誰にでも好不調の波があるもの。「本や参考書を読んでも、いまひとつ内容が頭に入ってこない」「勉強中に頭がぼーっとしてきて、効率の悪さを感じる」といったこともあるでしょう。
しかし、インプットの仕方を工夫すれば、その状況はだいぶ変わってくるはずです。その工夫とは、音読や黙読にもうひとアイデアを加えた学習法のこと。
本記事では、その「読む+アルファ」の方法を5つご紹介します。最近インプットがうまくいかないと感じている方は、ぜひご自身に合う勉強法を探してみてください。
- 1. 音読+「速めに読む」で学習効果アップ
- 2. 音読+「ジェスチャー」で学習効果アップ
- 3. 音読 or 黙読+「要約」で学習効果アップ
- 4. 黙読+「人に教えるつもり」で学習効果アップ
- 5. 音読+「会話形式」で学習効果アップ
1. 音読+「速めに読む」で学習効果アップ
音読には、読む・聞く・話すといった活動が含まれているため、学習効果の向上が期待できます。なぜならば、それが脳をより働かせるからです。
脳内科医の加藤俊徳氏によれば、「音読」は複数の脳領域が同時に働く効果を活かした勉強法のひとつ。だからこそ、記憶を定着させる助けになると加藤氏は伝えてます。*1
ただし、音読するならちょっと速く読むのがおすすめです。
明治大学文学部教授の齋藤孝氏は、文字をひとつひとつしっかりと声に出し、速めに読むことで、知性をつかさどる前頭葉がよく働くと言います。なぜならば、そうすることで目では先の箇所を読み、発声は少し前の箇所を追いかけて読むかたちになり、目と口が別々の動きをするようになるからです。*2
つまり、ただでさえ脳全体を刺激する音読を、しっかりとした発声で速めに行なえば、知性をつかさどる脳領域も刺激することができるわけです。
音読の際には、ぜひこのプラスアルファを心がけてみてください。
2. 音読+「ジェスチャー」で学習効果アップ
いつも話すときに身振り手振りを加える人は、音読の際にもジェスチャーを加えることで、理解力が強化される可能性があります。
単純に考えても、内容に応じたジェスチャーをしようとすれば、まずその内容を理解しようとするはず。さらに、長岡工業高等専門学校の2019年の研究では、ジェスチャーが音読中の文章理解を促進することが示されました。
ただし、いつもジャスチャーしない人が、ジェスチャーを求められると、むしろ音読時の理解度が低下したといいます。*3
ですから、「そう言えば、いつも自分は身振り手振りしながら話しているなぁ」「よく人に『ジェスチャー多いね』と言われる気がする」という方にかぎり、ぜひこの音読+「ジェスチャー」を取り入れてみてください。
3. 音読 or 黙読+「要約」で学習効果アップ
また、音読でも黙読でも、その際に読んだ内容を自分の言葉で短くまとめると、理解度が強化されるはずです。
文章を読む際の要約作業が、読解にどう影響するか調べた研究の抄録には、「要約作業が読解において果たす役割は積極的に文章に働きかけることによって一連の読解のプロセスを促進することである」と記されています。*4
ですから、たとえば音読もしくは黙読したあと、要点を箇条書きにしてみたり、1分程度で簡単に口頭で説明してみたりするのはいかがでしょう?
そうすれば、自分で情報を整理し直すプロセスが付加され、文章の構造や重要なポイントがより明確に理解できるのではないでしょうか。また、箇条書きなどの視覚化は、記憶の定着にもつながるはずです。
4. 黙読+「人に教えるつもり」で学習効果アップ
もしも音読が苦手、もしくは音読できない場所にいる方は、人に教えるつもりで黙読してみるといいかもしれません。そうすることで、記憶の定着を助けてくれるはずです。
前出の加藤氏は、音読しづらい環境下で読んだ内容をしっかりと記憶に残したいときは、「この後、読んだ内容を別の誰かに説明する」といった前提をつくり読んでみるようアドバイスしています。*1
ちなみに、明治大学法学部教授の堀田秀吾氏は、あとで誰かに教えるつもりが効果的な理由を次のように述べています。*5
それを意識すれば、より緊張感や集中力、注意深さを持って学んだり、深堀りしたりします。また、「忘れると教えられない!」という緊張感が、短期記憶にも強く作用し、さらに長期記憶にしっかりと移行させる必要性を脳に実感させるのでしょう。
したがって、本や参考書を読むときは、あとでその内容を教える誰かを想像し、その人に教えることを意識しながら読んでみてください。そうすることで、自然と集中力が高まり、理解も深まり、記憶にも残りやすくなるはずです。
5. 音読+「会話形式」で学習効果アップ
最後は、筆者の実践から生まれた方法です。
これまでの内容をふまえ、筆者も「音読+速めに読む+人に教えるつもり」の組み合わせを実践してみることにしました。そのとき、実際に教える工程もあるといいのではないかと考え、自分に質問し、それに答えるかたちも加えてみたのです。
簡単に説明すると、こんな感じです。
- 【ステップ1】:あとで他者に教えるつもりで、しっかりと発声し、ある程度速めに音読。
- 【ステップ2】:読んだ内容について自分に質問し、それに答える。
- 【ステップ3】:うまく言えなければ1と2を繰り返す。
言うなれば、読みながらチェックテストを行なっているようなものですが、この会話形式の繰り返しが、ステップ1の「あとで他者に教えるつもり」を強化すると気づきました。
――と、言うよりは、「次は聞かれたらちゃんと答えたい」という気持ちがモチベーションを高めたので、「あとで答えるつもり」が強化されたという感じでしょうか。
いずれにせよ、この会話形式もおすすめです!
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今回ご紹介した方法は、音読や黙読にさまざまな工夫を加えることで、学習効果を大きく高めるアイデアを集めたものです。ひとつひとつはシンプルな工夫ですが、組み合わせることで記憶力や理解力が格段に向上するはずです。ぜひ、これらを試して自分に合った学び方を見つけてみてください!
*1: PRESIDENT Online|いちばんのオススメは音読だが…声の出せない環境でも定着率を高められる"脳科学的な記憶術"
*2: HugKum|齋藤 孝先生に聞く「音読」のスゴい効果。子どもの集中力や語彙力、自己肯定力まであがる!?
*3: CiNii Research|音読と黙読に与えるビートジェスチャーの役割
*4: J-STAGE トップ|文章の読解に及ぼす要約作業の効果
*5: PRESIDENT Online|10分間散歩した後、誰かに教えるつもりで、手書きでノートにまとめると、絶対に忘れない
こばやしまほ
大学では法学部で憲法・法政策論を専攻。2級FP技能検定に合格するなど、資格勉強の経験も豊富。損害保険会社での勤務を通じ、正確かつ迅速な対応を数多く求められた経験から、思考法やタイムマネジメントなどの効率的な仕事術に大変関心が高く、日々情報収集に努めている。