「なんだかいつも疲れていてやる気が出ない」
「土日はほとんど寝て過ごしてしまった」
「仕事に集中できていない」
このように、仕事も休みも充実していないと感じているビジネスパーソンは、リフレッシュが足りていないのかも。一流の人ほど、上手に休んで、気力に満ちた状態で仕事に挑んでいるのですよ。
今回は、「瞑想」よりも気軽に行なえるリフレッシュ法「ながら瞑想」をご紹介します。
リフレッシュできないのはなぜ? 日本人は休むのが下手
外資系企業のトップとして、20年近く毎年増収増益を達成して活躍した吉越浩一郎氏によると、「日本人は休むのが下手」とのこと。日本のビジネスパーソンはあまり休まない――たしかに、耳にすることの多い話題ですよね。
日本では、2019年4月1日から、年5日の有給休暇の取得が義務づけられました。しかし、世界最大級の総合旅行サイト・エクスペディアの日本語サイト、エクスペディア・ジャパンの調査によると、日本人の有給休暇の取得率はいまだ低いのだそう。
世界19ヶ国18歳以上の有職者男女計11,144名を対象とした、有給休暇取得率の調査によると、日本は3年連続最下位の50%。また、「有給休暇の取得に罪悪感があるか」という質問に対しては、日本人の58%が「ある」と回答し、これは世界で最も高い割合なのだとか。
体力のリフレッシュができていないと、気力のリフレッシュが後回しになってしまう
吉越浩一郎氏は、日本人は、仕事で日々体力を削りすぎているため、メンタルがリフレッシュできていないと指摘します。
私は外資系企業で長く働き、欧州人の休暇の過ごし方を目の当たりにしてきました。(中略)特徴的なのは、彼らは日頃から残業をせず、効率的に働くことによって、体力を削り取るような働き方を元々していないこと。だから、週末には「頭を切り換える」、つまりメンタル面をリフレッシュするだけで、週明けからは心機一転、体力十分で仕事に臨めるのです。(中略)毎日の睡眠、そして週末や、平日に早めに帰宅した後の過ごし方が、一流と二流を隔てているといっても過言ではないかもしれません。
(引用元:東洋経済Online|事実!一流と二流は「休み方」に大差がある)
同氏によると、日本のビジネスパーソンは、日々の残業や飲み会によって睡眠が不足しているため、1日の疲れをリセットできていないのだそう。平日に疲れを溜め込むせいで、週末に寝すぎてしまい、メンタルをリフレッシュすることが難しくなるのですね。
「気力に満ちていて、仕事に集中できている人」になるためには、まずは平日の疲れをとることが大切なのです。
気力をリフレッシュするには瞑想が有効
平日に疲れを溜め込まず上手にリフレッシュするには、どうすればよいのでしょうか?
おすすめの方法は「瞑想」です。スピリチュアルなイメージや、得体が知れない印象を抱いている方もいるかもしれませんが、じつはたくさんのメリットがありますよ。
瞑想の効果1:免疫力の改善
長崎大学教育学部の前原由喜夫研究室の研究によると、瞑想には免疫機能を高める効果があるのだそう。マインドフルネスを中心としたプログラムを8週間行ない、インフルエンザワクチンの抗体を調べた実験では、マインドフルネスのトレーニングを行なったグループの抗体が増加するという結果が出ています。
瞑想の効果2:睡眠の質を上げる
アメリカ睡眠医学会によると、瞑想はストレスや不安を減少させ、不眠症の改善にも効果があるそうです。日中に深くリラックスすることで、夜間の睡眠の質を高めると考えられています。
瞑想の効果3:ストレスを軽減
瞑想には、ストレス軽減に加え、痛みの緩和や、うつ病の再発率を下げる効果などがあると言われています。アメリカでは精神医学の分野でも注目されており、投薬では改善されなかった患者の治療に瞑想が導入されるケースも増えているほど、効果が出ているのです。
瞑想の効果4:アイデア力の向上
「TEDxKyoto」でマインドフルネスに関するスピーツを行なったこともある妙心寺の川上全龍副住職によると、瞑想をすると、脳内の非認知能力を活性化する部分が刺激され、アイデアが浮かぶようになったり、思いやりの気持ちが強くなったりするそう。
瞑想が苦手な人におすすめな「ながら瞑想」
瞑想に効果があることがわかっても、瞑想という行為に苦手意識がある人もいるはず。そんな方に、手軽でおすすめな「ながら瞑想」をご紹介します。
お茶を淹れる時間を利用する瞑想
ロサンゼルス発祥のオーガニックティーブランド「Art of Tea(アートオブティー)」の創業者で、マスターティーブレンダーであるスティーブ・シュワルツ氏は、「8 Minute Digital Detox with Tea(お茶で8分間のデジタルデトックス)」を提唱しています。8分間、スマートフォンなどのデジタル機器から完全に離れて、お茶に集中することで、心の集中(マインドフルネス)を実行する、というものです。具体的には、以下の手順で取り組みます。
- お湯がくつくつと沸くのに耳をすます
- お気に入りの茶葉を選んで、茶葉がお湯の中で踊るのを観察する
