「仕事が速くなりたいのに、いつも同じ壁にぶつかる...」そんな悩みを抱えていませんか?
じつは、仕事が速い人は特別な才能を持っているわけではありません。彼らが持っているのは、「しないこと」を徹底する習慣なのです。
多くの人が「もっと頑張らなきゃ」と自分を追い込むなか、効率化の達人たちは逆の発想でスピードを手に入れています。
本記事では、仕事が速い人が絶対にしない3つの習慣を解説します。これらを避けるだけで、あなたの仕事の流れは劇的に変わるでしょう。効率化とは「追加する」ことではなく「手放す」ことから始まるのです。
しないこと1. 処分をためらう
デスクで書類を探す時間が長かったり、パソコン内の資料をなかなか見つけられなかったりする経験はありませんか?
その原因は、「必要なもの」が「不要なもの」に埋もれ、適切に配置されていないことにあります。
仕事が速い人は整理整頓を習慣化し、必要なものをすぐに取り出せるため、常にスムーズに業務を進められます。
トヨタグループ出身の経営コンサルタント・森琢也氏も、「散らかったデスクの人は探し物に時間を浪費し、成果につながる活動に時間を割けない」と指摘。効率的に働くには日常的な整理整頓が不可欠だと語ります。*1
ただし、ものを綺麗に並べるだけでは不十分です。重要なのは不要品を捨てる「整理」と、必要なものを使いやすくする「整頓」の両方を行うことです。
そこで森氏は、「捨てる基準」を事前に決めて、迷わず機械的に処分する方法を提案しています。森氏が実践する基準は以下の6つです。*1
- 顧客や取引先に迷惑をかけないもの
- 電子化できるもの
- 500円以下で再入手できるもの
- 5GB以上のデータ
- 念のために用意・保管していたもの
- ドラフトなど最終版ではないもの(すでに最終版が保管されている場合)
特にものが多い方は、ひとつひとつ検討していると処分作業が進まなくなります。上記の基準を活用するか、自分に合った独自の基準を設定して、迷わず処分していきましょう。
そうすることで、デスクとパソコン内が整理され、探し物の時間が大幅に削減できます。無駄な中断が減り、作業への集中力も高まるため、仕事の効率は確実に向上するでしょう。
つまり、「仕事が速い人」が絶対にしない一つ目は、
なのです。
しないこと2. タスクの分担を遠慮する
「周囲に迷惑をかけない」という姿勢は重要ですが、その考えからタスクをひとりで抱え込むと、かえって非効率になってしまいます。
仕事が速い人は周囲のメンバーと協力し、効率よく業務を進めているものです。
働き方改革コンサルタントの越川慎司氏(株式会社クロスリバー代表)の調査によると、効率的に成果を出せる人は、単に締切を守るだけでなく、「タスク実行は自分だけの責任ではない」という考え方を持っているとわかりました。*2
ひとりでタスクを抱え込めば、必然的に疲労が判断力や集中力を低下させるリスクも高まります。適切な分担ができれば、そのような事態を防ぎ、仕事をスムーズに進行できるでしょう。
ただし、タスクの分担は単なる押し付けであってはなりません。越川氏によれば、相手にとってのメリットと仕事の意義・目的を伝え、納得してもらうことが大切です。*2
例えば、同僚のAさんにレポート作成を依頼する際は、次のような伝え方が効果的でしょう。
Aさんの意見を取り入れたレポートにしたいので、一緒に作成してくれませんか?
この仕事はAさんの得意分野なので、誰よりも適していると思われます。チーム全体でスピードアップを図りたいので、お願いできますでしょうか?
依頼する際は、メンバーの業務状況をしっかり確認し、負担にならない範囲でお願いすることが重要です。日常的なコミュニケーションが、こうした場面で大きく役立ちます。
最初から円滑に進まないこともあるでしょう。しかし、こうした働きかけを続けることで、ひとりがタスクを抱え込む状況が減り、自身の負担軽減とチーム全体の効率向上という二重のメリットが生まれます。遠慮して分担を避けていては、これらの大きな利点を得ることはできません。
つまり、「仕事が速い人」が絶対にしないことの二つ目は、相手への配慮を忘れずに、
です。
しないこと3. ミスや失敗を引きずる
確認不足による「ミス」や判断の誤りによる「失敗」は、誰もが経験するものです。
だからこそ仕事が速い人は失敗を機会と捉え、焦らず、恐れず、引きずりません。失敗から学び行動を修正することで、その経験が成長の糧となり、仕事をスムーズに進める力につながるからです。
一方、失敗を極度に恐れると、新たな挑戦をためらうようになります。そういった人は失敗を長く引きずりがちで、次の行動に移れず、新しいことにも踏み出せません。結果として、必要以上に時間をかけ、恐る恐る仕事をする習慣が身についてしまいます。
つまり、失敗への恐れとこだわりは、仕事のスピードを著しく低下させるのです。不安は判断力も鈍らせ、悪循環を生み出します。
大切なのは、失敗は恐れて引きずれば損になるけれど、恐れず引きずらなければ得になるという認識です。
NPO失敗学会理事副会長で東京大学環境安全研究センター特任研究員の飯野謙次氏は、失敗こそが最大の成長機会である理由を3つ挙げています。*3
- ミスや失敗の解決策を講じた先に、対応力、思考力、計画力、分析力などの能力向上がある。
- 「すでにできあがっていたもの」を繰り返すだけでは、失敗はしないけれど、新しいものも付加価値も生まれない。ミスや失敗を乗り越えることが創造性・独自性・価値の向上につながる。
- ちょっとしたミスや失敗、失敗談があるほうが、職場の雰囲気を和ませ、連帯感をつくり、大きなトラブルに備えた訓練にもなる。
たとえば、重要な会議で誤った資料を提出してしまった場合、その原因を詳しく分析すれば、準備不足や時間管理の問題点に気づくことができます。
これを機に、資料作成のスケジュールを前倒しにしたり、同僚に確認を依頼する仕組みを導入したりすることで、対応力や計画力が向上し、成長につながります。結果的に、仕事の手順が改善され、業務全体のスピードも高まるでしょう。
つまり、「仕事が速い人」が絶対にしない三つ目は、
なのです。ミスや失敗に悩みがちな人は、このポジティブな側面に注目してください。
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今回は、「処分を躊躇する」「タスクの分担を遠慮する」「ミスや失敗を引きずる」という、仕事が速い人の3つの「しないこと」について解説しました。ご自身の仕事に取り入れられるものから、さっそく試してみてください。
*1: STUDY HACKER|世界のトヨタが実践する「捨てる技術」。仕事ができる・できないは、デスクを見ればわかる
*2: 東洋経済オンライン|1日何度もToDoリストを見る人の仕事が遅い理由
*3: 東洋経済オンライン|ミスを極度に恐れる人が「実は損している」理由
こばやしまほ
大学では法学部で憲法・法政策論を専攻。2級FP技能検定に合格するなど、資格勉強の経験も豊富。損害保険会社での勤務を通じ、正確かつ迅速な対応を数多く求められた経験から、思考法やタイムマネジメントなどの効率的な仕事術に大変関心が高く、日々情報収集に努めている。