
「考えても考えても、一向にアイデアが出てこない」
「同僚はいつも周囲が驚くような企画を思いつくのに、自分は平凡なアイデアばかり……」
企画出しや顧客への提案、業務改善など、ビジネスシーンではさまざまなアイデアが求められます。上司から「何かいい案ない?」と突然聞かれて、困ってしまった経験がある人もいるでしょう。
しかし創造性は「ひらめきの才能」だけでは決まりません。創造性に富んだアイデアの絶えない人には、しないことがあるのです。
そこで本記事では、創造性に富んだ人になるために「捨てるべき」行動の癖をご紹介するとともに、さらに掘り下げてアイデアが生まれる仕組みを紐解いていきます。
アイデアが絶えない人になるために「捨てるべき」3つの癖
さっそくアイデアが絶えない人になるために「捨てるべき癖」を3つご紹介します。
具体的なヒントとともに見ていきましょう。
1. アイデア出しに集中しすぎる癖
アイデアが絶えない人は、集中してアイデアを考え続けるのではなく、あえて問題から一度離れます。
【問題から一度離れるためのヒント】
- デスクから離れて軽い散歩をする
- コーヒーを飲みながら景色を眺める
- 映画や音楽など、異なる刺激を取り入れる
考えが行き詰まったときほど、距離を取ることで思わぬ発想が浮かぶことがあります。
2. 思いつきを放置する癖
ちょっとしたアイデアを「今度使おう」と思って放置していませんか? せっかくのひらめきも、記録しなければ忘れてしまいます。
アイデアを生み出す人は、思いつきをすぐ書き留める習慣をもっています。
生産性をテーマに記事執筆や講演を行なうクリス・ベイリー氏は、「より多くのアイデアを頭の中から引き出し、整理できればより良い結果が得られる」と述べています。
なぜなら、人の脳には思考能力の限界があり、バラバラな考えをすべて記憶しておくのは非効率だからです。*1
ベイリー氏がすすめる「書き出しリスト」
- 待機中のもの:他人からの返答待ちや確認が必要なもの
- 深掘りしたいアイデア:気になる意見や課題など
- リマインダー:忘れがちなToDoや雑務
- 実際のアイデアと洞察:思いついた具体的な発想
週に1回ほどメモを整理すると、思考の抜け漏れを防ぎやすくなります。スマホメモや手帳など、自分に合うメモの方法を選びましょう。
3. 快適な環境に閉じこもる癖
AIの導入や他業種との交流など、新しい体験に尻込みしてしまう人は少なくありません。しかし、創造的な人ほど未知の体験を積極的に受け入れる傾向があります。
ペンシルベニア大学ポジティブ心理学センターのスコット・バリー・カウフマン氏らによる研究では、「経験への開放性」や「知的好奇心」の高い人ほど創造的成果を上げていることが明らかになりました。*2
【新しい刺激を取り入れる例】
- 通勤ルートを変えてみる
- 行ったことのない店や展示会に行く
- 他業種の人と会話してみる
- 短いオンライン講座で未知の分野を学ぶ
アイデアは既存知識の組み合わせから生まれます。だからこそ、新しい体験を重ねるほど組み合わせのバリエーションも増えるのです。

アイデアが生まれるメカニズム
上ではアイデアが絶えない人になるために3つの「捨てるべき癖」をご紹介しました。
ここでは、さらに掘り下げてアイデアが生まれるメカニズムを解説しましょう。
アイデアは突然発生するイメージがありますが、本来は頭のなかでさまざまな思考が行なわれた結果として生まれます。
既存知識が組み合わさったときに生まれる
アイデアと聞くと、まったく新しい物事を考えなければならないと思うでしょう。しかしどんな画期的なアイデアも、じつはすでにある知識や技術、情報の組み合わせでできています。
たとえばスマートフォンは、携帯電話とコンピューター、そしてタッチパネル技術を組み合わせたもの。このデジタル端末と、紙の本を組み合わせたのが電子書籍、といった具合です。
これを「組み合わせ的創造性」と呼び、「古いアイデアを組み合わせて新しいものを生み出すプロセス」だとする研究があります。組み合わせ的創造性には、3つの種類があるそうです。*3
【組み合わせ的創造性の3タイプ】
- 問題主導型:単独では不完全な解決策でも、組み合わせることで強力な解決策へ(例:デリバリー × 自転車で渋滞やコスト問題を改善)
- 類似性駆動型:機能やデザインが似たもの同士を掛け合わせる(例:鳥の翼を参考に飛行機を設計)
- インスピレーション型:一見無関係に見える2つを結びつける(例:ゲーム × 勉強で学習意欲を高める)
アイデアとは完全な0から新しいものを生み出すのではなく、既存の物事から「新しい組み合わせ」を思いつくことだと言えます。

情報が無意識の中で組み合わさったときに生まれる
アイデアは知識の組み合わせによるものですが、考える時間が長ければ良いというわけではありません。
経営コンサルタントの島青志氏によると、ひらめきには「準備→孵化→ひらめき→検証・フィードバック」という4つのステップがあるといいます。「なかでも重要なのが『孵化』の段階」だそう。*4
孵化とは
「情報が無意識の中で組み合わさる」時間のこと。この段階で問題について考え続けることは、孵化中の卵を揺すったり叩いたりするようなもの。つまり、表層的な思考を一度休ませることが重要なのです。
インプットやメモをしたらあえて問題から離れ無意識の状態をつくりだすことで、頭のなかで自然な組み合わせが起こり、ひらめきが生まれるというわけです。

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ひらめきは才能ではなく、習慣で育てるもの。アイデアが絶えない人が捨てている癖を参考に、日々の行動や考え方を少しずつ変えてみましょう。
*1 CHRIS BAILEY|The Productivity Benefits of Capturing Ideas
*2 Scott Barry Kaufman et al. (2015)|Openness to Experience and Intellect differentially predict creative achievement in the arts and sciences
*3 NESS LABS|Combinational creativity: the myth of originality
*4 シェアーズカフェオンライン|アイデアをひらめきたいときは「何もしない」が一番な理由(島青志 経営コンサルタント)
藤真唯
大学では日本古典文学を専攻。現在も古典文学や近代文学を読み勉強中。効率のよい学び方にも関心が高く、日々情報収集に努めている。ライターとしては、仕事術・コミュニケーション術に関する執筆経験が豊富。丁寧なリサーチに基づいて分かりやすく伝えることを得意とする。