凹む・調子に乗る・言い返す――よくいる3タイプの部下への世界標準フィードバック

安田さん

1990年代〜2000年代にかけては、バブル崩壊後の就職氷河期や働き方の幅の拡大、グローバル化、IT・情報化の進展などを経て、「個性」や「自分らしさ」が社会的なキーワードとして定着しました。そしてさらに時を経て「多様性の時代」となったいま、部下に対するマネジメントの手法にも多様性が求められています。複数の外資系企業で主に人事畑を歩んできた安田雅彦さんに、「よくいる部下」のタイプ別にフィードバックのコツを聞きました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)

【プロフィール】
安田雅彦(やすだ・まさひこ)
1967年生まれ、愛知県出身。株式会社We Are The People代表取締役、株式会社フライヤー社外取締役、ソーシャル経済メディア「NewsPicks」プロピッカー。1989年に南山大学卒業後、西友にて人事採用・教育訓練を担当、子会社出向の後に同社を退職し、2001年よりグッチグループジャパン(現ケリングジャパン)にて人事企画・能力開発・事業部担当人事など人事部門全般を経験。2008年からはジョンソン・エンド・ジョンソンにてSenior HR Business Partnerを務め、組織人事や人事制度改訂・導入、Talent Managementのフレーム運用、M&Aなどをリードした。2013年にアストラゼネカへ転じた後に、2015年5月よりラッシュジャパンにてHead of People(人事統括責任者・人事部長)を務める。2021年7月末日をもって同社を退職し、自ら起業した株式会社We Are The Peopleでの事業に専念。現在、約30社のHRアドバイザー(人事顧問)を務める。著書に『自分の価値のつくりかた』(フォレスト出版)がある。

Goodを先に、Motto(改善点)をあとに

上司が部下をマネジメントするにあたっては、以前にも増して「相手に応じたフィードバック」の重要性が高まっています。その背景にあるのは、部下を取り巻く環境の変化です。いまの職場には、新卒だけでなく中途入社のメンバーや異業種からの転身組など、経歴も前提も異なる人材が集まっています。世代や経験の幅が広がったことで、仕事に対する姿勢やキャリアの描き方も一様ではありません。

こうしたことを踏まえると、性格など個々がもともともつ個性だけでなく、働き方への価値観や成長に向けたスタンスのちがいも理解する必要が出てきます。だからこそマネージャーは、一律の方法ではなく、部下ごとに響くフィードバックの仕方を選び取ることが欠かせなくなっているのです。

そこで、ここでは部下のタイプ別にフィードバックのコツをお伝えします。ただ、本来であれば個人それぞれに使いわけなければいけないですから、あくまでも以下のような「よくいるタイプ」に絞って解説しましょう。

【よくいる部下 3タイプ】
①凹みがちな部下
②自己評価が高過ぎる部下
③一言うと百返してくる部下

みなさんのまわりにも「①凹みがちな部下」がひとりはいるのではないでしょうか。そのような部下に対するフィードバックのコツは、「Goodを先に、Motto(改善点)をあとに」ということに尽きます。これは、ガールズグループ・NiziUをプロデュースしたJ.Y.Park氏の言葉ですが、マネジメントの鉄則にも見事に合致しています。

凹みがちな部下は、最初に「ここはまずかったな、こうしたほうがいいと思うよ」と改善点をいわれると、その時点でショックを受けてそのあとの言葉が心に届かなくなってしまいます。だからこそ、改善点を伝えるにもまずはよかった点から伝えるのです

「今回のプレゼン、いつもの分析力の高さがしっかり効いていてすごくよかったね」「ただひとつだけ言うと、やっぱりちょっと長かったかもしれないから、もう少しコンパクトにまとめられるともっといいかもね」というように先に承認欲求を満たしてあげれば、改善点についても「よし、この点を直せばいいのだな」と素直に受け止めてくれます

新入社員に教えている女性スタッフ

評価をサプライズにするのはご法度

続いては、「②自己評価が高過ぎる部下」です。このタイプには、とにかく高頻度でフィードバックをすることを心がけてください

日本企業のマネージャーの多くはプレイングマネージャーということもあり、部下がなんらかの確認や相談をしてきても、忙しさから「わかった、それでいいよ」と流してしまうケースも見受けられます。

でも、フィードバックとは、「『期待されているあなた』と『実際のあなた』の差分を示し、その差分を埋めていくことを成長の機会としてとらえさせること」なのです。ですから、もし部下の仕事ぶりと「期待」とのあいだに差分が見られるなら、それをきちんと指摘しなければなりません。

そうであるにもかかわらず、「わかった、それでいいよ」と言われ続けると、それこそ自己評価が高い部下であれば、「今期はSとまではいわないけれどA評価をもらえるかも」と期待を膨らませます。ところが、評価面談の場になった途端に「ここはこうしてほしかった」というように後出しで改善点を伝えると、「何度も確認したのに、そんなこと一度も言ってなかったじゃないか」と反感を買うのは目に見えています。

つまり、評価をサプライズにするのはご法度だということです。もちろんこれは、自己評価が高いかどうかを問わずすべての部下に対する原則ですが、とくに自己評価が高い部下にはより徹底しておかなければなりません。

自信満々のビジネスマン

「必要な対立」を避けてはならない

最後にとり挙げるのは、「③一言うと百返してくる部下」です。つまり、上司がなにか言うといちいち言葉を返してくる口が達者なうるさ型の部下です。

このような部下と論争になった場合、「余計ないざこざはごめんだ」と避けたくなることもあるかもしれませんが、それは悪手です。世の中には「必要な対立」というものもあり、それを避けてばかりいては本質的な解決にたどり着かないからです。部下からすると、不満を抱えたままとなってモチベーションは大きく低下していくでしょう。くすぶった状態を放置していては、いずれ大きな火種になってしまいかねません。

ですから、論争となったらきちんと論争をしてください。そうして議論したうえで部下が納得してくれるに越したことはありませんが、もし部下がいつまでも納得しないという場合には、「私が上長なのだから、きちんということを聞いてもらわなければならない」と、最後はポジションパワーを活用することを考えてもいいと思います。

なぜなら、そうすることで組織秩序が守れるからです。「悪法も法なり」ではないですが、マネージャーも部下も同じ会社組織に属して働く以上、その秩序を崩すようなことは絶対に許されないのです。

繰り返しになりますが、多様性の時代に部下を育てるには、一律の指導ではなく相手に合わせた伝え方を選ぶ視点が欠かせません。タイプごとの特徴をつかみ、適切なフィードバックを積み重ねることが、部下の成長とチーム全体のパフォーマンス向上につながります

安田さん

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【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)

1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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