勉強前の〇〇がカギ! 記憶力と集中力を劇的に高めるふたつの簡単ルーティン

勉強前にウォーキングしたり、指タッピングしたりしようと考えているビジネスパーソン

せっかく時間をつくって机に向かっても、どうも気が散ってしまい勉強を始められない——そんな勉強前のモヤモヤ状態に、心当たりはありませんか?

じつはこの「始める前の時間」に、ちょっとした工夫をすることで、勉強効率が大きく変わる可能性があります。スポーツに準備運動があるように、脳にも「集中スイッチ」を入れる時間が必要なのです。

本記事では、科学的にも注目されている勉強前に最適なふたつのルーティン、「ややきつい運動(早歩きなど)」と「指タッピング」に焦点を当て、筆者自身の体験とともにご紹介します。

時間もお金もかけずにできる、手軽だけど効果的な準備習慣。ぜひ今日の勉強の前に試してみてください。

「勉強前の時間」の重要性

勉強を始めてみたものの、「なんとなく集中できない」「つい別のことが気になってしまう」といった状況に陥ることが多いなら、勉強を「始めてから」よりも、「始める前」に目を向けてみるといいかもしれません。

なぜならば、ちょっとした準備で脳が学習モードに切り替わる可能性があるからです。たとえば、机に向かう前に部屋を軽く整えたり、お茶を淹れたりしたことで、気づけばスッと集中に入れた――そんな経験はないでしょうか?

何気ない行動でも、学習の土台となる脳の状態が整えば、吸収力が格段に高まるはず。つまり、勉強前の時間は「吸収率を決める時間」とも言えるわけです。

では、その勉強前の時間に何をすればいいのか?

――そこで取り入れたいのが、「ややきつい運動(早歩きなど)」や「指タッピング」といった、科学的にも注目されている簡単なルーティンです。

勉強前の机の上

勉強前の簡単ルーティン1:早歩き

ちょっと息が上がる程度の運動をしたあと、頭がスッキリした、集中しやすくなったと感じたことはないでしょうか。適度な運動は脳の血流を促し、認知機能や記憶力の向上に効果があると言われており、学習前のウォーミングアップとしても注目されています。

実際に、森田憲輝氏(北海道教育大学岩見沢校)、石原暢氏(神戸大学)らが2024年11月に発表した共同研究では、中強度の運動を20分間行なうことで、長期記憶が強化され、8週間後まで効果が持続すると確認されました。*1

中強度の運動とは、「ややきつい」と感じる運動のこと。心地よい汗が出て、少し息が弾むものの、会話ができて、笑うこともできるくらいの運動です。*2

そこで、さっそく筆者も試してみることに。20分程度の運動で思いついたのは、近所の遊歩道を早歩きで一周することです。勉強前に運動すると本当に記憶力や集中力が高まるのか、久しく触れていないドイツ語単語の勉強で試してみました。

【実験方法】 まずざっとテストをして、覚えていない単語を20個集めます。「運動なし」と「運動あり」用に10個ずつ割り振って勉強し、(8週間後の検証はできませんでしたが)勉強直後と翌日でどれだけ記憶できているか確かめてみました。

結果は以下のとおり。

≪運動なしの正答率≫

  • 勉強直後→ 100%
  • 翌日→ 70%

≪運動ありの正答率≫

  • 勉強直後→ 100%
  • 翌日→ 100%

先の研究では、24時間後は差が見られなかったとありますが、筆者にはしっかりと効果が現れました!

ドッドッドと心拍数が上がり、気分も高揚している状態からすぐスタートを切れたので、明らかに勉強に集中できたと感じています。

覚えた単語の量が少ないのと、学習した翌日の結果なので長期記憶が強化されたとまでは言えませんが――運動なしよりも運動ありで勉強した単語のほうが、はっきりと記憶に刻まれ、自信をもって書くことができたのは事実です。

ウォーキングをするビジネスパーソン

勉強前の簡単ルーティン2:指タッピング

指先を動かす運動は、昔から「脳の体操」として知られています。特に細かく複雑な指の動きは脳を刺激し、集中力や判断力を高めるといいます。ピアノやそろばん、あやとりが認知機能の維持によいとされるのも、こうした理由からです。

北陸先端科学技術大学院大学の研究(2017年)では、リズムに合わせて指タッピングを両手で行なうと、視覚空間ワーキングメモリに好影響との可能性が示されました。*3

また、2005年の研究では、人さし指など「動かしやすい指」よりも、薬指や小指など「動かしにくい指」を使った指タッピングのほうが、脳の広い部分の血流が増え、より活発に働くことがわかりました。

また1本ではなく、2本の指を交互に動かすような少し複雑な動きでは、脳の前頭葉や小脳など、運動や感覚をコントロールする場所がより強く反応したといいます。

このことから、薬指や小指を使った複雑な指の運動は、脳の活性化や機能維持に役立つ可能性があると考えられています。*4

ただ、指タッピングに自信がないという人もいるでしょう。じつは筆者もそのひとり。その場合は、ちょっとした指運動を行なうだけでもいいのではないでしょうか。何もしないよりは効果があるはずです。

勉強前の指タッピング

そこで、指タッピングに自信がない筆者も、以下のような独自のルールを設けて実践してみました。

  • 指を動かしやすい曲を探し、その音楽に合わせてリズミカルに指を動かす。
  • できるだけ両手・薬指や小指を意識して動かすが、とにかくリズミカルに指を動かせたら、それでよしとする。
  • 指タッピングを行なう時間はだいたい5分くらい。

ちなみに音楽は、クラシックなら「トルコ行進曲」(モーツァルト)、ポップスなら「Billie Jean」(マイケル・ジャクソン) が、筆者の指タッピングにはピッタリでした。

こうして指タッピングを行なったあと、ドイツ語単語の勉強をしてみたところ、不思議と集中のスイッチがすっと入った感覚がありました。

まるで、脳のなかの不要なノイズが指のリズムでかき消され、記憶をしまうスペースが空いたような印象。そのため、勉強に入ってすぐに単語が頭に入りやすく、テンポよく進めることができました。

なお、先に紹介した実験では、指タッピングに最適な時間は示されておりません。さすがに、5分間指を動かし続けるのは疲れるので、もう少し短い時間でいいかと思います。

ご自身がやりやすいかたちで、気軽にお試しください。

***
「集中できないのは、意志が弱いから」と思い込んでいませんか?

脳のコンディションが整っていなければ、誰でも同じように集中しにくいものです。勉強の前に、「脳を目覚めさせる」ためのルーティンを取り入れて、グーンと吸収力を高めましょう。

【ライタープロフィール】
上川万葉

法学部を卒業後、大学院でヨーロッパ近現代史を研究。ドイツ語・チェコ語の学習経験がある。司書と学芸員の資格をもち、大学図書館で10年以上勤務した。特にリサーチや書籍紹介を得意としており、勉強法や働き方にまつわる記事を多く執筆している。

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