経営管理研究科教務主任、2017年から人材育成学会理事、2019年から国立音楽大学理事。主な著書に『早稲田大学ビジネススクールMBA入門 session6 人と組織 ウェルチの2つの言葉はどちらが正しいか』、『入社10年分のリーダー学が3時間で学べる』、『ビジネスマンの知的資産としてのMBA単語帳』(いずれも日経BP)などがある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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