完璧にやるから遅いし評価されない。「60点で回す人」が出世するワケ

黄色い星が五つ並んでいる

何度も見直して資料をつくる。 上司の期待を超えようと、細部までこだわる。

「ちゃんとやるのが社会人として当たり前」

そう信じて仕事をしてきたのに、なぜか評価されない。 むしろ「遅い」「自分で判断しない」と言われてしまう。その一方で、サクッと雑に仕上げた同僚が、 なぜか「デキる人」として扱われ、出世していく。

「なんで? 私のほうがちゃんとしてるのに。」心のどこかに、そんなモヤモヤが溜まっていませんか。

じつはそれ、あなたの努力が間違っているわけではなく「完璧主義という習慣」が、あなたのスピードと信頼を奪っている可能性があります。

本記事では、なぜ「完璧にしてから出す人」が損をして「たたき台として議論を始められるレベルの60点で出す人」が評価されるのかを解説し、あなたが信頼される人になるための具体的な方法をご紹介します。ぜひ最後までご一読ください。

完璧主義のあなたが「損をしている」理由

「こんなに丁寧にやっているのに、どうして自分は評価されないんだろう」

仕事に対して誠実で、提出する資料には何度も見直し、細部まで気を配るあなたの努力は評価に値するでしょう。しかし、現実は、スピード重視の同僚がサッと出したラフな資料の方が評価され、自分の渾身のアウトプットは「遅い」と一蹴されてしまう。 

多くの人が「ちゃんとやる」ことは評価されることだと信じ込んでいますが、残念ながらビジネスの世界では、それだけでは評価されないのです。なぜなら、「スピード」そのものが価値をもつからです。

McKinsey & Companyの記事のなかで興味深いデータが示されています。

多くの組織が「質の高い意思決定」と「迅速な意思決定」の間でトレードオフを考えているにもかかわらず、「より迅速な意思決定は、より質の高い意思決定につながる傾向がある」というもの。

つまり、スピードは「間に合わせ」の妥協ではなく、「質を高めるための前提条件」になっているのです。

これは個人の仕事にも当てはまります。 あなたが一人で資料を仕上げているあいだに、チームは既に意思決定を進め、会議の流れが決まってしまった。その結果、あなたの資料は不要になった完璧品として扱われてしまう。さらに問題なのは、こうした遅れが「慎重な人」として評価されるどころか、「判断が遅い」「指示を待っているだけ」というレッテルを貼られてしまう点です。

あなたの丁寧さが、周囲からは「自律性のなさ」や「主体性の欠如」に見えてしまっている── このギャップこそが、完璧主義者が評価されにくい構造的な理由なのです。

パソコンの前で肘をついて頭を抱える女性

60点で回す人が評価される理由

それでは、反対に評価される人たちはどんな仕事の仕方をしているのでしょうか。

その理由を、Google社の有名な調査「Project Oxygen」*2 からひも解いてみましょう。この調査では、「優れたマネージャーや社員の特徴」を明らかにするため、数千人規模の従業員データが分析されました。

この調査で浮かび上がったのは、「完璧な成果」より「方向性を早く示す行動」が評価されていたという事実です。

早く出すことで、上司やチームメンバーは意図を早期に把握でき、建設的なフィードバックを返すことができるでしょう。 たとえば、上司に提出する資料を「完璧に仕上げてから」と思って数日遅らせるよりも、骨子だけでも早く出すほうが、仕事が早く進むのです。

実際に、60点でもいいから出す人には、以下のような共通点があります。

1. スピード重視が信頼を生む

60点で出す人は、完璧を目指す前に、まず早さを大切にします。早く出すことで、上司やチームから「自分で考えて動いている人」として信頼され、自然と主導権を握ることができるのです。

この姿勢は、心理学でいう「アンカリング効果」にも通じるでしょう。最初に提示された情報やアイデアは、その後の判断基準として記憶に強く残りやすいです。つまり、あなたの「仮の案」がチームの議論の出発点になり、結果としてリーダーシップが際立つのです。

2. フィードバックを仕事の一部として捉えている

60点で出す人は、「完成」を目指すよりも、「改善のスタートライン」に立つことを重視しています。

彼らはフィードバックを「ダメ出し」ではなく、「よりよいものをつくるためのヒント」と前向きに捉え、積極的に活用します。このスタンスが、柔軟さ・巻き込み力・成長速度の速さへとつながるのです。

