
年末が近づくと、「今年もあれができなかった」「やり遂げられなかった」とつぶやく瞬間があります。けれど、その “やり切れなかった” をただの失敗として片づけてしまうのは、非常にもったいないこと。
なぜならそこに、次の年をよくするためのヒントが隠れているからです。じつは筆者が最近、失敗に関連したメールを冷静に眺めていたとき、行動を妨げていた要因や、思考のクセがモアッと浮かび上がってきました。
そして「おっ、これは……!」と。
ただ振り返るだけ、ただ反省するだけでは未来に接続できません。大切なのは、見方を変えて “やり切れなかった” を「価値ある学び」にすること。
今年の停滞を、来年の設計素材に変える視点をもつのです。
本記事ではそうした素材化からの3ステップを、筆者の実践を交えながらご紹介します。
ステップ1.「やり切れなかった」を素材化
まずは、1年の “やり切れなかった” を素材として扱いましょう。
「目標を途中でやめた」「習慣が続かなかった」「計画がずれた」などの失敗は、できれば “なかったこと” にしたいもの。でも、それらを「データ」として考えてみると冷静に見ることができ、ディテールもハッキリします。
向き合えない、いろいろありすぎて絞り込めない、具体的に書きにくいというのであれば、以下のように分類すると書きやすいかもしれません。筆者の場合はこの方法が最適でした。
- 「目標」の中断
- 「習慣」の継続停止
- 「計画」の進行遅延
この項目分けの目的は、あくまでも「やり切れなかったことを “書き出しやすくすること”」です。ほかにいい項目があれば、そちらを採用してください。
ちなみに、筆者はこのように書き出しました。

ノートの中身↓
- 「目標」の中断→小説を書き上げる・グラフィックデザイン受注再開
- 「習慣」の継続停止→室内ステッパー・物理学系本の読書
- 「計画」の進行遅延→過去映画コラムの全修正
今回使ったノートは学研ステイフルの「コーネルメソッド B5綴じノート(B罫GY)」。
コーネル式ノート用ですが、この思考整理法にも意外とマッチするんじゃないかと思い使ってみました。

『【2025年度版】STUDY HACKER編集部がおすすめの ”生産性アップノート” 5選』
もちろん普通のノートでも十分です!
ステップ2. カテゴライズして原因を探る
最初のステップで1年の “やり切れなかった” を素材化し、筆者のモヤモヤ要素を並べることができました。
これらを改善しようとする場合、「if-thenプランニング」が役立つかもしれません。
ニューヨーク大学心理学部教授のピーター・ゴルヴィツァー氏の研究により、実行意図を利用することで目標達成率が倍増するとわかっています。この効果を得るための具体的な手法として「if-thenプランニング」が知られています。これは「もしXだったらYをする」というプランの立て方のことです。*1
そこで筆者は、if-thenがつくりやすくなるよう原因を探ってみることに。
つまり、if-then設計をするための分析です。その際に、時間・意思・環境という3つに分類すれば、より分析しやすくなるでしょう。また、そのあと if-then設計をする際に方向性も定めやすくなるはずです。
- 時間不足ならスケジュール調整
- 意志の問題なら目的の明確化 or ハードルを上げている物事を排除
- 環境の問題なら仕組みの見直し
そうして分析したところ、筆者の場合はこのような内容になりました。

