いつも怒っている “あの人” とうまく関わる心理テク。気分屋上司も「パターン」がわかれば怖くない。

いつ顔を合わせてもイライラしている人が、あなたのまわりにもいるかもしれません。プライベートの世界であれば付き合わなければいいだけですが、会社の人間となるとそうはいきません。そういう人とどう付き合うべきか――。

アドバイスをくれたのは、怒りと上手に付き合う心理トレーニング、「アンガーマネジメント」の第一人者・安藤俊介(あんどう・しゅんすけ)さん。安藤さんによると、まずは「怒りの癖」によって6タイプに分けて考えることが重要なのだそう。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹(ESS) 写真/石塚雅人

「怒りの癖」による6タイプを見分ける

同じ出来事に出くわしても怒る人とそうじゃない人がいるように、人には「怒りの癖」というものがあります。僕はその「怒りの癖」によって、人を6つのタイプに分けて考えるようにしています。周囲の怒りっぽい人がどんなタイプなのか、その区別がつけば対処もしやすくなるはずです。

では、どう区別すればいいのか、そのヒントとなるキーワードもあわせて紹介しましょう。人はなにもないのに怒るわけではありません。どんなことがきっかけでその人は怒るのか、その怒りの裏にどんな気持ちが隠されているのか。キーワードに注目して、「怒りの癖」のタイプを見わけてみてください。

【「怒りの癖」による6タイプ/怒りのキーワード】 1. 公明正大タイプ/道徳心、正義感、倫理観、裁く、マナー、しつけ、親的態度 2. 博学多才タイプ/二元論、排他的、完璧主義、潔癖さ、非中立性、偏狭さ 3. 威風堂々タイプ/自尊心、自信過剰、支配欲、プライド、勝者の視点、俺様、不遜 4. 外柔内剛タイプ/頑固、思い込み、読心、自分ルール、融通がきかない 5. 用心堅固タイプ/猜疑心、不信感、悲観、劣等感、レッテル貼り、ひがみ、やっかみ 6. 天真爛漫タイプ/自己主張、独善、高圧的、批判的、独立心、権威主義

「怒りの癖」タイプ別の上司・部下との接し方

それでは、それぞれのタイプの特徴、そのタイプの人への対処法を解説しましょう。

1. 公明正大タイプ

ひとことでいうと「電車内で大きな声で電話するような人間を許せない人」です。強い意志も行動力もあります。反面、その強い正義感のために、自分が間違っていると思っていることを他人がしていると、怒りの感情を抱き、必要以上に介入しようとするタイプでもあります。

このタイプの上司は、「週末の出来事も報告しなさい」など、指導がいきすぎる傾向も。ただ、それらの行動も本人に悪気はなく「部下に正しくあってほしい」という親心からのものです。とはいえ、業務の範囲を超える指導に関しては、業務範囲外のことだと毅然と伝えるのがいちばんです。一方、このタイプの部下は相手が上司であろうが正論をぶつけて指摘しないと気が済みません。もしその正論がただの思い込みなら、間違っているという事実、そして本当に正しいことを丁寧に説明してあげましょう

2. 博学多才タイプ

つねに論理的で明快な判断ができ、理想を追求する完璧主義者。ただ、なにごとにも白黒をつけたがる傾向があるため、優柔不断な人、判断力に欠ける人、考え方があいまいな人と衝突する傾向にあります

つまり、このタイプの上司はあいまいな報告を嫌うということ。仕事ではグレーということもあるものですが、「こちらの案がベターです」というふうに、思い切って明確に意見をしてみてください。その際には、上司を納得させるための客観的データ等の準備も必要です。このタイプの部下に対しても優柔不断な態度を取るのはご法度。素早く判断し、具体的な指示を与えるように心がけましょう

3. 威風堂々タイプ

どんな状況でも気圧されず、行動力があって面倒見もいいリーダータイプ。一方で、自信過剰で自己中心的になりがちなところが短所です。プライドが高いため、邪険に扱われたり軽く扱われたりすると怒ってしまうケースが多いタイプといえるでしょう。

