かつては仕事を円滑にする「テクニック」とされていた行為が、時代の変化に伴ない、現在では否定されていることがあります。皆さんは、時代遅れの古びた「テクニック」を使ってはいませんか?
今回は、今では否定されつつある仕事のテクニックと、その改善案をご紹介します。
「ホウレンソウで情報共有」は古い
「報告・連絡・相談」の頭文字をとった「ホウレンソウ」は多くの人がご存じでしょう。この言葉は、1982年に当時の山種証券(現・SMBCフレンド証券)の山崎富治社長が発案したものとされ、多くの企業がモットーとしてきました。
しかし、株式会社ソニックガーデンの経営者で『管理ゼロで成果は上がる』(技術評論社)の著者でもある倉貫義人氏いわく、ホウレンソウは古いのだそう。
ホウレンソウが提唱された当時とは異なり、現在は情報を伝える手段であふれています。たとえば、Googleカレンダーを使えば社員間でスケジュールを共有できますし、SkypeやZoom、Slackを使えば、出社していない人や出張中の人ともミーティングができるでしょう。
このような時代に、わざわざ時間を割いて定例会議を開き、些細な事柄や進捗状況を順番に報告・連絡する……。独断専行が敬遠されがちな日本企業ならではの効率の悪さとも言えます。
倉貫氏が提唱するのは、ホウレンソウならぬ「ザッソウ」(雑談・相談)です。普段から雑談を交わしていれば、業務連絡だけでは生まれない信頼関係が生まれ、相談もしやすくなりますよね。なにげない雑談の内容が仕事のアイデアになることもあるでしょう。
定例会議などは自分の都合ではどうにもなりませんが、日頃から意識的に「雑談」をして、後輩に過剰な「報告・連絡」を要求しなくてもいいほど「相談」しやすい関係と環境を築くなど、「相談」に重きを置いた「ザッソウ」を心がけましょう。
「ToDoリスト」はデメリットが多い
ToDoリストとは、仕事を始める前に、あらかじめその日のタスクを書き並べるという簡易的な目標設定術。実践している方も多いのではないでしょうか。しかし、経営コンサルト業の福山敦士氏は、自著『成功する人は1年で成果を出してくる!』(三笠書房)の中で、ToDoリストに対して異議を唱えています。
ToDoリストのデメリットのひとつが、急なタスクが入ったときに柔軟に対処しづらい点です。ToDoリストを見ながら仕事をすることが習慣づいてしまった人は、リストに書いたタスクを予定通り消化することを優先しがちになります。そのため、たとえば突然「今日中に資料を送って」と頼まれても、リストに書いた内容を優先しがちになり、結果資料を送り忘れてしまうことも。
ほかにも、ToDoリストには、タスクの羅列が意欲をそぐ、各々の項目に対するはっきりとした時間設定ができない、取り組みやすそうなタスクを優先的に処理してしまうため、時間を要するタスクが消化されない……。といった問題点があります。
時間管理サービスのアプリを提供する「iDoneThis」の調査によると、ToDoリストに書かれた内容の約50%は1時間以内に実行される一方で、約41%はまったく実行されないのだそう。せっかくタスクを並べても、終わらなければ元も子もありませんよね。
富裕層、オリンピック選手、成績優秀な学生など、各界の成功者に対するインタビューを収録した『1440分の使い方 −成功者たちの時間管理15の秘訣』(パンローリング)によると、成功者の多くはToDoリストを使わず、カレンダー形式のスケジュール表を使っているそう。カレンダー形式を使えば、各項目の予定時間をあらかじめ決めることができ、1日の流れを視覚的に確認できるため、タスクの所要時間と残りの持ち時間も把握しやすくなります。
『1440分の使い方』では、1日のうち、2〜3時間程度の予備時間を設けておくことをすすめています。時間内に終わらなかったタスクや突然生じたタスクも、予備時間で実施することができるためです。綿密なスケジュールを立てても、実行されなければ意味はありません。タスクをこなしやすくする工夫が大切ですね。
「デスクに貼った付箋」は仕事の邪魔
通知が入ったときに気づけるよう、職場のデスクの上にスマートフォンを置いている方はいるかもしれません。また、仕事に必要な情報を付箋やポストイットに書き、デスクまわりに貼りつけている人も多いのではないでしょうか。
しかし『仕事を高速化する「時間割」の作り方』(プレジデント社)の著者・平野友朗氏によると、「スマートフォンの通知」「貼ってあるメモ代わりの付箋」は、「削るべき無駄なもの」だそう。
平野氏いわく、仕事中にスマートフォンや付箋の情報を一瞬でも意識してしまうと、注意力が散漫になり、作業の生産性が落ちるそうです。付箋などはデスクから取り除き、スマートフォンの画面が目に入らないようにするのが望ましいですね。
では、情報はどこにまとめたらよいのでしょうか。外資系コンサルティングファームで活躍する独立研究者 山口周氏は、読み終わった紙の資料や本は、次々と捨ててしまうと言います。山口氏は、紙の資料やメモなどは、気になる箇所のみアンダーラインを引いて写真を撮り、「Evernote」というデータ保存サービスに取り込んでいるのだそうです。
Evernote以外にも、「Dropbox」や「Googleドライブ」など、無料のデータ保存サービスは多々ありますよね。これらのサービスは、大容量のデータをまとめて管理できる・データを大人数で共有できる・複数のデバイスでデータが確認できるといったメリットがあります。ほかの社員とも簡単に資料を共有できるため、過剰なホウレンソウの削減にもつながりますね。
すでに、仕事でデータ保存サービスを使っている人も多いと思いますが、個人の情報整理にも活用してみてはいかがでしょう。今まで紙や付箋だらけだったデスクまわりが一気に整理され、仕事の生産性が上がるかもしれませんよ。
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時代の変化に伴い、働き方も日々変化し続けています。これまで「テクニック」とされていたものが本当に今も有効か、一度見直してみませんか?
(参考)
OLI Express|ビジネスの〜基本マナー〜ビジネスの「報・連・相」
倉貫義人(2019),『管理ゼロで成果はあがる ~「見直す・なくす・やめる」で組織を変えよう』, 技術評論社.
現代ビジネス|職場の「ホウレンソウ」は時代遅れ、会社は「ザッソウ」で強くなる
ダイヤモンド・オンライン| 「会議が多くて大変だ」とほくそ笑む管理職の本心
ケビン・クルーズ(2017),『1440分の使い方 −成功者たちの時間管理15の秘訣』, パンローリング.
ダイヤモンド・オンライン|仕事の速い人は、そもそも「TO DO化」をしない
STAGE|あなたの常識が非常識に?「TO DOリスト」はもう不要かもしれない
平野友朗(2017),『仕事を高速化する「時間割」の作り方』, プレジデント社.
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【ライタープロフィール】
亀谷哲弘
大学卒業後、一般企業に就職するも執筆業に携わりたいという夢を捨てきれず、ライター養成所で学ぶ。養成所卒業後にライター活動を開始し、スポーツ、エンタメ、政治に関する書籍を刊行。今後は書籍執筆で学んだスキルをWEBで活用することを目標としている。