
2025年、JR東日本のSuicaのペンギンが“卒業”するというニュースが話題になりました。
生活風景の一部として長いあいだ見続けてきた人にとっては、小さな喪失感すらある出来事かもしれません。ネットにはSuicaのペンギン卒業を報じる記事があふれ、SNSはSuicaペンギンの卒業を惜しむ声で満ちました。
しかし、この「Suicaのペンギンの卒業」を耳にしたとき、不思議に思いませんでしたか? なぜ彼(彼女)は、こんなにも長く「東京の日常」に溶け込むことができたのでしょうか。
そして、この問いはそのまま「学習が続く仕組み」を考えるヒントになります。
- Suicaのペンギンは「地味」だった
- 「熱狂」ではなく「日常」「インフラ化」で勝った
- “続ける人”は、学びを「生活に埋め込んでいる」
- Suicaペンギンに学ぶ「インフラ化のデザイン」5つ
- インフラを継続させる環境設計を
Suicaのペンギンは「地味」だった

Suicaのペンギンは、いわゆる“爆発的ヒット”型キャラクターではありません。
誕生したのは2001年、販促ツールなどに登場したのが最初です。絵本作家・坂崎千春さんの作品から“抜擢”されたキャラクターで、Suicaを使う人の“分身”のような存在を企図されたため、名前はなく、性別もありません。
2001~2003年に販売された複数の記念カードにペンギンが登場し、徐々に人気を博すようになっていきました。一般用Suica券面に印刷されるようになったのは2003年のことでした。
「熱狂」ではなく「日常」「インフラ化」で勝った

とはいえ、2003年当時、現在の愛され方に比べれば、やはりそこまで熱狂的に受け入れられていたわけではなく、どちらかと言えばやはり地味な存在でした。それが、ここまで愛されるようになったのは、インフラ化されていたからだと考えられます。
人は、必ず触れる場所に存在するものに対して、自然と親しみや信頼を感じるようになります。 単純接触効果が静かに働くからです。認知心理学の「スキーマ形成」と同じ効果だとも言えるでしょう。
Suicaのペンギンは、インフラ化し静かな接触を積み重ねたことによって、東京の“生活の背景”として定着していったのです。
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“続ける人”は、学びを「生活に埋め込んでいる」
ここから学べることは、学習を「特別なイベント」ではなく「生活のインフラ」にすべきということです。学習を続けられる人は、大なり小なり、学ぶ環境をインフラ化し、継続しやすくしているという共通点があるのです。
▶「机に向かう」ではなく「そこに机があるからやる」
特別な気合いや意志力ではなく、“そこにあるから自然とやる”状態にすることが重要だ、ということです。
- 朝の決まった席
- いつも開くアプリ
- 手の届く位置にある参考書
- 習慣的に開くメモアプリ
- 電車に乗ったら自動的に英単語テストを開いてしまう流れ
これらはすべて、意志力ではなく環境を味方につける方法です。
行動科学では、行動は 「モチベーション × 能力 × きっかけ」の掛け算で生まれると言われています。*1
Suicaのペンギンが日常の至るところに配置されていたのは、この「きっかけ」を無限に用意していた状態そのものだと言えるのですね。
そして学習も、“毎日の動線に小さなきっかけを埋め込む”ことで続けやすくなるのです。
もっと知りたい👉 「フォッグ行動モデル」|独学を継続できる人の3つの習慣。ひとりで勉強しても挫折しないコツは○○だった
Suicaペンギンに学ぶ「インフラ化のデザイン」5つ

では、Suicaのペンギンの“日常への埋め込み方”をヒントに、学習をインフラ化する具体的なステップを考えてみましょう。
①「よく通る場所」に学習トリガーを置く
- 朝の机に必ずノートを開いた状態で置く
- スマホのホーム画面1列目に学習アプリを固定
- 風呂場やトイレに暗記カードを貼る
- ブラウザの新規タブを教材サイトにする
▶ 必ず視界に入るものは“誘導灯”になる。
② 学習を“ルーティンの一部”にしてしまう
Suicaをかざす時にペンギンが見えるように、「行動 Aをすると自動的に学習が始まる」状態を作る。
- 朝コーヒーを入れたら英単語10個
- 帰宅して靴を脱いだらニュース英語を1本
- 電車に乗ったら読書アプリを開く
▶これらは、フォッグ行動モデルでいう「きっかけ」を仕組みに変えた形です。一種の「if-then」とも言えるかも。
③ 学習に“距離ゼロ”の設計をする
Suicaペンギンは、改札を通るたびに目に入ります。「距離ゼロ」の位置に存在していたわけです。
学習も、
- 参考書が机の引き出しにある → ×
- 参考書が机の上にある → ○
▶ たったこれだけで、手を伸ばす確率が跳ね上がります。
④ “やらない理由を排除する”環境を作る
インフラは、使うのに負担がないから機能します。
- 家の中の学習スペースを1カ所に固定
- 文房具や資料を常に同じ場所に置く
- よく使う教材はPDF化してスマホで開けるようにする
▶ 使うまでの手間を減らすほど、行動は自動化に近づきます。
⑤ 小さな達成の積み重ねを“見える化”する
Suicaの利用履歴を見ると、毎日「かざした」記録が残ります。学習にも同じように、小さな積み重ねを可視化すると、「続いている」感覚が強化されます。
- 勉強アプリの継続日数を表示
- 毎日の学習量を10秒でメモ
- 月ごとに達成したことを記録する
▶人は“続けられている自分”を目にすると、さらに行動を続けやすくなるからです。
インフラを継続させる環境設計を
Suicaのペンギンは、静かに無理なく「そこにいる」ことで、広く、長く愛される存在として定着しました。
学習においても同じことが言えます。続ける人は、努力を“表舞台”に置きません。
努力を“生活の裏側”に配置します。
- 意志力ではなく環境
- やる気ではなく設計
- 気合ではなく動線
- 主役ではなく背景
そうした“環境の設計”こそが、学習を続ける最大の戦略ではないでしょうか。Suicaのペンギンの卒業を契機に、あなたも学習環境の設計を見直してみましょう。
*1 Stanford University, Behavior Design Lab|Fogg Behavior Model
STUDY HACKER 編集部
「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。運営は、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を手がける株式会社スタディーハッカー。