3. 修正前提で「育てる」アウトプットを作る

完璧を目指す人は「一発勝負の提出」を好みます。しかし、60点で出す人は、「出して育てる」スタイルを取ります。

初稿を出すことで、早期に課題が洗い出され、改善サイクルを高速で回すことができます。結果として短期間でブラッシュアップされ、最終的には完成度の高い成果物になるのです。

このように、60点で回すスタイルはただの手抜きではなく、戦略的な判断なのです。

パソコンの前で笑顔で仕事をする男性

60点でも信頼される人の仕事術

「完璧じゃないとダメ」と思い込んでいる人ほど、「60点で出すなんて不安」と感じるかもしれません。 でも安心してください。信頼を得ている人たちは、「完璧」を手放した代わりに、別のやり方で信頼と成果を手に入れているのです。

ここでは、今日からあなたが実践できる「60点仕事術」を5つの行動に分けてご紹介します。

1. 「完成」をゴールにせず、「提出」をスタートにする

まず大切なのは、提出をゴールにせず、スタートにすることです。「これは叩き台です」「まだ粗いですが、まずは共有させてください」と一言添えることで相手もフィードバックを返しやすくなります。これにより、あなたの「巻き込む力」が高まり、チームとしての成果に貢献できます。

◇ いますぐにできること
→次の提出物では60点程度の完成度で出して「まず意見をください」と添えてみましょう。

2. すべてを丁寧にしない。「ここは粗くてOK」を自分で決める

成果を出す人ほど、「どこに力を入れて、どこを抜くか」をはっきり決めています。

たとえば、社内向けの議事録であれば60点で充分かもしれません。しかし、顧客へのプレゼン資料であれば90点を目指す。このように、タスクの重要度や目的によって力の入れ具合を変える練習を始めましょう。

◇ いますぐにできること
→タスクを「高精度で仕上げるべき/粗くてよい」に仕分けする習慣をつけましょう。

3. フィードバックを「ダメ出し」ではなく「チームで育てる材料」と捉える

フィードバックが怖いと感じている方もいるかも知れません。フィードバックはあなたのアイデアをチームで育てるための貴重な栄養です。最初の60点がアイデアの種となり、修正を通してチームの成果として成長する。これが、信頼を生むポジティブな循環になります。

◇ いますぐにできること
→出したあとに「改善のポイントはありますか?」と自分から聞いてみてください。

4. 「初速が速い人」=「考えている人」という印象を持たれやすい

「仕事のスピードが速い人」は、「自分で判断できる」「優先順位を把握している」と周囲に伝わります。

完璧さよりも「自分で考え、判断し、行動できる人」という、より深い信頼を獲得できるのです。

◇ いますぐにできること
→「迷って止まる」より、「仮でも出して次に進む」を心がけてみましょう。

5. 「一発勝負」ではなく「育てる前提」で初稿を出す

一回で完璧に仕上げようとすればするほど、出せなくなっていきます。 初稿は60点で出して、3回で仕上げる」くらいの考え方をぜひ身につけてください。

このリズムで出せるようになると、スピードも質も自然と上がっていきますよ。

◇ いますぐにできること
→「1回で完璧」をやめて、「まず形にする→フィードバック→改善」の3ステップで考えましょう

以上、5つご紹介しましたが、ポイントは「大きな目標」を「小さくとも具体的な一歩」に分解してみてください。そして、その一歩を「完璧」でなくとも「60点」でいいから踏み出す勇気を持つことが大切です。

もしいまあなたが「がんばっているのに報われない」と感じているのなら、「60点で出す」ことを始めてみてください。決して「手抜き」ではなく、「効果的に成果を出すための戦略」なのです。あなたも今日から、「完璧」から抜け出して、もっと早く、もっと多くの成果をだしてみませんか。

 

 

【ライタープロフィール】
橋本麻理香

大学では経営学を専攻。13年間の演劇経験から非言語コミュニケーションの知見があり、仕事での信頼関係の構築に役立てている。思考法や勉強法への関心が高く、最近はシステム思考を取り入れ、多角的な視点で仕事や勉強における課題を根本から解決している。

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