図書館では本を読むな! あなたの思考を広げる“資料ハンター”という読書術

図書館を背景に、図書館で集めた情報のメモ書きが重なり合っている。

「読みたい本はあるけれど、時間がないから読んでいない」「読書の習慣がなかなか続かない」――そんなモヤモヤを抱えているビジネスパーソンは、きっとあなただけではないはずです。

忙しい毎日では、気持ちのうえでも読書の時間を確保するのは難しいもの。ですが、「本は1冊まるごと読まなければならない」という思い込みに、とらわれすぎている部分もあるかもしれません。

そこで今回ご紹介するのが、「情報を拾う場所」として図書館を活用する新しいスタイル――「資料ハンター」という考え方です。

目次や帯、索引など、わずかな情報からでも「学びの種」は見つかります。

本記事では、図書館の価値を改めて見つめ直しながら、実際にどのように使えばよいかを、1時間で再現できるシミュレーションもご紹介しています。

忙しいあなたでも、きっと今日から取り入れられる工夫が見つかるはずです。

図書館のすごいところ

図書館の「本を読む場所・借りる場所」というイメージはごく一般的です。しかし、物理的な側面だけに注目していては、図書館がもつ本当の価値にはなかなか気づけないかもしれません。

図書館の本当の価値とは――

  • 開かれた場所で、知識や文化を提供していること
  • すべての人の「知る権利」を支えていること
  • 社会全体の学びを高める場であること

こうした多面的な役割こそが、図書館の本質なのです。

金城学院大学教授で図書館学の専門家・薬師院はるみ氏は、図書館を「誰もが平等に知識や情報を得るための“公共施設”」と表現し、その役割が「万人の生活をより豊かにすること」だと語っています。*1

つまり図書館は、単なる「貸し出し機関」ではなく、私たちの暮らしと学びを支える重要な情報資源の拠点なのです。

ちなみに――

日本の公共図書館には、自治体が設置・運営する「公立図書館」と、法人などが設置・運営する「私立図書館」があります。*2

そして、図書館法第十七条「入館料その他図書館資料の利用に対するいかなる対価をも徴収してはならない」に基づき、公立図書館は無料で利用することができます。*3

さらに近年では、ビジネスパーソン必見のサービスも登場。書籍の要約サービス「flier(フライヤー)」を導入している図書館では、スマートフォンやタブレットを持参し、館内Wi-Fiに接続するだけで、ビジネス書の要約を無料で読むことができます。*4

お近くの図書館で利用可能かどうか、この機会にぜひチェックしてみてください。

図書館の風景

「資料ハンター」的な図書館利用の提案

「もっと本を読みたい」と思うなら、読書好きな人の習慣をまねてみるのもひとつの方法です。実際、読書家の多くは図書館を積極的に活用しているといいます。

2021年に行なわれた調査では、書店に週1回以上通う人の約7割が、月1回以上図書館を利用していることがわかりました(インターネット調査 , 4,000人の回答 , 株式会社プラネット)。*5

とはいえ、多忙なビジネスパーソンにとって、気軽に立ち寄れる書店とは違い、図書館は「時間がかかりそう」と感じてしまうこともあるでしょう。

そこで今回ご提案したいのが、「資料ハンター」という視点です。

図書館で本を読む・借りることを目的とするのではなく、断片的な情報から「学びの種」を集めるのです。それらの情報を絞り込んだあと、改めて深掘りすればいいのではないでしょうか。

以下に「学びの種」を集める方法をザッと挙げてみました。

  • 本の目次を見て全体像をざっくりと把握する
  • 帯や裏表紙のキャッチコピーから主張や問題提起を拾う
  • 索引を使って、興味のあるキーワードに関するページのみ確認する
  • はじめに / あとがきだけで、著者の主張や切り口をつかむ

つまり、本を読む前(深堀りする前)に、おいしそうな情報をポリポリとつまみ食いするわけです。これなら時間がない人でも、無理なく図書館を利用できるはず。

図書館には、ビジネス書、エッセイ、研究書、実用書、雑誌など、さまざまなジャンルの本が保管されています。

分類体系に沿って棚が構成されているため、目的の書籍を見つけやすく、関連分野や隣接領域への関心も自然に広がります。こうした環境が、新たな視点の発見や、思考の広がりを促すでしょう。

そして、その恩恵を受けながら「学びの種」を集めれば、複数の切り口が浮かび上がってくるはず。本との距離が近づくことも期待できます。

図書館で本を探す人々

図書館で「資料ハンター」になる段取り

では、図書館に行ってから戸惑わないよう、「資料ハンター」になったつもりでシミュレーションしてみましょう。所要時間はトータルで1時間を想定しています。

何を狩るかが決まっていないと効率的に動けないため、テーマを決めておくことをおすすめします。このシミュレーションでは、筆者が最近気になっていた「リーダーシップ」をテーマにしてみました。

