
構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)
【プロフィール】
山口拓朗(やまぐち・たくろう)
1972年生まれ、鹿児島県出身。伝える力【話す・書く】研究所所長、インタビュアー、山口拓朗ライティングサロン主宰。出版社で編集者・記者を務めたのち、ライター&インタビュアーとして独立。年齢、性別、職種を問わず、27年間で3800件以上の取材・執筆歴がある。現在は、執筆や研修を通じて「言語化」「質問力」「文章力」「読解力」「要約力」「傾聴力」など実践的なビジネススキルを提供。2016年からアクティブフォロワー数400万人の中国企業「行動派」に招聘され、北京ほか6都市で「Super Writer養成講座」を23期開催。中国、台湾、韓国など海外でも25冊以上の著書が翻訳されている。10万部を突破した『「うまく言葉にできない」がなくなる 言語化大全』(ダイヤモンド社)、『読解力は最強の知性である』(SBクリエイティブ)、『思い通りに速く書ける人の文章のスゴ技BEST100』(明日香出版社)など著書多数。最新刊は2025年12月発売の『12歳までに身につけたい「ことば」にする力 こども言語化大全』(ダイヤモンド社)。
基本のフレームワーク「5W4H」で問う
私は、「質問力」に着目してさまざまな場でその重要性を説いています。なぜ質問にそこまでこだわるのかといえば、「質問とは仕事そのものだ」ととらえているからです。
なんらかのプロジェクトに携わったなら、「このプロジェクトの最終的な目的はなにか?」「いつまでに完遂すればいいか?」「予算はいくらか?」「どのようなスタッフをアサインすべきか?」など、問うべきことは枚挙にいとまがありません。
しかし、必要な問いを立てることができなければどうなるでしょうか? 予算や期限はおろか、プロジェクトの最終的な目的すら把握できていないということにもなれば、プロジェクト成功の可能性は大きく低下するはずです。仕事とは質問の連続です。だからこそ、質問力が成果に直結する重要な力だととらえているのです。
もちろん、疑問をもたずとも、指示された仕事を淡々とこなすことならできるかもしれません。でも、AIが台頭してきたいま、そうした受動的な仕事はあっという間にAIに奪われていくでしょう。これからの時代を考えれば、自ら主体的、能動的に問いを立てていき、その問いをどんどんAIにぶつけるような積極的な姿勢が求められるはずです。
そして、仕事において成果につながる質問の基本となるのが、以下の「5W4H」というフレームワークです。
Where :どこで/どこに/どこから(場所・位置)
Who :誰が/誰に(主体者・対象者・担当・役割)
What :なにを/なにが(テーマ・目標・内容・課題)
Why :なぜ/どうして/なんのために(目的・理由・根拠・原因・動機)
How :どのように/どうやって(方法・手段・手順・プロセス)
How many :どのくらい(数量・頻度・程度)
How long :どのくらい(時間の長さ・期間)
How much :いくら(価格・費用・予算)
これらは、ものごとを多角的にとらえるための基本視点であり、質問の場面で有効に活用できます。これらを意識しておけば、自分の思考を整理する場面では必要な問いを網羅できますし、相手に問う場面ではわかりやすく的確な質問をできるようにもなるでしょう。
「5W1H」や「5W2H」を知っている人は多いと思いますが、こと仕事においては予算や期限なども不可欠な要素ですから、私は「5W4H」をおすすめします。

どんな場面でも「質問の目的」を見失わない
ただ、質問に関しては注意事項も存在します。とくに注意が必要なのは、部下をもつリーダーの立場にある人です。部下がミスをしたような場面では、リーダーとしてその原因を探り、改善策を講じなければなければなりません。
ただし、「どうしてこんなミスが起きた?」といった質問は、あまりおすすめできません。いい方を誤れば、相手を責めるニュアンスが強めに出てしまうからです。「このミスについてはどう説明するつもりだ?」という言葉に至っては、もはや質問ではなく、詰問、尋問、糾弾といえるものです。そんなことでは部下は萎縮してしまい、本来の目的である原因の特定から遠ざかることになるでしょう。
ですから、質問の目的を見失うことは絶対に避けなければなりません。このケースであれば、質問の目的は部下を責めることではなく、ミスが起きた原因を探ることであり、端的にいえば事実確認です。よって、余計な感情は排除し、いつもと変わらないトーンで「今回のミスが起きたのはなぜだと思う?」と聞けばいいだけのことです。
このことは、長期的に見てリーダーのためになることでもあります。責めるような質問により部下を精神的に支配するような関係になれば、その部下は自ら考えることを放棄し、「勝手なことをやったら怒られる」と受動的な姿勢に染まりかねません。すると、思考停止状態となり、成長を止めてしまうのです。自走しない人材が増えるだけなのですから、チームの生産性は低下していく一方でしょう。
もちろん、ケースによっては部下を叱らなければならないこともありますが、少なくとも事実確認の場とはわけて考えることが肝要です。

「言った・言わない」問題を防ぐ「言質取り質問」
上司:「それなり」とは、具体的に何名くらいを想定していますか?
部下:最低でも250名、多ければ300名以上かと思います。
上司:最低でも250名は確保できるわけですね。
部下:はい、確保できるよう努めます。

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清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
