読んで終わりはもう卒業。学んだ知識を確実に行動に変える『紙1枚』の習慣

筆者が書いたノート

筆者が書いたノート
※記事内の実践画像はすべて筆者が作成した

仕事の成果を上げるためにビジネス書を何冊も読んでいるのに、実際の業務は変わらない。

自己改善のために実用書で勉強しているのに、生活習慣や行動パターンは以前のまま。

「なるほど」と思いながら読んだ内容を、翌週には忘れてしまっている。

こんな経験に心当たりがある方は多いのではないでしょうか。

これは単純な読解力の問題ではありません。学んだ内容を自分の現実に落とし込む読書スキルに課題があるのです。

ビジネス書や実用書は、著者の経験や理論を学ぶためのものですが、最終的な目標は「自分の仕事や生活を改善すること」のはず。しかし多くの人が、本を読んで理解することで満足してしまい、実践まで至らないのが現実です。

では、学んだ知識を確実に行動に転換するには、具体的に何をすればよいのでしょうか。

本記事で、そのための実践的な方法をご紹介します。

インプット偏重で終わってしまう理由

そもそも、なぜ「成長しよう」「勉強しよう」と思って本を読むのに、学習と実践のギャップが生まれてしまうのでしょうか。

雑誌ハーバード・ビジネス・レビューの編集長を務めた岩佐文夫氏は、本に著者の「解釈」が入っていることである錯覚が起きていると指摘します。

情報として他人の解釈を「知る」ことで、自分で解釈したことと錯覚してしまう。そのような解釈は、いざそれが必要な場面で、腹落ちしていないことに気づき、知識として使えないのです。*1

つまり、他者の考えを鵜呑みにして「わかった」と錯覚してしまうのが、知識を集めるだけで終わってしまう理由です。

たとえば本に「頭を使う重要な仕事は朝にするべき」と書いてあったら、自分の職場で実践できるか、実践するとしたら具体的に何をするかを考えなければ行動につながりません。

「なるほどな」と納得するだけでは、使える知識にならないのです。

インプット偏重の読書パターンから脱して学んだことを活かすには、本の内容を自分のこととして捉え直すことが重要だと言えます。

読書する男性

読書から「行動」へ転換するために必要な「再言語化」

本の内容を行動へ移すためには「理解して、覚えて、そして行動に落とし込む」というステップがある――このように話すのは、コンサルティングサービスを展開する株式会社エンターイノベーションの代表取締役、山本直人氏です。*2

本を読んでいるのに成果につながらない人は、「理解して、覚えて、行動に落とし込む」ステップのどれかが欠けている可能性があります。

ただ本に書いてあった情報を覚えるのではなく、自分にとって何が重要で、いつ・どのように活かせそうかといったことを整理する必要があるのです。

そのために山本氏がすすめる方法は「再言語化」です。

自分の言葉で記載しなおすと、記憶に残りやすくなるのはもちろん、仕事での実践につなげやすくなるからです。
言語化には「要約としての抽象化」と「行動への具体化」の2つの段階があります。*2

「要約としての抽象化」とは、重要なポイントを自分なりにまとめること。「つまりどういうことか」を誰かに説明するイメージです。

「行動への具体化」は、いつ・どこで・どのように実践するかを考えること。

どちらも本に答えが書いてあるわけではないので、自分で考えて言語化します。

この自分で考えて言語化する作業が、インプット偏重の読書パターンから抜け出し行動を変えるために不可欠です。

とはいえ、頭の中だけで再言語化を完結させるのは意外と難しいもの。せっかく考えた内容も時間が経てば曖昧になってしまいます。

そこで重要になるのが、思考を整理しつつ忘れないようにするために紙にまとめておくことです。

ノートに書き込む人の手元

知識を「使える武器」に変える3つの要素

そこで今回は、楽天の上級執行役員やFacebook Japanの代表取締役などを務めた長谷川晋氏が実際に実践している「紙1枚」にまとめる方法をご紹介します。

項目は「学んだこと」「説明」「どう行動を変えるか」の3つです。*3

つまり、本で学んだことや重要だと感じたことを「説明」で要約し、「どう行動を変えるか」で実践に向けた再言語化を行なうのです。

長谷川氏によると、「学んだこと」は多すぎると重要なポイントが埋もれてしまうので、3~5つが最適だと言います。*3

1枚の紙に「学んだこと」「説明」「どう行動を変えるか」を書き出せば、知識を自分のものとして解釈し、行動に落とし込むまでのステップを着実に実行できるはずです。

一枚の方眼紙を手に持つ様子

紙1枚で知識を行動に移してみた

筆者自身も、読書は積極的にするものの読んだ内容を忘れがち。学びをなかなか行動に移せないため、紙1枚にまとめてみることにしました。

今回はアドラー心理学についての本を読み、左から「学んだこと」「説明」「どう行動を変えるか」を書き出しました。

筆者が書いたノート

左から「学んだこと」「説明」「どう行動を変えるか」を書き出した

使用したのはA5サイズの方眼ノートです。横向きに使用し、一番上に日付と本のタイトルを記載しました。

特に意識したのは、「どう行動を変えるか」の部分を具体的にすることです。

メモをしても行動に移せなければ意味がないので、見返せばすぐに実践できるよう、いつ・どこで・どのように行なうかを考えて書きました。

『シゴタノ!手帳術』の著者のひとりである北真也氏は「自分の行動に組み込むために、タスクリストや習慣化リストに変更を加える」こともすすめています。*4

たとえば筆者は本の内容を受け、ライターとしての仕事の新規営業をかけようと考えました。

まずは案件を探す必要があるため、週に1度のペースで「案件リサーチ」のタスクを組み込もうと思います。

北氏によると「新しい習慣として組み込む場合は、一日の中で使える時間を作り(つまり、何かをやめる)、実行のタイミングも確定させて置く方が良い」とのことなので、朝のメールチェックの時間を削って時間をつくることに。*4

新しい習慣を組み込むタイミングは、比較的メールの件数が少ない木曜日の朝としました。

普段、一日の仕事の終わりに「翌日のタスクリスト」を書いていますが、水曜日には「翌日のタスクリスト」の一番上に「案件リサーチ」と書いておきました。

筆者が作成した「翌日のタスクリスト」

筆者が作成した「翌日のタスクリスト」
一番上に、新しくタスクとして組み込む「案件リサーチ」を書いておいた

ここまでしたことで、本から得た知識を実践に移すことができたと感じました。

読書で得た学びを自分の言葉で噛み砕き、いま必要な行動にまで落とし込めたのです。

まずは学んだことを紙1枚でまとめ、より確実に実行したい・今すぐできそうだといった内容はタスクリストに反映するといいと思います。

タスクリストを表した画像

***
読書で得た学びを実際に活用するには、「読んで終わり」にしないことが重要です。本を読みながら、または読んだあとにしっかりと自分の言葉で再言語化し、どのように学びを活かせるかを考える習慣をつけましょう。そうすれば、読書がこれまで以上に有意義なものになるはずです。

※引用の太字は編集部が施した

【ライタープロフィール】
藤真唯

大学では日本古典文学を専攻。現在も古典文学や近代文学を読み勉強中。効率のよい学び方にも関心が高く、日々情報収集に努めている。ライターとしては、仕事術・コミュニケーション術に関する執筆経験が豊富。丁寧なリサーチに基づいて分かりやすく伝えることを得意とする。

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