「ググる」で見つけてもらえる時代は、終わりかけている——AI時代に、自社を顧客に届けるには。【新人さんのためのマーケティング講座 Season2 vol.5】

📘 新人さんのためのマーケティング講座 Season2

Season1では、マーケティングの基礎概念からWeb広告の実務知識までを体系的に解説しました。Season2は、配属されてしばらく経ち、実務をこなしながらさまざまな「壁」にぶつかり始めた方に向けて、より実践的なテーマを掘り下げていきます。

まだSeason1を読んでいない方は、まずそちらからどうぞ。▶ 新人さんのためのマーケティング講座 Season 1【全14回まとめ】 ——マーケティングの基礎知識を徹底解説!

「やった、検索1位とれました!」

その報告を聞いて、私は内心こう思います。「で、その1位、いつまで持つの?」——いや、もっと言えば、「そもそも、検索してもらえると思ってる?」

検索すらされない時代が来る

2024年5月、Googleは米国で「AI Overview」を正式に展開しました。ユーザーの質問に対してAIが要約した回答を、検索結果ページの上部に直接表示する機能です。

「〇〇とは」「〇〇 やり方」といった一般的なキーワードは、AIが検索結果ページ上で答えを表示してしまう。ユーザーはクリックすらせずに満足して去っていく。これが「ゼロクリック検索」の正体です。米国の調査会社SparkToroによれば、Google検索の約58%がクリックなしで終了しています。*1

しかし、問題はこれだけではありません。そもそも「ググる」という行為自体が減っていくのです。

考えてみてください。来週、有休を取ることになった。平日の休み、何をしようか。少し前なら、Googleを開いて「平日 休み 過ごし方 おすすめ」と入力していたかもしれません。

でも今は? ChatGPTやClaudeを開いて、こう聞く人が増えています。

「来週有休消化しないといけなくてさ、平日の休みにおすすめの過ごし方ってある?」

自然な言葉で、直接AIに聞く。

そもそも「平日 休み 過ごし方」なんて、人間に話しかけるときには絶対に使わない不自然な言い方ですよね。これまでは、検索エンジンに合わせて人間が不自然な入力をしていた。でも、生成AIの登場で、その必要がなくなった。

「ググる」という行為自体が、過去のものになりつつあるのです。

「想起」されなければ存在しないのと同じ

この変化が意味することは何か。「検索で上位表示」という戦略そのものが、崩壊しつつあるということです。

AI Overviewでクリックされない。そもそもググらずにAIに聞く。どちらにしても、あなたのサイトには来ない。

では、どうすればいいのか。検索される「前」に、想起させるしかありません。

具体例で考えてみましょう。あなたがコーヒーを飲みたくなったとき、どうしますか?

パターンA:「カフェ おすすめ 近く」で検索する
パターンB:「スタバ行こう」と思う

パターンAは、カテゴリ検索です。検索結果に並ぶ複数の選択肢の中から選ばれるかどうかは運次第。しかも今や、AIが「近くのおすすめカフェはこちらです」と答えてしまえば、そもそもクリックすらされません。

パターンBは、指名検索。最初から「スタバ」と決まっている。比較検討のフェーズをすっ飛ばして、直接来てくれる。AIに奪われることもありません。検索する前に、勝負は決まっているのです。

マーケティング研究者のバイロン・シャープは、「ダブルジョパディの法則」を提唱しています。市場浸透率が低いブランドほど、顧客の購入頻度も低くなる——つまり、「知られていない」サービスは二重の不利を負うという法則です。

知られていなければ、「コーヒー飲みたい」と思った瞬間にあなたの店は頭に浮かばない。頭に浮かばなければ、カテゴリ検索の土俵で戦うしかない。そしてそのカテゴリ検索自体が、AIに奪われつつある。

AI時代、想起こそがすべてのスタートラインです。

認知を設計せよ

では、どうすれば想起されるようになるのか。原理はシンプルです。人間は、何度も目にしたものを覚える。だから、ターゲットに何度も接触する機会を作ればいい。

ただし、「とにかく全部やれ」という話ではありません。リソースは有限です。だからこそ、認知を「設計」する必要がある。

認知設計の3つの問い

1. 誰に覚えてもらいたいのか?
ターゲットを絞らなければ、接触効率が落ちる。

2. その人はどこにいるのか?
ターゲットが見ていないチャネルで発信しても意味がない。

3. どう接触回数を積み上げるか?
単発の露出では覚えてもらえない。継続的に接触できる仕組みを作る。

この3つを考えた上で、具体的な打ち手を選んでいきます。

認知を取るための具体的な打ち手

認知を取る手段は、大きく分けて「お金をかける方法」と「時間をかける方法」があります。

■ お金をかける方法

予算があるなら、広告で接触回数を一気に稼ぐことができます。テレビCM、タクシー広告、OOH(屋外広告)、YouTube広告、SNS広告——。これらは短期間で大量のリーチを取れる反面、止めたら接触も止まります。認知広告は「投資」です。ブランドが想起されるようになるまで、継続的に打ち続ける覚悟が必要です。

