Suicaのペンギンが教える、学びを続けるための「インフラ化」戦略

Suica

2025年、JR東日本のSuicaのペンギンが“卒業”するというニュースが話題になりました。

生活風景の一部として長いあいだ見続けてきた人にとっては、小さな喪失感すらある出来事かもしれません。ネットにはSuicaのペンギン卒業を報じる記事があふれ、SNSはSuicaペンギンの卒業を惜しむ声で満ちました。

しかし、この「Suicaのペンギンの卒業」を耳にしたとき、不思議に思いませんでしたか? なぜ彼(彼女)は、こんなにも長く「東京の日常」に溶け込むことができたのでしょうか

そして、この問いはそのまま「学習が続く仕組み」を考えるヒントになります。

Suicaのペンギンは「地味」だった

JR東のリリースの抜粋

2025年11月11日のJR東日本のリリースより抜粋

Suicaのペンギンは、いわゆる“爆発的ヒット”型キャラクターではありません。

誕生したのは2001年、販促ツールなどに登場したのが最初です。絵本作家・坂崎千春さんの作品から“抜擢”されたキャラクターで、Suicaを使う人の“分身”のような存在を企図されたため、名前はなく、性別もありません。

2001~2003年に販売された複数の記念カードにペンギンが登場し、徐々に人気を博すようになっていきました。一般用Suica券面に印刷されるようになったのは2003年のことでした。

「熱狂」ではなく「日常」「インフラ化」で勝った

JRの改札

とはいえ、2003年当時、現在の愛され方に比べれば、やはりそこまで熱狂的に受け入れられていたわけではなく、どちらかと言えばやはり地味な存在でした。それが、ここまで愛されるようになったのは、インフラ化されていたからだと考えられます。

人は、必ず触れる場所に存在するものに対して、自然と親しみや信頼を感じるようになります。 単純接触効果が静かに働くからです。認知心理学の「スキーマ形成」と同じ効果だとも言えるでしょう。

Suicaのペンギンは、インフラ化し静かな接触を積み重ねたことによって、東京の“生活の背景”として定着していったのです。

“続ける人”は、学びを「生活に埋め込んでいる」

ここから学べることは、学習を「特別なイベント」ではなく「生活のインフラ」にすべきということです。学習を続けられる人は、大なり小なり、学ぶ環境をインフラ化し、継続しやすくしているという共通点があるのです。

▶「机に向かう」ではなく「そこに机があるからやる」

特別な気合いや意志力ではなく、“そこにあるから自然とやる”状態にすることが重要だ、ということです。

  • 朝の決まった席
  • いつも開くアプリ
  • 手の届く位置にある参考書
  • 習慣的に開くメモアプリ
  • 電車に乗ったら自動的に英単語テストを開いてしまう流れ

これらはすべて、意志力ではなく環境を味方につける方法です。

行動科学では、行動は 「モチベーション × 能力 × きっかけ」の掛け算で生まれると言われています。*1

Suicaのペンギンが日常の至るところに配置されていたのは、この「きっかけ」を無限に用意していた状態そのものだと言えるのですね。

そして学習も、“毎日の動線に小さなきっかけを埋め込む”ことで続けやすくなるのです。

Suicaペンギンに学ぶ「インフラ化のデザイン」5つ

勉強しているデスクのうえ

では、Suicaのペンギンの“日常への埋め込み方”をヒントに、学習をインフラ化する具体的なステップを考えてみましょう。

①「よく通る場所」に学習トリガーを置く

  • 朝の机に必ずノートを開いた状態で置く
  • スマホのホーム画面1列目に学習アプリを固定
  • 風呂場やトイレに暗記カードを貼る
  • ブラウザの新規タブを教材サイトにする

▶ 必ず視界に入るものは“誘導灯”になる。

② 学習を“ルーティンの一部”にしてしまう

Suicaをかざす時にペンギンが見えるように、「行動 Aをすると自動的に学習が始まる」状態を作る。

  • 朝コーヒーを入れたら英単語10個
  • 帰宅して靴を脱いだらニュース英語を1本
  • 電車に乗ったら読書アプリを開く

▶これらは、フォッグ行動モデルでいう「きっかけ」を仕組みに変えた形です。一種の「if-then」とも言えるかも。

③ 学習に“距離ゼロ”の設計をする

Suicaペンギンは、改札を通るたびに目に入ります。「距離ゼロ」の位置に存在していたわけです。

学習も、

  • 参考書が机の引き出しにある → ×
  • 参考書が机の上にある → ○

▶ たったこれだけで、手を伸ばす確率が跳ね上がります。

④ “やらない理由を排除する”環境を作る

インフラは、使うのに負担がないから機能します。

  • 家の中の学習スペースを1カ所に固定
  • 文房具や資料を常に同じ場所に置く
  • よく使う教材はPDF化してスマホで開けるようにする

使うまでの手間を減らすほど、行動は自動化に近づきます

⑤ 小さな達成の積み重ねを“見える化”する

Suicaの利用履歴を見ると、毎日「かざした」記録が残ります。学習にも同じように、小さな積み重ねを可視化すると、「続いている」感覚が強化されます。

  • 勉強アプリの継続日数を表示
  • 毎日の学習量を10秒でメモ
  • 月ごとに達成したことを記録する

▶人は“続けられている自分”を目にすると、さらに行動を続けやすくなるからです。

インフラを継続させる環境設計を

Suicaのペンギンは、静かに無理なく「そこにいる」ことで、広く、長く愛される存在として定着しました。

学習においても同じことが言えます。続ける人は、努力を“表舞台”に置きません。
努力を“生活の裏側”に配置します

  • 意志力ではなく環境
  • やる気ではなく設計
  • 気合ではなく動線
  • 主役ではなく背景

そうした“環境の設計”こそが、学習を続ける最大の戦略ではないでしょうか。Suicaのペンギンの卒業を契機に、あなたも学習環境の設計を見直してみましょう。

(参考)

*1 Stanford University, Behavior Design Lab|Fogg Behavior Model

【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部

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