
- 職場で困っている同僚を助けたのに、その成果を横取りされた。
- 頼まれごとを断れず、自分の仕事が後回しになってしまう。
このような状況が続けば、キャリアの停滞は避けられません。
「与えること」は美徳とされます。しかし現実には、与え続けて燃え尽きる人と、与えながら成果を出す人がいます。
ペンシルベニア大学ウォートンスクール教授であり、組織心理学者のアダム・グラント氏によれば、この違いは「誰に、どう与えるか」を戦略的に選んでいるかどうか。*1
無差別に与える人は搾取され、戦略的に与える人は信頼と成果を積み上げていきます。
本記事では「消耗しないギバー」になるための具体的な方法を解説します。
なぜ「いい人」が燃え尽きるのか
与える行為には、2つの落とし穴があります。
①相手を選んでいない
職場には「テイカー(奪う人)」が存在します。表面的には友好的ですが、一方的に利益を持ち去る人々です。彼らに与え続ければ、消耗するのは当然でしょう。*2
②断る基準がない
「頼まれたから」「困っていそうだから」で引き受け続けると、自分の仕事が後回しになります。善意が自分の首を絞めてしまうのです。
成果を出す「賢いギバー」は、この2つを明確に管理しています。*1

まず「テイカー」を見抜く
対策を講じる前に、まず相手を見極める必要があります。テイカーには共通するサインがあります。
サイン1. 一人称が「私」ばかり
チームの話をするときも「私たち」ではなく、「私が」「私の」を多用します。*3
サイン2. 上と下で態度が違う
上司には愛想がいいのに、部下や同僚への態度が雑。権力を得ると、その傾向が露骨になります。*2 , *3
サイン3. 表面的なネットワークが広い
SNSの繋がりは多いものの、関係は浅い。自己アピールのための人脈です。*2
サイン4. 成果の「主語」を奪う
共同作業の成果を、さも自分の手柄のように報告します。*1
これらが複数当てはまる相手には、与え方を変える必要があります。

テイカーへの対処法
見抜いたら、次は対処です。感情的に距離を置くのではなく、仕組みで守ることがポイントです。
- 貢献を可視化する
メールやチャットで「誰が何をやったか」を記録に残す。口頭だけのやり取りは避け、進捗報告で自分の担当範囲を明確に伝える。 - 役割を事前に決める
プロジェクト開始時に「誰が何を担当するか」を文書化して共有する。曖昧さはテイカーが付け入る隙になる。 - 「即答しない」を習慣にする
頼まれたとき、その場で引き受けない。「確認して折り返します」を挟むだけで、冷静に判断できる。
ポイントは「断る」ではなく「条件を明確にする」こと。角を立てずに境界線を引けます。
賢いギバーの「与え方」
テイカーを避けるだけでは不十分です。与えること自体は、信頼構築とキャリア形成に有効。問題は「与え方」にあります。
- 5分ルールを使う
グラント氏提唱の “成功するギバー” の原則。「5分以内でできて、相手に大きな価値を提供できること」に絞る。知っている情報を共有する、適切な人を紹介する、フィードバックを一言添える——時間をかけすぎないことが重要。*1 , *3 - 相手を選ぶ
ギバーやマッチャー(与えることと受け取ることのバランスを取る人)には積極的に与える。テイカーには最低限に留める。 - 見返りを期待しない
見返りを求めると消耗する。「5分で終わること」に絞っていれば、見返りがなくても痛くない。
あなたには支援者がいる
最後にひとつ、知っておいてほしいことがあります。
職場の多数派は「マッチャー」——与えることと受け取ることのバランスを重視する人々です。*2
彼らは、テイカーが搾取から逃れることや、寛大な行動をしても報われない人がいることを嫌います。*3
つまり、あなたが搾取されずに貢献を続けていれば、マッチャーは自然とあなたを支援する側に回ります。「あの人はちゃんとやっている」と認識されれば、評価もあとからついてくるのです。
***
「与える」ことは武器になります。ただし、使い方を間違えれば自分を傷つけます。
相手を見極め、与え方を選び、自分の時間を守る。それが「消耗しないギバー」への第一歩です。
*1 The Independent|Adam Grant: Givers and takers - who are the best performers in the workplace?
*2 The Power Moves|Give and Take: Summary, Review, & Criticism (Adam Grant)
*3 Knowledge at Wharton|Givers vs. Takers: The Surprising Truth about Who Gets Ahead
STUDY HACKER 編集部
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