知らぬ間に孤立する「敵をつくりがちな人」の口癖3つ。信用も評価も下がり続ける

怪訝な顔でこちらを見つめる男女

会議で発言した瞬間、なんとなく場の空気が変わった。同僚との雑談が急に途切れ、気まずい沈黙が流れる。

「また何か失言しちゃったかな……」

そんな不安を抱えながら、デスクに戻る足取りが重くなる経験はありませんか?

まじめに仕事をしているのに、なぜか上司や同僚から距離を置かれている。自分では普通に話しているつもりなのに、いつの間にか職場で孤立してしまった——。そんな状況に心当たりのある方は少なくないはずです。

その原因、あなたが何気なく使っている「あの口癖」にあるかもしれません。

今回は、職場のコミュニケーションで絶対に避けるべき3つの口癖をご紹介。信頼される話し方を身につけて、良好な職場の人間関係を築いていきましょう。

【口癖1】「どうして、いつも〜するの?」

部下や後輩に注意する際、「どうして、いつも〜するの?」と無意識に言っていませんか? その口癖があると、「この先輩の言うことは聞きたくない……」と思われてしまいかねません。なぜなら、部下の反発心を煽るだけで、肝心の行動改善につながらないからです。

『会話の9割は「言いかえ力」でうまくいく』共著者で心理研究家の津田秀樹氏と精神科医の西村鋭介氏によると、「いつも」という言葉は人間関係をこじらせる「極端語」であるそう。

津田氏らが挙げるのが、こんなシチュエーションです。部下が同じミスを2、3回繰り返したので、「ミスをなくしてもらいたい」と強く思うあまり、「どうして、いつも同じミスをするの?」と指摘した――。

この「いつも」という表現には大きな問題があります。実際には、部下は過去に同じ作業を成功させた経験もあるはずです。10回のうち3回ミスをしたとしても、それは決して「いつも」ではありません。

部下からしてみると、過去にはミスせず正しく行なえたこともあるのに、上司から「いつも」と言われたら、内心「いつもではないのに……」と反発したくなるのは当然です。反省するどころかやる気をなくしかねません

その結果、上司が時間をかけて指導しても、肝心のミス防止という目的は達成されません。それどころか、部下のモチベーション低下により、新たな問題が発生する可能性すらあります。

つまり、「どうして、いつも〜するの?」は何のメリットもない非効率な指導方法なのです。

津田氏と西村氏は、ほかにも以下の言葉を「極端語」として挙げています。いわゆる全否定の言葉です。

  • 絶対(例:○○するとき、絶対間違えるよね)
  • ちっとも(例:ちっともできるようになっていないよ)
  • なんにも(例:なんにもわかっていないな)
  • 全然(例:あの人は、全然できていない)

部下を指導する際は、これらの「極端語」を避けましょう。たとえば、「今日のミスはどうして起きたんだろう?」といったように、目の前の事実にのみフォーカスして話をするといいかもしれませんね。一方的な決めつけをやめれば、人間関係をこじらせることなく、部下の行動改善を促せるはずです。

NG例:極端語を使った指導

どうして、いつも同じミスをするの?
 

結果:部下の反発心を煽り、指導効果ゼロ。時間の無駄になる。

OK例:事実に基づいた指導

今日のミスはどうして起きたと思う? 次回はどんな対策をとれるかな?
 

結果:建設的な対話が生まれ、実際の改善策を見つけられる。

「部下の考えを引き出すアプローチ」についてはこちらの記事もご覧ください。
>>部下を「自分で考える人」にするための質問術。答えを引き出す ”問いかけの極意”とは

「すぐ敵をつくってしまう人」の最悪な口癖3つ02

【口癖2】「最近の若い人は」

ミスした部下を指導するとき「最近の若い人はこれだからダメなんだよ……」「自分が若手のときはこうだったのに……」などと言っていませんか。もし当てはまるなら、あなたは部下からすでに、冷めた目で見られているかもしれません。

組織人材開発コンサルタントの野崎大輔氏によると、これらの言葉が口癖になっている人は、「過去」を基準に自分の価値観を押しつけているだけなのだそうです。「現在」を見ていないことの証拠が、この口癖なのだとか。

たとえば、長時間労働が当たり前だった時代に気合と根性で残業をこなしていたエピソードをもち出して、「昔は終電まで働くのが当然だった。最近の若い人は弱すぎる」と言うようなケースがこれにあたります。そんな、時代背景や労働環境を無視する自分本位な人を、野崎氏は “恐竜” と呼んでいます。

"恐竜"的な上司が「最近の若い人は」と言うとき、本人は自分の過去を美化していることがほとんどです。ですが、過去の武勇伝は、部下からすればただの自慢話。現在の業務に関係のない昔話を聞かされ、さらに現在の自分たちが否定される。そんな上司とは距離を置きたくなって当然だと野崎氏は指摘します。

