
キャリアアップといえば、誰もが大きな変化を想像するもの。転職、昇進、資格取得――確かにインパクトはありますが、そのための準備や実行には多大なエネルギーが必要です。
でも、忙しい日常のなかでそこまでのパワーを捻出するのは簡単ではありません。そこで筆者が注目したのが、少しずつ自分を静かに改善していく積み重ね。
大きな変化ではなく、日々の小さな工夫や振り返りを重ねることで、キャリアを変える力が生まれるのではないか――そう考え、「静かな戦略」と呼ぶ方法を組み立て、実践してみました。
実際にやってみた所感も交え、詳しく説明しましょう。
静かに自己改善する5つの方法
心理学者の Alice Boyes 博士は、Psychology Today の記事で「静かに自己改善する5つの方法」を紹介しています。その内容はこちら。*1
- 成長過程にある「いまの自分」に優しくする
- 改善のために日々の仕事を振り返る
- 従来の最適なプロセス8割・残りの2割は新しい方法を模索する
- 最も当然だと考えている「〜すべき」を疑ってみる
- 予期せぬ出来事にも「焦らず冷静に反応する経験」を積み重ねる
Boyes 博士は、静かな戦略ならパワーが限られているときでも活用可能だといいます。*1
キャリアアップのための「静かな戦略」
そこで筆者は、この「静かに自己改善する5つの方法」を参考にしながら、キャリアアップを前提とした「静かな戦略」を組み立ててみました。
その方法がこちら。
1. 自分の仕事に価値を見いだす
「いまの自分に優しく」は、「自分の仕事の再評価」に置き換えて考えます。無理やりにでも、現在の仕事が未来のスキルになるという視点をもってみるのです。
【○○○の仕事は「将来○○○」に役立つ】形式で考える
- 提案資料の作成は「将来のプレゼン力強化」に役立つ
- データ整理の仕事は「将来の分析力向上」に役立つ
これにより、いまの仕事の可能性が見えてくるかもしれません。可能性が明確になることで、逆に現状で足りない部分も浮き彫りになります。
2. 完了した案件を次につなげる
「日々の仕事を振り返る」では、完了した案件をすぐに忘れず、「何がうまくいったか」「次はどう改善するか」を記録するようにします。
【○○○がうまくいった。次は○○○してみよう】形式で考える
- 納期調整がうまくいった。次は段取りをさらに早めてみよう
- 伝え方がうまくいった。次は別のフォーマットでも試してみよう
記録することで次の改善につながり、「成果の連鎖」が生まれます。気分的にもよい影響があるはずです。

3. 業務の8割は定型化、2割は実験する
「従来の最適なプロセス8割・残りの2割は新しい方法を模索する」では、定型化と実験のバランスを言語化して習慣化します。
【○○業務の8割は○○○にして(定型化)、2割は○○○してみる(実験)】形式で考える
- ルーティン業務の8割は手順書にして(定型化)、2割は新しいツールを試してみる(実験)
- ミーティング運営の8割は既存方式で進め(定型化)、2割は新しい進行法を試してみる(実験)
新しい方法を試す習慣が変化への適応力を高め、「変化に強い人材」としての評価につながることに期待です。
4. 自分の「一番の強み」を疑ってみる
「〜すべきを疑う」については、少し視点を変えます。自分があぐらをかいている部分を突っついてみるのです。つまり、自分の「一番の強み」を疑ってみるということ。
【私は○○○ができるが、本当に役立っているのか?】形式で考える
- 私は「調整が得意」だが、それは本当に価値を生んでいるか?
- 私は「プレゼンがうまい」けれど、実際に売り上げにつながっているのか?
この自問の答えは、自分のスキルの価値を再認識させたり、スキル更新の必要性を自覚させたり、足りない部分を浮き彫りにさせたりするでしょう。
5. まずはマニュアルで対応力を磨く
「予期せぬ出来事にも焦らず冷静に反応する」については、最初からハードルを上げません。想定外の事態に冷静に対処できるよう、マニュアル化しておくのです。
【○○○が起こったら○○○する】形式で考える
- 急なクレームがきたら「事実確認→一次対応→共有」を徹底する
- プロジェクトの白紙撤回には「原因整理→代替案提示→関係者報告」で対応する
マニュアルの実践を繰り返すことで「自分のものになる」状態をつくり出し、そこから応用も利きやすくなると期待して、ひたすら実践を重ねます。
実践して分かった「静かな戦略」の効果
じつは今回、筆者もこの戦略を可能な範囲で実践してみました。最初は半信半疑で形式的に実践していただけでしたが――最終的には、ものすごく大きな変化があったのです。
それは、次のようなものでした。
- 変化1:自分の「思考パターン」や「行動」を客観的に観察できるように
- 変化2:感情に流されず、「事実ベース」の判断が可能に
- 変化3:行き詰まったとき、別角度からの「捉え直し」スキルが向上
こうして私は、「忙しくて余裕がない。時間もない。結局、評価も上がらない」というこれまでの発想を、一段高い視点から眺められるようになりました。
「静かな戦略」は、自分を徹底的に俯瞰するための方法とも言えます。そうした習慣が結果として、キャリアを静かに加速させるに違いありません。
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今回は、心理学者の Alice Boyes 博士が紹介している「静かに自己改善する5つの方法」を参考に組み立てた、「静かな戦略」をご紹介しました。
最初は「こんなことやったって……」という気持ちがムクムク湧いてきます。でも、続けていくとすぐに変化を感じますよ。いままでの自分よりも、少しだけ余裕がある冷静な自分が手に入るはず。
あなたのキャリアアップ戦略の一部として、ぜひご活用ください。
*1: Psychology Today|5 Quiet Ways to Self-Improve
STUDY HACKER 編集部
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