このタイプが上司の場合、頼りになる一方で部下に厳しい面もあります。下手に怒りを買わないためには、上司の行動パターンをよく観察して、その一歩先を予測して行動することが重要になります。また、このタイプの部下の場合、大きな声で注意されるなどプライドを傷つけられると失望し、それが怒りに転化することも……。多少面倒でも、「ちゃんと気にかけているよ」という態度を見せてあげましょう。そうして自信を持たせてあげれば、実力を発揮してくれるようになります。

4. 外柔内剛タイプ

文字通り、内に秘めた強い気持ちを柔らかな雰囲気で包んでいます。表面上は穏やかに見られることが多いため、周囲から無遠慮にいろいろなことを頼まれることがストレスになるという特徴も。また、内面の強い信念による「自分ルール」を尊重するため、それが周囲とぶつかって怒りに発展することもあります。

このタイプの上司の場合、自分なりのやり方やペースなど上司の「自分ルール」に踏み込まないようにしましょう。一度怒ってしまうと意固地になるため、その場合は時間を置く必要があります。「自分ルール」に固執している部下の場合、「視野を広げてみては?」と助言したところで、いきなりルールを大きく変えることには抵抗を感じてしまいます。小さなステップで徐々に改善していくよう伝えてください

5. 用心堅固タイプ

つねに慎重でじっくり考えて行動するため、負ける勝負はしません。そのため、周囲には安心感を与えます。ただ、用心深さゆえに他人に心を開きにくく、「あの人は○○だ」というふうにレッテル貼りすることもあり、周囲との人間関係をこじらせてしまう場合もあります。また、悲観的でもあり劣等感が怒りに転化することも。

用心深いため、このタイプの上司は部下の意見にあからさまな反論や批判をすることは多くありません。ただ、必ずしも受け入れているとは限らず、心の奥では怒りを感じていることもあるため、その上司を見下したり軽んじたりするような態度はNGです。また、このタイプの部下の場合、自己評価が低い傾向にあるため、本音で語り合うには相手が安心できる環境を用意する必要があります。なかなか打ち解けてくれませんが、じっくり時間をかけて接しましょう。

6. 天真爛漫タイプ

あらゆることに可能性を見出し、目標達成を目指すパワフルな人。話すことが得意で議論も好みますが、相手の感情を考慮するのは苦手な傾向があります。自己主張が強いので、自分の主張が言えない、通らない場面で強い不満を感じます。その不満が解消できないと、相手を恫喝したり、後先を考えずに行動したりしてトラブルを起こしてしまいます。

気分屋でもあるので朝令暮改もしょっちゅう……。ただ、このタイプの上司が真剣に検討していることと、ただの思いつきにはなんらかのパターンがあるはずです。どちらに耳を傾けるべきか、見極める力をつけましょう。部下の場合、行動力があるだけに先走ってしまうこと、報連相の遅れなどに要注意。部下の行動の先回りをして、計画にもとづいた行動ができるようサポートしてあげれば、その能力を生かせるはずです。

【安藤俊介さん ほかのインタビュー記事はこちら】 怒りの感情と上手に付き合う! 欧米トップ経営者の常識「アンガーマネジメント」入門 「怒ってばかりの人」は損だらけ。でも「怒れない人」も絶対に損をしている。

『「怒り」を上手にコントロールする技術 アンガーマネジメント実践講座』

安藤俊介 著

PHP研究所(2018)

【プロフィール】 安藤俊介(あんどう・しゅんすけ) 1971年12月21生まれ、群馬県出身。アンガーマネジメントコンサルタント。一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事。怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニング・アンガーマネジメントの日本における第一人者。某企業のニューヨーク駐在員時代に出会ったアンガーマネジメントを日本で広めることを決意。2011年、日本アンガーマネジメント協会を設立し、代表理事に就任。ニューヨークに本部を置くナショナルアンガーマネジメント協会では、1500人以上在籍するアンガーマネジメントファシリテーターのなかでわずか15人しか選ばれていない最高ランクのトレーニングプロフェッショナルにアメリカ人以外でただひとり登録されている。『「怒り」が消える心のトレーニング』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『マンガでわかる怒らない子育て』(永岡書店)など著書多数。

【ライタープロフィール】 清家茂樹(せいけ・しげき) 1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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