自分の若手時代の経験を絶対視してはいけません。しかし、経験を適切に活用する方法はあります。

「過去を基準にして価値観を押しつける」のではなく、「現在に目を向けて部下をほめる」アプローチです。たとえば「私の若い頃より、○○さんはずっと効率的に作業ができているね」「昔の私たちには思いつかなかった発想だ」といった形で、部下の現在の能力を評価する材料として過去の経験を使うのです。

このような言葉かけなら、部下のモチベーション向上につながり、上司への信頼も深まります。過去の経験は、相手を否定するためではなく、相手を肯定し成長を促すために活用すべきなのです。

NG例:過去を基準にした価値観の押しつけ

最近の若い人はこれだからダメなんだ。私が若手の頃は終電まで働くのが当たり前だった。
 

結果:経験や知見が活かされず、指導効果ゼロ。

OK例:現在に目を向けた肯定的な伝え方

私の若い頃より、○○さんはずっと効率的に作業ができているね。
 

結果:経験を活用して部下のやる気を引き出せる。

「部下を意欲的にさせるアプローチ」については、こちらの記事もご覧ください。
>>人は “こう” 言われれば意欲的になる。「やる気を出して」と言うより簡単に相手を動かせる方法。

「すぐ敵をつくってしまう人」の最悪な口癖3つ03

【口癖3】「努力します」

ここまで、上司の視点で「孤立しかねない口癖」を取り上げてきました。最後は、主に部下の立場に当てはめやすいものをご紹介します。

あなたは、上司から指導を受けたとき、「勉強になりました、これから努力します」と曖昧に受け答えしていませんか? 「〇〇できるように頑張ります」「〇〇に挑戦します」なども同様。こういう “中身のないフレーズ” をよく言っていると、上司に信用してもらえなくなる可能性があります。

『いくつになっても「求められる人」の小さな習慣』などビジネス書を数多く執筆する著作家の中谷彰宏氏によれば、「勉強」「努力」「挑戦」といった抽象的な言葉を使う人は、人から “求められない” とのこと。具体的に何をするかに言及しない「便利な逃げ言葉」を安易に使う人は、結局何もしないから――というのがその理由です。

上司は結果を求めているのに、具体的な行動計画が示されないため、「この人に任せても大丈夫だろうか」という不安を抱くのです。

「あの人に頼んでも曖昧な返事しか返ってこない」「具体的な進捗が見えないので不安」といった評価が定着すると、徐々に周囲から仕事を任されなくなります。結果として、いつの間にか職場で孤立してしまう可能性が高まるのです。

仕事では、具体的な目標や行動を伝える人こそが信用される、と中谷氏は言います。あわせて、スピード重視で実行することも大切だとのこと。以下に例を示しましょう。

【例1】会議資料の作成が遅れている場合

NG:「すぐにつくり終えるように努力します」
OK:「14時までに作成して、メールでお送りします」

 

【例2】ミス内容について上司から指導を受けた場合

NG:「ありがとうございます。勉強になりました」
OK:「ありがとうございます。○○という点が改善点だと分かったので、明日作業をする際は、××を実行します」

このように、具体的な時間や内容を明確に伝えたうえで、すぐ実行に移しましょう。

抽象的な返答は、一見謙虚で前向きに聞こえるかもしれません。しかし、ビジネスの現場では具体性と実行力こそが評価の基準となります。信頼され、多くの人に求められる人材を目指すなら、今日から返答の仕方を見直してみてくださいね。

NG例:抽象的な返答

これから努力して頑張ります。
 

結果:上司から「結局何もしない人」と判断され、重要な仕事を任せてもらえなくなる。

OK例:具体的で実行可能な返答

チェック漏れが原因だと分かったので、明日からは作業完了時に必ずダブルチェックを実施します。
 

結果:具体的な改善策で上司の信頼を獲得。

「上司の信頼を勝ち取り、任せられる人材」になるための方法については、こちらの記事もご覧ください。
>>上司の信頼を勝ち取る「報告」の力。上司が「細かい」と感じるなら、この方法を試してみて。

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知らないあいだに周囲に敵をつくってしまう、そして職場での孤立につながりかねない最悪な口癖を3つご紹介しました。つい口にしていた言葉が、なかにはあったかもしれません。これからはぜひ、信頼を得られるような言い回しに変えてみてください。

【ライタープロフィール】
YG

大学では日韓比較文学を専攻し、自身の研究分野に関する論文収集に没頭している。言語学にも関心があり、文法を中心に日々勉強中。これまでに実践報告型の記事を多数執筆。効果的で再現性の高い勉強法や読書術を伝えるべく、自らノート術や多読の実践を深めている。

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