■ 時間をかける方法

予算がないなら、時間をかけて接触回数を積み上げるしかありません。SNSで継続的に発信する。メルマガで定期的に届ける。セミナーに登壇する。業界メディアに寄稿する。書籍を出版する。これらは即効性はありませんが、続ければ続けるほど「見たことある」が積み上がっていきます。

特にSNSは、コストゼロで始められる手軽さがあります。ただし、フォローされても投稿が届くとは限らないのが今のSNS。フォロワー数に安心せず、発信を続けることが大事です。

 

認知獲得チャネルの整理

【お金で買う認知】
テレビCM、タクシー広告、OOH(屋外広告)、雑誌広告、YouTube広告、SNS広告、ディスプレイ広告

【時間で積み上げる認知】
SNS発信、メルマガ、YouTube/Podcast、ブログ・note、セミナー登壇、書籍出版、業界メディア寄稿、展示会出展

どのチャネルを選ぶかは、ターゲット次第です。BtoBならセミナーや業界メディアが効くかもしれない。BtoCならSNSやYouTubeかもしれない。重要なのは、「自社のターゲットがいる場所で、継続的に接触する仕組みを作ること」です。

接触回数を積み上げていけば、ある日「〇〇したいな」と思った瞬間に、あなたのサービスが頭に浮かぶようになる。これが想起です。想起されれば、指名検索が発生する。指名検索なら、AI Overviewに奪われない。そもそもググらずに直接サイトに来てくれることもある。

認知設計とは、想起を生むための仕組みづくりなのです。

アルゴリズムではなく、人を見ろ

整理しましょう。

 

【AI時代のマーケティング、3つの事実】

1. 検索すらされない時代が来る
AI Overviewでクリックされない。そもそもググらずにAIに聞く人が増える。

2. 想起されなければ存在しないのと同じ
「○○したい」と思った瞬間に頭に浮かぶかどうか。検索の前に勝負は決まっている。

3. 認知を設計せよ
お金か時間か。ターゲットがいる場所で、継続的に接触する仕組みを作れ。

最後に、一つだけ覚えておいてください。あなたが向き合うべきは、アルゴリズムではありません。画面の向こうにいる「一人の人間」です。

その人に、適切なチャネルで、継続的に接触する。その人の頭の中に、あなたのサービスが刻まれる。「○○したい」と思った瞬間に、あなたが想起される。指名検索が増える。直接の訪問が増える。広告費率は下がる。PLが改善する。

すべては「認知の設計」から始まるんです。

想起と認知設計に関するFAQ

Q. 予算がない場合、何から始めればいいですか?

A. SNSから始めるのが現実的です。コストゼロで始められます。ただし、フォローされても投稿が届くとは限らない時代なので、フォロワー数に安心せず、継続的に発信し続けることが重要です。

Q. 小さな会社でも想起は狙えますか?

A. 狙えます。むしろ小さいからこそターゲットを絞りやすい。特定の領域で「〇〇といえばこのサービス」と覚えてもらえれば、想起は発生します。

Q. SEOはもうやらなくていいですか?

A. そうではありません。SEOも認知獲得の一つの手段です。問題は「SEOだけ」に依存すること。認知設計全体の中でSEOを位置づけてください。

Q. 指名検索と想起の関係は?

A. 想起されれば、指名検索が発生します。「○○したい」と思った瞬間にあなたのサービスが頭に浮かべば、そのまま指名検索してくれる。想起が先、指名検索が結果です。

(参考)

*1 SparkToro「2024 Zero-Click Search Study」(2024年)による調査データ。Google検索の約58.5%がクリックなしで終了していると報告。

▼ 新人さんのためのマーケティング講座 Season2

配属されてしばらく経ち、実務で壁にぶつかり始めた方へ。より実践的なテーマを掘り下げていきます。

Season1(全14回)はこちら|マーケティングの基礎概念からWeb広告の実務知識まで

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