ノートの中身↓
- 時間の問題:
【グラフィックデザイン受注再開】→グラフィックデザイン受注再開の意志はあるが時間がない。どこかで「時間の空き」を見つければ実践できる? - 意志の問題:
【小説を書き上げる】→物語は山ほど想像できるのに、小説を書き出す意欲が湧かない。物語で取り上げる内容のファクトチェックを途中で行なうと停滞しやすい。趣味の時間ではなく本業のような気分になるからかも?
【物理学系本の読書】→物理学は「これ何だろう?」を自ら調べる作業も、AI と掘り下げるのも楽しい。つまり、物理学の探求は大好きなのに、物理学系の本はすぐ飽きる。物理学を楽しく学びたいなら本だけに執着しなくていいのかも? - 環境の問題:
【室内ステッパー】→出そうと思えばすぐ出せるのに、ステッパーを出すのが面倒。また、出しっぱなしにはできない環境。それで結局やらずに1日が終わる。言ってみれば「ステッパーを出すのが面倒・出しておけない」だけの問題だ。
【過去映画コラムの全修正】→簡単な修正なのに、納品を終えるとその作業を忘れてしまう。つまり単に忘れてしまうことが原因。記事納品でログインする際に使うブックマークの下に、次に修正する記事もブックマークしておくと忘れないかも?
こうして停滞の理由がハッキリしたら、次は最後のステップです。
ステップ3. 行動条件を整えて再設計
ステップ2では、if-then設計をするための分析を行ないました。最後のステップ3で行なうのは if-then の設計です。
ポイントは「条件反応」で動けるようにすること。
つまり、前章の原因をふまえながら「それが起きたら動く」を仕組み化してしまうのです。たとえばこんな感じです。

ノートの中身↓
時間の問題
- 【グラフィックデザイン受注再開】→意図せず朝30分早く起床するときがあるので、その場合は30分を「グラフィックデザイン受注再開の準備」に充てる。すぐに取り掛かれるよう、過去デザインのデータは事前にまとめておく。
意志の問題
- 【小説を書き上げる】→夕食時に家族を待つ時間が30分あったら、300文字だけでもオリジナルの物語を書く。その際には物語がつながらなくてもOK。ファクトチェックも一切しない。すべてあとで行なう。
- 【物理学系本の読書】→この探求が好きなのは明白なので書籍にこだわらず、歯を磨いたら物理学系の動画を1本観る。
環境の問題
- 【室内ステッパー】→「(あえて)出すのが面倒・出しておけない」ことが原因なので、いつも見ている夜のニュース番組が始まったらステッパーを出して使い、ニュース番組が終わったら一緒に片づけるよう条件づけてしまう。
- 【過去映画コラムの全修正】→1本納品する際、その下にブックマークされた記事も1本修正。次回に備え、作業を終えたらブックマークを次の修正記事に入れ替えておく。
ここでの最大のポイントは、「頑張らなくても自然とできる仕組み」をつくることです。やる気に頼らず、自分を後押ししてくれる状態をデザインしてみる――といったところでしょうか。
ステップ2で挙げた「やり切れなかった理由」をふまえて条件を設定すれば、同じ状況には陥りにくくなるはず。それが、来年を「やり切れなかった1年」ではなく「やり切れる1年」に変えてくれるでしょう。
思わぬ副産物も生まれる?
じつは今回、ウォーミングアップのつもりで年内中にいくつか実践してみたところ、思わぬ副産物が生まれました。
書籍にこだわらず、「歯を磨いたら物理学系の動画を1本見る」という if-then設計を実践したところ、結果的にまた物理学系本を読み始めるようになったのです。
なぜなら動画を観たあと AI と一緒に掘り下げ、またそのあと書籍で「あ、これだ!」と確認作業をするようになったから(ちなみに観たのは野村泰紀氏の動画。わかりやすくておすすめです!)。
意志の力に頼らず行動を自動化した結果、純粋に学ぶ気持ちが強くなったのかもしれません。来年の本格実施が楽しみです……!
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筆者が実践を通して強く感じたことは、「反省ではなく再設計」しようとすると、すぐ客観的になれることです。
できなかった理由を観察し、行動条件を整える。そうすればきっと次の年末には、「今年もいろいろやったなぁ」とつぶやける自分に出会えるはずです。
*1: ダイヤモンド・オンライン|シンプルなプランで目標達成!成功を引き寄せる行動法
STUDY HACKER 編集部
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