- 五感を最大限に使って、お茶を淹れることに向き合う
8分ほど時間をかけて、お茶と向き合うことで、マインドフルネスを自然に実践することができますよ
ウォーキング瞑想
学会誌「American Journal of Health Promotion」は、110人の学生を対象に次のような実験を行ないました。
「10分間ウォーキングをした後に10分間瞑想を行なうグループ」と「10分間のウォーキングのみをするグループ」と「何もしないグループ」に分け、実践前と比べて学生の不安感がどの程度減ったかを計測。
すると、ウォーキングと瞑想を組み合わせたグループは、ウォーキングのみ、もしくは何もしなかったグループに比べ、不安感が減っていたのだとか。ウォーキングと瞑想に、不安を軽減する効果があることが証明されたのです。
また、ハーバード大学出身の精神病医で療法士のマリリン・ウェイ氏は、ウォーキングと瞑想の両方を行なう時間がない人に、その2つを同時にやる「ウォーキング瞑想」をすすめています。昼休みや通勤のときなどに、たった10分で実践できますよ。具体的なやり方は以下の通り。
- 腕はリラックスさせ、足が地面に触れているのを感じる
- リラックスしながら自然に呼吸する
- ゆっくりと急がずに歩く
- このとき、以下の感覚に注意を向ける
・後ろ足を蹴り上げたときの感覚
・前足のかかとが床をついて体重を乗せたときの感覚
・重心が移動し、次の足を前に出したときの感覚 - 感覚に注意を向け続ける
- その他の背中、腕、肩、胸、首などの感覚にも注意を向ける
このとき、外の音や、周りの人に注意を削がれても問題ありません。また、静かに足や体全体の感覚に注意を戻せばよいのです。ウォーキングなら気軽にできますし、習慣づけやすいですよね。
書く瞑想:ジャーナリング
ジャーナリングとは、自分の思っていることや感じていることを、ひたすらノートに書き出すというもの。「書く瞑想」とも呼ばれています。書くことで、嫌な物事や考えを頭の中に留まらせず、客観視できるようになる作用があるのです。そこから気づきや発見を得て、問題を解決することにも有効ですよ。実践のポイントは以下の通り。
- 決められた時間ひたすら書き続ける
- 頭で考えずに手を動かす
- 気をそらせるものがないプライベートな空間で行なう
- 脚色せず事実や気持ちをあるがままに書く
- 誤字や脱字を気にしない
ジャーナリングは、心を整えるマインドフルネスの一種として、その効果が認められています。学会誌『Psychotherapy Research』に掲載された論文によると、感情を紙に書き出すことによって不安感や抑うつ状態が大きく改善するのだそう。たとえば、以下のようなとりとめのない文章でもかまいません。
「朝の電車で思いっきり足を踏まれたのに謝られなかった。腹が立った。気に入っていた靴が汚れたし、足も痛いしで、今日はずっといらいらしていた。今日もA子がミスをした。いつもはそんなに気にならないA子のミスに腹が立ち、今日はA子を誘わずにひとりで昼食を食べた。余計に虚しくなった。A子が悲しんでたらどうしよう。明日はA子を誘って美味しいご飯を食べたい」
事実や感情を、あるがままに書くことが大切なのです。
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頑張りすぎて、つい休むことを忘れてしまうのは、高い目標に向かって頑張っているビジネスパーソンだからこそ陥りやすいところ。行き詰まりを感じたら、まずは睡眠をしっかりとり、体力を回復させてください。それから「ながら瞑想」を生活に取り入れ、気力を取り戻しましょう。
(参考)
Expedia|【世界19ヶ国 有給休暇・国際比較調査2018】 日本の有休取得率、有休取得日数、ともに世界最下位 「有給休暇の取得に罪悪感がある」と考える日本人は世界最多! 「上司が有給休暇の取得に協力的」と考える日本人は世界最少!
東洋経済Online|事実!一流と二流は「休み方」に大差がある
COCOKURI|【徹底解説】知って得する!マインドフルネス瞑想を続けると健康になれる理由3選
MYLOHAS|8分間でデジタルデトックス、お茶と対話する新習慣
日経電子版|書く瞑想、ジャーナリング 集中力高め仕事効率を改善
Study Hacker|「朝10分のノート習慣」が脳に最高なワケ。日記は “朝に3行だけ” つけなさい。
プレジデントオンライン|発想力をアップさせる「観察瞑想」のやり方
imidas|古来のメソッドにひそむストレス社会を生きるヒント
Psychology Today|New Study Finds Meditation With Walking Reduces Anxiety
【ライタープロフィール】
Yuko
ライター・翻訳家として活動中。科学的に効果のある仕事術・勉強法・メンタルヘルス管理術に関する執筆が得意。脳科学や心理学に関する論文を月に30本以上読み、脳を整え集中力を高める習慣、モチベーションを保つ習慣、時間管理術などを自身の生活に取り入れている。