自宅では集中できないからと、外で勉強する人は少なくありません。けれど、こんなふうに感じたことはありませんか?
「カフェだと周囲の話し声が気になる……」
「電車は騒音で集中できない……」
反対に、少しざわついているくらいが集中しやすい人もいます。
本当のところ、どちらのほうが効率よく勉強できるのでしょう? 研究論文に基づき、どちらの環境が勉強に適しているのか解説します。
勉強するなら静かな場所で
結論から言うと、勉強に適しているのは「静かな場所」です。
環境心理学などを研究する辻村壮平・准教授(茨城大学)らによる2010年の論文「教室内音環境が学習効率に及ぼす影響」では、騒音が学習効率に及ぼす影響を評価した実験が紹介されています。被験者は、3種類の課題に取り組みました。
- ニュースを聴いて内容を記憶し、関連する設問に回答する
- ニュースを読んで内容を記憶し、関連する設問に回答する
- ニュースを聴きながら同内容の文章を読み、音声と異なる箇所を修正する
これらの課題の正答率を、3種類の条件で比較します。
- 騒音なし
- 空調音
- 会話音
実験の結果、3つの課題すべてで、「騒音なし>空調音>会話音」の順に成績が高くなっていました。やはり、静かな環境のほうが集中しやすいのですね。
ノイズが集中力を高める場合も
一方で「ノイズが集中力を高めた」という研究もあります。
特殊教育を専門とするGöran Söderlund教授(西ノルウェー応用科学大学)らの論文 "The effects of background white noise on memory performance in inattentive school children" で紹介された実験では、11〜12歳の児童51人を対象に、複数の文を提示して覚えさせました。文の提示が終わったあと、覚えている文をできるだけ多く口頭で答えるというものです。
文を覚えるプロセスでは、「ホワイトノイズを流す」「ホワイトノイズなし」というふたつの条件を設定。その結果は次のとおりでした。
- ホワイトノイズあり:注意力の弱い児童の成績が高い。注意力の強い児童の成績は低い
- ホワイトノイズなし:注意力の強い児童の成績が高い。注意力の弱い児童の成績は低い
普段の環境では集中しづらい子どもは、ホワイトノイズがあったほうが課題に集中しやすかったのです。反対に、普段の環境で集中できている子は、ホワイトノイズによって成績が下がってしまいました。
「静かな環境だと集中できない」という自覚のある方は、ホワイトノイズを流してみると、勉強がうまくいきやすいかもしれません。
ただし、ホワイトノイズはただの騒音ではありません。測定機器を取り扱う株式会社東陽テクニカによると、ホワイトノイズとは次のようなものです。
ホワイトノイズ(白色雑音 white noise)とは、あらゆる周波数成分を一様に含みます。(略)ホワイトノイズの例は、テレビの放送終了後の、画面が「砂嵐」状態のときの音や、FM放送の局間ノイズで、「シャー…」と聞こえるものです。
(引用元:東陽テクニカ|信号出力/ランダムノイズ設定にあるホワイトノイズ、ピンクノイズとは? 太字による強調は編集部が施した)
単なる騒音で集中力が上がるわけではないのです。ホワイトノイズでの集中力アップを試してみたい方は、YouTubeで "white noise" と検索してみてください。
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静かな環境とノイズのある環境での勉強効率について検討しました。研究結果からは、一般的に静かな環境での勉強が効果的であることが示唆されましたが、集中しづらい人にはホワイトノイズが効果的な場合もあるようです。
静かな環境が苦手なら、一度ホワイトノイズを試してみるのがいいでしょう。静かなほうが集中しやすい方は、周囲の音が大きい環境で勉強する場合、ノイズキャンセリング機能つきのイヤホンやヘッドフォンを使うのがおすすめです。
(参考)
辻村壮平・上野佳奈子(2010),「教室内音環境が学習効率に及ぼす影響」, 日本建築学会環境系論文集, 75巻, 653号, pp.561-568.
Söderlund, Göran, Sverker Sikström, Jan Loftesnes, and Edmund Sonuga-Barke (2010), “The effects of background white noise on memory performance in inattentive school children,” Behavioral and Brain Functions, Vol. 6, No. 55.
東陽テクニカ|信号出力/ランダムノイズ設定にあるホワイトノイズ、ピンクノイズとは?
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STUDY HACKER 編集部
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