「なるほど、そこが大切なのか!」 はっと目からウロコが落ちるような驚きや、人生を変えるほど強いインパクトを与えられた経験は誰にでもあるはずです。しかし、本を読んだり人から話を聞いたりして新しい発見をたくさんしたはずなのに、結局自分は何ひとつ変わっていない……。そんなあなたは、本をただ読み、新しいことを知ったという事実に満足しているだけなのかもしれません。
実はほとんどの場合、ただ気づいただけでは自分を変えることができないのです。というのも、気づきと学びは似ているようで別物だから。
今回は気づきを学びに変える方法について紹介します。
気づきと学びは違うもの
本や漫画を読んで、その中の言葉に「はっ」とした経験は誰にでもあるもの。 例えば筆者は、将棋を題材とした青春漫画『3月のライオン』(羽海野チカ著)で、数多くの台詞にはっとさせられました。とくに感動したのが、天才と称される宗谷名人に対して、同い年の島田八段がタイトル戦で挑む際に放った言葉です。
(宗谷は)どんなに登りつめても決してゆるまず 自分を過信する事がない だから差は縮まらない どこまで行っても しかし「縮まらないから」と言って それが オレが進まない理由にはならん 「抜けない事があきらか」だからって オレが「努力しなくていい」って事にはならない
(羽海野チカ (2010), 『3月のライオン 4』, 白泉社.)
みなさんにも、このように自分の胸に刻まれたいくつかの言葉があるのではないでしょうか。それはもしかしたら本や漫画ではなく、上司や同僚の言葉、もしくは歌のワンフレーズかもしれません。しかし、はっとさせられる言葉にはたくさん出会うのに、それによって実生活がガラリと変化することはほとんどありません。一体どうしてなのでしょう? 名言や気づきに自分を変えるような力はないのでしょうか?
そんなことはありません。はっとさせられるのに自分が変わらないのは、単に「気づき」が「学び」になっていないからなのです。
経営コンサルタントの横山信弘さんは次のように述べます。
「気付き」は他人から得られるものだが、「学び」は自分でしか手に入れることができない――。
(引用元:Yahoo! ニュース|「気付き」と「学び」は、何が違うのか? ~ビジネスにおけるケース~)
気づきとは、他人の言葉で表現された他人の考えを受け取っただけの状態。つまり、まだ自分の言葉や理解に至っていないので、自分を変えられないというわけです。
気づきを自分の言葉で表現しよう
では一体、どのような方法で気づきを学びに変えれば良いのでしょうか?
気づきを学びに変えるためには、気づきを自分の言葉にして自分なりに解釈することが大切です。はっとした言葉があったら、まず「何にはっとしたのか」を自分の言葉で表現してみましょう。例えば、先ほどの台詞を筆者なりに解釈すると、
「自分に自信や実力がなかろうと、そんなことを嘆いたってしょうがない。ただその自分から変わろうとあがいて努力しなければ、何も変わらない」
という言葉になります。筆者は強い言葉を使わなければ動けないという自覚があるので、意識してかなり強い言葉で言い表しています。このように、そのままの言葉ではなく、自分の言葉ではっとした気づきが何であるのかを表現するのです。
すると、その瞬間から他人の言葉が自分の言葉になります。私たちの思考は言葉からできているので、自分の言葉にすることで自分の考えにできるというわけです。
気づきを自分の生活に組み込もう
もちろん、他人の考えを自分の言葉で表現するのはかなり大変でしょう。そのため、この段階である程度の満足感を得てしまいそうですが、ここで終わらせてはいけません。最後に、この気づきを自分の生活にどのように取り入れるかを考えます。
人間とは常に何か考えているものなので、たとえ気づきが自分の考えになったとしても、そのまま何もしなければ他の考えに流され、忘れてしまいます。そして、気づきから何も得られないまま終わってしまうのです。そうならないためにも、気づきを自分の生活に取り入れることが大切なのです。
そのときに意識したいのは、できるだけ具体的にどう行動するかを考えること。習慣化コンサルタントの古川武士氏によれば、以下の点について考えるとよいのだそう。
絶対条件:「何を」「どうする」「いつ」 必要条件:「どこで」「誰と」「どれぐらい」
(引用元:PRESIDENT ONLINE|あなたの"気づきとやる気"が蒸発する理由)
例えば筆者の場合、先ほどの気づきを次のように行動化しました。 いつ:「自分なんかが頑張ったところで何も変わらない」と卑屈になったとき 何を:自分の気持ちを どうする:「行動しなければ、今の状態から何も変わらない」と切りかえる 実際、このように行動するようになり、筆者は「駄目な自分でもできるようになる方法を考えよう」と思い至るようになりました。
*** 気づきを生活に生かすために行うことは2つ。 ・気づきを自分の言葉で解釈する ・どう自分の生活に取り入れるか具体的に考える 自他ともに面倒くさがりやと認める筆者ですら、この方法で気づきを学びに変えることができました。きっとみなさんも、気づきを自分の生活に生かせるはずですよ。
(参考) PRESIDENT ONLINE|あなたの"気づきとやる気"が蒸発する理由 Yahoo! ニュース|「気付き」と「学び」は、何が違うのか? ~ビジネスにおけるケース~ 羽海野チカ (2010), 『3月のライオン 4』, 白泉社. グロービス経営大学院著, 田久保善彦, 荒木博行, 村尾佳子執筆 (2015), 『グロービス流ビジネス勉強力』, 東洋経済新報社. 梅田悟司(2016), 『「言葉にできる」は武器になる。』, 日本経済新聞出版社.