「わずか1.5%の乾き」が脳のパフォーマンスを下げる! 脳をフル活用するための、水分との付き合い方

コップに水が注がれる様子

「集中しているはずなのに頭がぼんやりする」

「頑張っても覚えられない」

こんなお悩みの原因には、「水分不足」が関わっているかもしれません。

アメリカのコネチカット大学名誉教授のローレンス・アームストロング氏の研究では、「体内の水分量がわずか1.5%減少しただけでも、集中力や学習能力、反応速度などの認知能力テストがマイナスになる」ことがわかりました。*1

「気づいたら、何時間も水分を摂っていなかった」

このような習慣が、あなたの脳のパフォーマンスを下げている可能性があるのです。

本記事では、脳と水分の関係をひも解きながら、「なぜ水分を摂ると集中力が上がるのか?」「どんな飲み物をどれくらい飲めばいいのか?」など、すぐに実践できるヒントをご紹介します。

ぜひ一緒に、脳のパフォーマンスが上がる体内環境をつくっていきましょう!

集中できないのは「水分不足」のせいかも?

梅雨が明け、本格的な夏の暑さを感じる季節に入りました。

こまめな水分補給が大切だとよく言われますが、それは命を守るためだけでなく、脳のパフォーマンスを上げるためにも大切な習慣です。

なぜなら冒頭でも述べたとおり、わずかな水分不足でも集中力や記憶力などに悪影響を及ぼすからです。

水分と認知機能の関係を報告した研究でも、水分補給の状態が作業記憶や陳述記憶に影響することも明らかになっています。*2

つまり、脳の働きを保つためには水分補給が欠かせないのです。

そこで大切なのは、「のどの渇きを感じる前に水分を補給する」ということ。

その理由について東北大学加齢医学研究所教授の川島隆太氏は、のどの渇きを感じたときにはすでに「体内の水分量が適正水準の1~2%減少」しているからだと話します。*1

のどが渇くまで水分を摂らないその習慣が、知らないうちに脳のパフォーマンスを下げているかもしれません。

水を飲むと頭の回転が速くなる? 研究でわかった脳の変化

水分補給は集中力の向上や頭の回転を速くする効果があります。

たとえば、イースト・ロンドン大学とウェストミンスター大学の研究ではこんな興味深い結果が出ています。

知的作業の前に約0.5lの水を飲んだ人と飲まなかった人の反応速度を比べてみたところ、水を飲んだ人は飲まなかった人と比べて、反応速度が14%も上がりました。*3

反応速度とは、簡単に言えば「目の前の情報に対してどれだけ素早く・正確に反応できるか」ということ。

これは以下のように、ビジネスシーンや勉強の場面にも関わってくる事柄です。

  • 会議で話し合いの流れを瞬時に理解して発言するタイミングを逃さない
  • 上司やクライアントからの質問に素早く適切な回答を返す
  • 演習問題を解く際に、これまで学んだ内容を頭のなかで整理する

水分補給は脳のパフォーマンスの土台づくりに一役買っていると言えます。

脳が水分に包まれているイメージ

脳のパフォーマンスを上げる「水分補給」の3つのコツ

1. こまめに飲む

水分補給が大切だからといって、一気にたくさん飲むのは考えもの。一度にたくさんの水分を摂ったとしても、うまく吸収されずに排泄されてしまう可能性があるからです。

身体が一度に吸収できる水分量は、約コップ1杯分(200ml~250ml)ほどだと言われています。*4

年齢や体重などその人の体質にもよるので一概には言えませんが、1日にコップ6杯分ほど(約1,200ml)程度の水分補給を目安にするとよさそうです。*4

また、済生会横浜市東部病院患者支援センター長の谷口英喜氏によると、水分の摂りすぎは脳やそのほかの臓器に負担をかけてしまい、思考力の低下などをまねく危険性があるのだそう。*5

無理に水分をたくさん摂ろうとするのは逆効果。水分は普段の食事にも含まれていることも考慮して、補給の量を意識していきましょう。

電話をしながらカップに口をつけるビジネスパーソン

2. 水でなくてもOK

「カフェインを含むものは利尿作用があるから水分補給には適さない」とよく言われますが、そうとは限りません。

健康な成人男性を対象に行なわれた研究では、以下の飲み物での水分補給状態を比べた結果、どれを飲んでも水分の保持に大きな差は見られませんでした。

  • 炭酸入り飲料
  • カフェイン入り飲料
  • カロリーあり/なし の場合のコーヒー/コーラ *6

さらに、日常的にコーヒーを飲んでいる成人男性を対象に行なわれた研究でも、カフェインに慣れた男性が適度にコーヒーを摂取した場合、水と同様の水分補給効果が得られることも明らかになっています。*7

「お茶やコーヒーが好きだけど、カフェインを含むものは水分補給に適さないから水を飲まなくては……」ということはなさそうです。

そうは言っても、糖分を多く含む飲み物によって血糖値が急上昇すると睡魔が襲ってきたり、人によっては少量のカフェインでも睡眠に影響を及ぼしたりトイレが近くなったりすることも考えられます。

前出の谷口氏も「基本的にアルコール飲料以外であれば水分補給にな」るとしたうえで、カフェインや糖分の摂りすぎに気をつける必要があると述べています。*5

たとえばエナジードリンクや缶コーヒーなどは糖分が多く入っているので、水分補給として常飲するには注意が必要です。

テーブルの上にアイスコーヒーが置かれている様子

3. 水分補給のタイミング

寝ているあいだは水分補給ができないため、寝る前と寝起きの水分補給はマスト。

水分補給は水以外でもかまわないとお伝えしてきましたが、寝る前はカフェインを控えて水がいいでしょう。

また、運動時や入浴時は汗で水分を失いやすいので、前後の水分補給をおすすめします。

  • 就寝前
  • 起床時
  • 運動前後
  • 入浴前後

あとはのどの渇きを感じる前に、飲み過ぎに気をつけながらの補給を心がけましょう。

体にとって適度な水分は血流をスムーズにしたり、便通を改善したりなど、代謝の改善にもつながります。

代謝が落ちれば体に老廃物を溜め込みやすくなり、体調不良や肥満などにもつながりかねません。*8

健康のためにも、適度な水分補給を意識していきましょう。

水の入ったコップを手に持つビジネスパーソン

※心臓や腎臓に不調があるなど、水分摂取に制限が必要な場合もあるので、ご自身の体に合わせてご判断ください。

***
あなたが集中できないのは、やる気の問題ではなく「水分不足」のせいかもしれません。一杯の水が脳のパフォーマンスを上げてくれます。

今日から「のどが渇く前に水分補給する」という新習慣を、少しずつ取り入れてみませんか?

※引用の太字は編集部が施した

【ライタープロフィール】
澤田みのり

大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格と国際中医師の資格を取得。日々勉強を継続しており、勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。

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