
「あの人、頭はいいんだけど、話がわかりづらい……」
職場でこんな言葉を耳にしたことはないでしょうか。もしかすると、これはあなた自身のことかもしれません。
じつは「知識がある人」ほど、説明が伝わらなくなるという落とし穴があります。せっかく専門的な知識を持っているのに、それを相手に伝える力が足りず、誤解されたり、関心を持たれなかったりする。このケース、ちょっとした工夫で改善することが出来るのです。
この記事では、そんなもったいない状況から抜け出すために、 「知識はあるのに、伝わらない人」が陥りがちな話し方のクセと、今日からできる改善策をご紹介します。あなたの知識を「伝わる力」に変えましょう。
問題点① 話の「結論」が見えない
「えっと、つまり何が言いたいの?」
説明している最中に、相手にこんな顔をされた経験はありませんか? これは、話の「結論」が相手に見えていないからです。
知識が豊富な人ほど、背景や経緯を丁寧に説明しようとしがちです。その結果、話が枝葉に広がり、聞き手が本題にたどり着けないまま、情報だけが次々と押し寄せてしまうのです。
たとえば、新しいプロジェクトの企画について説明する場面を想像してみてください。
NG例
「この企画の背景には、昨今の市場動向の変化がありまして、特に消費者のニーズが多様化している点が挙げられます。昨年実施したアンケート調査では~」
話し手は丁寧なつもりでも、聞き手にとっては「それで、結局何が言いたいの?」と疑問が頭に残ったまま置いてけぼりになります。
改善策|まずは「結論」から話す
情報が多いからこそ、まず結論を提示し、全体の「地図」を共有しましょう。ビジネスや教育現場で広く使われる「PREP法」が効果的です。
「PREP法」では以下のフレームワークを使って、順番に情報を伝えていきます。
- Point | 結論
- Reason | 理由
- Example |具体例
- Point | まとめ
シンプルな構造ですが、相手は迷子にならずに情報を受け取りやすくなります。
先ほどのプロジェクト企画で話し方を考えてみましょう。
OK例
「今回の提案は、〇〇を導入することです。
その理由は、多様化するニーズへの対応と差別化の実現が必要だからです。
具体的には、〇〇という取り組みを予定しています」
このように、最初に結論を明確にすることで、聞き手は「ああ、この話は〇〇の提案なんだな」と理解し、「なぜ」「どのように」という説明を集中して聞くことができるようになります。
これは、プレゼンテーションだけでなく、日々のちょっとした報告や連絡においても意識することで、相手にとって非常にわかりやすい説明になります。

問題点② 前提を共有しないまま「専門用語」に頼る
説明の途中で、「……それってどういう意味ですか?」「ちょっと専門的すぎて、ついていけないのですが……」といった反応を受けたことはありませんか?
知識がある人は、専門用語や業界用語に慣れきってしまい、それが「共通言語」ではないことに気づきにくくなります。
たとえば、以下の例を見てみましょう。
NG例
「今回のシステムは、マイクロサービスアーキテクチャを採用しており、RESTful API経由で外部連携することで ~」
→ ITに詳しくない人からすると、まるで呪文のように聞こえるはずです。
改善策|「翻訳」と「比喩」で理解のハードルを下げる
専門用語から共通言語への「翻訳」と、イメージしやすくなる「比喩」で理解のハードルを下げることで、格段に相手に伝わりやすくなります。
- 相手が知らない言葉は、できるだけ一般語に置き換える。
- それが難しければ、比喩や例え話を活用する。
- 会話の冒頭で「〇〇ってご存知ですか?」と確認するのも有効。
先ほどのITの例なら、こんな風に言い換えられます。
OK例
「このシステムは、小さな部品を組み合わせるような作り方をしています。たとえば、レゴブロックみたいに、必要な部分の組み替えや、壊れた部分だけを柔軟に直せるので、コストも下がるんです」
専門的な話でも、「そういうことか!」と腑に落ちれば、相手の理解度と納得度は一気に高まります。
相手の目線に立って、「この人はどこまで知っているだろう?」「どうすれば一番分かりやすく伝わるだろう?」と常に考える意識が重要です。

「全部言いたい」が引き起こす情報過多
「せっかく話すなら、すべてを伝えたい」
「この話にはいろんな背景があるから、きちんと説明したい」
知識が豊富な人ほど、この欲求に駆られます。しかし、聞き手には話の要点が非常にわかりづらいです。要点を絞って伝えることが重要なのです。
『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』の著者である山口拓朗氏も、「情報伝達のステップで最も大事なことは、伝える情報の絞り込みだ」と述べ、「要約力」の高い人は、急に話をふられたときでも、沈着冷静に対応し、最適なアウトプットを実行することができると説いています。*1
知識を「伝わる力」に変えるトレーニング
では、どうすれば「伝わる話し方」は身につくのでしょうか?
ここからは、誰でも実践できるトレーニングを紹介します。
トレーニング①「〇〇を30秒で説明する」習慣
複雑な内容でも、とにかく短く説明する練習を繰り返しましょう。
たとえば、「〇〇とは?」などの大人でも難しいテーマがあったとして、それを30秒で、しかも小学生に説明するつもりで話すのがポイントです。
伝わる話し方の3原則
- ✔︎ 比喩を使う
- ✔︎ 要点をひとつに絞る
- ✔︎ 結論から話す
この練習は、思考の整理力と情報の抽出力を同時に鍛えられます。
トレーニング②「壁打ち相手」をつくる
実際に誰かに自分の説明を聞いてもらい、フィードバックをもらうことも非常に有効です。
フィードバックをもらうコツ
- ✔︎ 家族や友人に「どこがわかりにくかった?」と聞いてみる
- ✔︎ 同僚や上司に「理解しづらい部分がありましたか?」と確認してみる
自分では気づけない「話し方のクセ」を、他者の視点で見つけてもらい、ぜひ改善に活かしてみてください。

実践の「小さな一歩」から始める
ここまで読んで「なるほど」と思っても、実際に話し方を急に変えることは難しいと感じるかもしれません。大切なのは、完璧を目指さず、小さな成功体験を積み重ねることです。
今日から始められる3つのステップ
- ✔︎ まずは1日1回、結論から話すことを意識する
- ✔︎ 相手の反応を観察する
- ✔︎ 失敗を恐れない
変化は一朝一夕には起こりません。しかし、意識的に練習を続けることで、必ず「伝わる人」へと変わっていきます。
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話し方を変えるだけで、相手にぐっと伝わりやすくなります。あなたの知識は誰かを動かす力になるはずです。その最初の一歩として、本記事を参考にできることから試してください。
*1: 日本実業出版社|話がまとまらない人と「要約上手」の決定的な差
橋本麻理香
大学では経営学を専攻。13年間の演劇経験から非言語コミュニケーションの知見があり、仕事での信頼関係の構築に役立てている。思考法や勉強法への関心が高く、最近はシステム思考を取り入れ、多角的な視点で仕事や勉強における課題を根本から解決している。