さっそく始めます。

【ステップ1】ざっと棚を見渡す(10分)

まず、ビジネス書・自己啓発系の棚へ向かいます。

「リーダー」「マネジメント」「職場」など、関係ありそうなキーワードが並んでいるコーナーをひと通り見て、背表紙で気になったタイトルを3〜5冊ピックアップします。

この時点で全部読むつもりはありません。ただ、何かヒントがありそうだと感じた本を手に取るだけです。

【ステップ2】目次を読む(15分)

1冊ずつ、パラパラと目次をめくります。章タイトルや小見出しのなかから、ピンとくる表現・違和感のあるフレーズ・思わずメモしたくなる言葉を拾っていきます。

(例 ※架空の内容です)

  • リーダーは決めずにチームを動かす
  • 会議の沈黙を恐れない
  • 正解を探すな、問いの質を磨け

ここでは、読んで学ぶよりも、引っかかりを残すことを意識します。「この視点、おもしろいな」と思ったら、スマートフォンやメモ帳にひとことメモを残しましょう。

ピンときたフレーズをメモ

【ステップ3】帯・キャッチコピーを読む(10分)

次に、本の帯や裏表紙の紹介文を読みます。ここは、著者や編集者が「一番伝えたいこと」を凝縮している場所。つまり、1冊を読む前に、学びのエッセンスに触れるチャンスでもあります。

(気になった言葉の例 ※架空の内容です)

  • リーダーに必要なのは「決断」よりも「余白」
  • 雑談こそが組織の温度を上げる

(メモ例)

  • 「余白を残すリーダー」って言い回し、企画でも応用できそう
  • 「雑談=ムダではない」っていう視点、チーム運営のヒントになるかも

気になった言葉と自分のメモ

【ステップ4】索引で「気になる言葉」を追う(15分)

次に、索引ページを開いて、いまの自分に刺さるキーワードをチェックします。たとえば、「共感」「雑談」「フィードバック」など。

それらが使われているページを開き、周辺の数行~1ページだけを読みます。必要なら、前後を数ページつまみ読みしてもOK。

このときの狙いは、それらの言葉が本のなかでどう使われているかを知ることです。「この著者はこのテーマをどうとらえているか」をのぞき見る感覚で試してみましょう。

【ステップ5】小さなまとめをつくってみる(10分)

最後に、メモした言葉や印象に残った表現を見返して、今日の収穫をまとめます。

(まとめの例)

  • 「決めること」より「問い続けること」がリーダーシップ?
  • 雑談の「温度」が信頼をつくる。
  • チームを導くのは、強さじゃなく、柔らかさかもしれない。

今日の資料ハンティングのまとめ

こうして1時間。資料ハンティングは終了です。

「資料ハンター」になる際の注意点とアドバイス

図書館で効率よく情報を収集するためには、単に本を探すだけではなく、いくつかの基本的なマナーや姿勢を押さえておくことが大切です。

ここでは、「資料ハンター」として行動する際に心がけたいポイントをふたつご紹介します。

(1)図書館のルールを尊重しよう

図書館によっては、立ち読みや長時間の閲覧が制限されている場合があります。また、スマートフォンでの写真撮影やメモの使用が禁止されていることもあります。

こうした点をふまえ、利用前には閲覧席の利用ルールや館内での撮影可否を必ず確認しておきましょう。迷った場合は、カウンターでひとこと尋ねるのが確実です。写真撮影がNGの場合は、必要な情報を手書きでメモするのが基本となります。

(2)深堀りも忘れずに!

深掘りせずに「資料ハンター」を繰り返していると、断片的な情報ばかりが積み重なってしまうかもしれません。

拾い集めた「学びの種」のなかから、関連性のある1冊をじっくり読んだり、ネット文献で内容を補ったりと、深掘りする姿勢も忘れずにもちましょう。

そうすることで、点在していた知識が少しずつつながり、「点」だったものが「線」へと変わっていきます。拾うだけでは得られない、深い理解がそこにはあるはずです。

***
図書館は、ただ本を借りるだけの場所ではなく、日々の学びや仕事に、小さなヒントを与えてくれる「情報の交差点」です。

ほんの少し時間をとって、「資料ハンター」として立ち寄ってみれば、思いがけない発見が、あなたの思考や視野を広げてくれるかもしれません。

いつものカフェや書店と同じように、図書館も、あなたの味方になる場所なのです。

【ライタープロフィール】
こばやしまほ

大学では法学部で憲法・法政策論を専攻。2級FP技能検定に合格するなど、資格勉強の経験も豊富。損害保険会社での勤務を通じ、正確かつ迅速な対応を数多く求められた経験から、思考法やタイムマネジメントなどの効率的な仕事術に大変関心が高く、日々情報収集に努めている。

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